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インテリジェント・オーケストレーションが導く、真のAI開発変革コーディングの高速化から、イノベーションの加速へ

AIの進化によりコーディング速度は飛躍的に高まった。しかし、開発現場ではAI活用によって生産性が低下する「AIパラドックス」という新たな壁が立ちはだかる。この停滞を打ち破る鍵は「インテリジェント・オーケストレーション」にあるという。GitLabのマナヴ・クラナ氏が、イノベーションを真に加速させるための「次なる開発プロセス」の全貌を語る。

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 「2025年11〜12月、ソフトウェア開発の世界は大きな転換点を迎えました」――こう語るのは、GitLabで最高製品責任者とマーケティング責任者を務めるマナヴ・クラナ氏だ。Google「Gemini 3」、Anthropic「Opus 4.5」、OpenAI「GPT-5.2」という3つのAIモデルが登場したことで、コーディングの領域でこれまでとは次元の異なる性能を発揮するようになった。

 「経験豊富なエンジニアの中にはコードのほとんどをAIで書いている人もいるといいますが、イノベーションのスピードは『AIがどれだけ多くのコードを書けるか』だけで決まるわけではありません」

 品質チェック、セキュリティ対策、法令順守、保守性確保など、ソフトウェア開発には数百のビジネスクリティカルな工程があり、これら全体をどう効率化するかが課題となる。


GitLabのマナヴ・クラナ氏(最高製品責任者兼マーケティング責任者)

 GitLabは2025年の調査で「AIが開発者の生産性を48%向上させた」と報告した。関数の生成、バグ修正、新機能の実装などが、飛躍的な速さで進むようになった。しかし実際には、コーディングはソフトウェアデリバリーサイクル全体の約20%にすぎない。

 「『アムダールの法則』を開発現場に当てはめてみると、コーディングを10倍速くしても、残りの80%を占めるコードレビューやテスト、セキュリティ、デプロイが変わらなければ、全体のスピードは1.25倍にとどまります」

 コーディングだけにAIを導入した組織は、やがて壁に突き当たってしまう。チームは生産性の向上を実感するものの、レビューの滞留、不安定なテスト、コンプライアンス対応、パフォーマンス最適化といった問題に追われることになる。

 AI活用によって生産性が低下するこの逆説的な現象を、GitLabは「AIパラドックス」と呼んでいる。AIの活用はコーディング速度を加速させられるが、イノベーションを加速させる最大のチャンスは、ソフトウェアライフサイクル全体の品質やセキュリティ、スピードを高めることにある。

インテリジェント・オーケストレーションが必要な理由 直線的な工程から継続的なループへ

 従来のソフトウェアデリバリーは、計画、コーディング、テスト、セキュリティ、デプロイ、運用といった各ステージに分かれ、それぞれを人が引き継いで進めていた。この引き継ぎのたびに、時間のロスや情報の欠落、調整コストが発生する。AIでコーディングだけが加速されると、こうした引き継ぎがボトルネックとなり、コーディングの高速化によって得られたベロシティ(開発サイクルの速さ)がステージを移行するたびに失われてしまう。

 この停滞を打破する鍵が、AIエージェントを司令塔とした「インテリジェント・オーケストレーション」だ。AIエージェントがコーディングだけでなく開発プロセス全体を支援する。

 「コーディングの次にテスト、その後にセキュリティ」という流れではなく、コーディングやテスト、セキュリティ、デプロイ、検証を並行して繰り返す。このフローの中でAIエージェントは自律的に作業を進め、人間は細かな戦術的判断に巻き込まれることなく、全体の方向性とガバナンスを俯瞰(ふかん)して統括できる。

 この変化によってステージ間の分断が解消し、開発担当がコードを書き終えるのをテスト担当が待つといった待機時間が消滅する。工程間の引き継ぎでコンテキストが失われることもない。

インテリジェント・オーケストレーションの3つの柱

 AIパラドックスを解決するには、次の3つの柱に基づいたインテリジェント・オーケストレーションが必要となる。

ワークフロー:チームとAIエージェントが協力する仕組み

 ソフトウェアチームは、AIエージェントが参照すべきコンテキスト、効率化すべきワークフロー、順守すべきコンプライアンス規則などを定義する。そうすることで、1対1のAIチャット体験を超え、複数のエージェントが複雑なタスク、イシューからマージリクエストまでの流れ、セキュリティ分析、コードレビュー、CI/CD運用において連携するチームレベルのエージェント型ワークフローへと進化する。

 1つのエージェントが多数の開発者に対応し、複数のエージェントがチームの枠を超えて同時並行でタスクを遂行する。人間はAIの出力を逐一管理するのではなく、全体を導く役割になる。

コンテキスト:ライフサイクル全体にわたる統合データとインテリジェンス

 インテリジェント・オーケストレーションは、ステージごとの引き継ぎでフローを分断することなく、統合データモデルを通じてステージ間で継続的な実行を維持できる。システム間でコンテキストが失われる断片化されたツールとは異なり、ライフサイクル全体にわたってコンテキストが共有される。

