NTTデータ、仮想化基盤「Prossione Virtualization 2.0」発表 日立との協業の狙いは
VMwareのライセンス体系の変更が企業のITインフラ戦略に影響を与えた。こうした市場の迷いに対し、NTTデータは2026年3月から「Prossione Virtualization 2.0」の提供を開始する。記者発表を基にアップデートの詳細と協業の狙いを考える。
BroadcomによるVMwareの買収以降、ライセンス体系の変更が企業のITインフラ戦略に影響を与えている。VMwareが「VMware Cloud Foundation」(VCF)によるフルスタックのプライベートクラウド回帰を促す一方で、コストの最適化やベンダーロックイン回避を模索する企業の間では、KVM(Kernel-based Virtual Machine)への関心が高まっている。
しかし、OSS(オープンソースソフトウェア)ベースの基盤構築は難易度が高く、完全な移行に踏み切れない企業も多い。コストを抑えつつ、エンタープライズ基準の信頼性と長期的な運用性をどのように確保するかが、現在の国内仮想化市場における焦点となっている。こうした市場の迷いに対し、NTTデータは2026年3月から「Prossione Virtualization 2.0」の提供を開始する。同社が2026年2月12日に実施した記者発表を基にアップデートの詳細と協業の狙いを届ける。
独自OS、高可用性機能、管理画面、サポートをアップデート
NTTデータの濱野賢一朗氏(ソリューション事業本部 OSSソリューション統括部長)は、2025年7月にリリースされたバージョン1.0について、「とにかく急いでほしいというお客さま向けに慌ててリリースした面があった」と振り返り、今回の2.0こそが本命と強調した。
2.0では、専用OS「Prossione Virtualization OS」(PVOS)の提供を開始する。従来は「Linuxディストリビューション」の選定やキッティングから始める必要があったが、PVOSを使えばインストーラーを通じて仮想化基盤に必要なツール群を一括導入できる。これにより、従来のKVM構築と比較して工数を約60%削減できるという。
可用性も向上した。実装される「高可用性(HA)機能」は、GUIでの2ステップの設定で有効化が可能だ。ホストサーバ障害時は、稼働していた仮想マシンを待機系ホストで自動的に再起動させる仕組みを備え、99.999%の可用性を実現する。
管理ツール「Prossione Virtualization Manager」(PVM)も刷新され、全ての操作がGUIおよびAPIで完結するようになった。今後のロードマップについて、NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部長の新谷哲也氏は、派手なメジャーバージョンアップよりも「地味だけど手の行き届く」改善を積み重ねるという方針を示した。
また、標準で8年間の長期サポート(LTS)を提供する。頻繁な基盤更改を避けたい企業のニーズに応え、OSS特有の「いつまで使えるか分からない」という不安を払拭(ふっしょく)する。
Q&AセッションでNTTデータの新谷哲也氏(執行役員テクノロジーコンサルティング事業本部長)は、仮想化代替製品の市場について「意外とライバルがいない」と分析する。グローバルで見ても、大規模なエンタープライズ要件を満たしつつ、コンピュート(仮想化)機能だけを切り出して安価に、かつ長期サポート付きで提供するプレイヤーは希少とのことだ。「日本企業にとってはNTTデータが最後までやり遂げるという安心感が売りになる」とし、リリース記念キャンペーン価格をきっかけにシェア獲得を狙う。
日立との協業が果たす意味
日立製作所の滝沢武久氏(マネージド&プラットフォームサービス事業部 ハイブリッドクラウドサービス本部 本部長)は、KVMへの移行を検討する顧客に対し、日立独自の「高信頼化機能」を提供すると説明した。
トラブルシュート機能の強化や、ネットワーク・ストレージのI/O信頼性を高める機能をKVMに対応させ、これをProssione Virtualizationと組み合わせることで、エンタープライズに耐え得る信頼性を確保する。
提供形態としては、システムのインフラ運用まで任せる「Hitachi EverFlex Cloud Service」と、オンプレミス向けの「Hitachi Private Cloud Platform」を用意する。日立のAIソリューション群「EdgeMax」の基盤としても活用し、社会インフラの変革を支えるという。
Prossione Virtualizationはコンピュート機能に特化しており、大規模環境で求められるネットワーク仮想化やストレージ仮想化の機能を含んではいない。その部分で海外ベンダー製品に依存せざるを得ず、「システム主権が守られないのではないか」という懸念もあるだろう。
これに対してNTTデータは、一社で全てを賄うのではなく、国内パートナーとの連携でカバーするという狙いで日立製作所との協業を進めたとも考えられる。国産連合によるインフラ構築は、重要インフラ事業者にとって、システム主権を確保するための選択肢の一つとなりそうだ。
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