 チームはコードだけでなく、要件、履歴、セキュリティ上の影響、デプロイ時の制約、運用からのフィードバックも把握できる。その結果、チームはコンテキストを失うことなく、複数のプロジェクトやリリースを同時に進められる。チケットの管理や待機、引き継ぎ、修正作業に追われるといった「停滞」はなくなり、コードの生成からコンプライアンスの順守、品質改善まで、エンジニアの手を止めずに循環し続ける環境へと進化する。

ガードレール:ガバナンスとコンプライアンスをフローに組み込む

 インテリジェント・オーケストレーションは、セキュリティとコンプライアンスのためのカスタムルールを備えた柔軟なデプロイオプションによって、データとワークフローをコントロールできる。エージェントは各タスクのリスクを評価し、適切な自律性のレベルを提案する。ポリシーに基づくガードレールによって、リスクの高い変更はより多くの人間が監督する。

 これらは全て、単一のオーケストレーションシステムの中で行われるため、チームはセキュリティやコンプライアンスを犠牲にすることなくスピードを維持できる。セキュリティやコンプライアンスは後付けで対応するものではなく、最初からフローに組み込み、自動的に適用する仕組みだ。

人間の役割

 停滞を打破する鍵は、単にツールを増やしたり、AIの処理速度を競ったりすることではない。必要なのは、人間とAIの連携を見直し、ソフトウェアデリバリープロセスそのものを根本から再設計することだ。前述のGitLabの調査によると、DevSecOpsの専門家の76%は「AIによってエンジニアの数は減少するのではなく、むしろ増加する」と考えている。変わるのは、仕事の性質そのものだ。

 AIがコードの大半を生成するようになると、これまでシニアエンジニアやスタッフエンジニアに求められていたような高いスキルが、キャリアの段階を問わず重要になる。仕事を明確な単位に分割する力、適切なアーキテクチャ判断、プロダクト志向の視点、自動テストや可観測性の理解、そして技術的負債の管理といったスキルだ。

 実際の現場では、AIエージェントが複数のステージにわたって反復的な作業を自律的にこなす。一方、人間は方向性を示してガバナンスを維持し、判断が必要な場面で意思決定をする。この変化によって、開発者は「コードを書く存在」から「システムをオーケストレーションしてAIエージェントを導く存在」へと移る。創造性、戦略的な視点、判断力、アーキテクチャ思考といった人間ならではの価値あるスキルは、重要性が下がるどころか、むしろ高まる。

 通信業界の大手企業Ericssonは、世界300以上の通信事業者向けにエンタープライズソフトウェアを展開しており、複数のツールやシステム、ワークフローをまたいだシームレスなオーケストレーションが必要だった。AIを取り入れた統合プラットフォームのアプローチを採用したことで、デプロイ速度を50%向上させ、6カ月で13万時間を削減し、数カ月かかっていた更新を数週間に短縮した。

 このような傾向はさまざまな業界で見られる。世界有数の求人サイトIndeedは、ハードウェアコストを最大20%削減しながら、ソフトウェア開発のパイプライン数を79%増やした。100カ国以上から約1万人の科学者が集まり粒子物理学を研究する欧州原子力機構(CERN)は、ジョブの起動を90倍に高速化した。航空宇宙及び防衛の大手企業Lockheed Martinは、それまで組織内に分散していた数千台のレガシーなCIサーバをGitLabへと統合。セキュリティとコンプライアンスをワークフローに組み込み、ソフトウェアデリバリーの頻度を月次から週次に高めた。

 これらは、AIコーディングツールによって個々の開発者の作業速度が上がったという話ではなく、インテリジェント・オーケストレーションによって、チーム全体が企業規模でスピードを維持できるようになったということだ。

「AIパラドックス」からチャンスへ

 AIはソフトウェア開発のスピードを加速させたが、これまでは主に個々のコーディング作業のレベルにとどまっていた。インテリジェント・オーケストレーションは、その加速をチーム全体、そしてソフトウェアライフサイクル全体へと広げる。

 ソフトウェアデリバリーの進め方を見直すエンタープライズITのリーダーは、自社のツールがイノベーションを加速させるのか、それとも逆に妨げとなっているのかを見極める必要がある。ソフトウェアチームは、AIエージェントと連携して働くことで「どう調整するか」といった段取り重視の姿勢ではなく「次は何を作るか」というビジョン重視の姿勢へと変わっていく。

※GitLab企業経営調査2025完全版「ソフトウェアイノベーションによる経済効果:日本が直面する1.6兆円のチャンスとその岐路

【プロフィール】マナヴ・クラナ(Manav Khurana)氏

 GitLabの製品、デザイン、マーケティングの各部門を統括し、エンジニアが最高の仕事をしながら優れたソフトウェアを生み出せるよう支援する環境整備に情熱を注ぐ。

 GitLab入社前はNew Relicで最高製品責任者を務めた。Twilio、Aruba HPE、Motorolaにおいても、製品及びマーケティングのリーダーとして活躍した。25年以上のキャリアを持ち、新しいテクノロジーカテゴリーの確立や、データドリブンのアプローチで数十億ドル規模のビジネスを構築することに深い専門性を有する。

 ロチェスター大学で電気・コンピュータ工学の学士号を取得し、サンタクララ大学でMBAを取得。スタンフォード大学のリーダーシッププログラムを修了している。


※この記事は、GitLabより提供された記事をITmedia エンタープライズ編集部で一部編集したものです。

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提供:GitLab Inc.
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年3月16日

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