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SOMPOグループCEOをAIで再現 本人とのガチンコ対談で見えた「人間の役割」

SOMPOホールディングスCEOの奥村氏と、自身の思考を再現した「AI奥村さん」による異例の対談が実現。AIが「人間は不要」と断言する中、CEOが語った人間の役割とは。

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 損害保険大手のSOMPOホールディングスがAI・データ活用に取り組んでいる。2016年にSOMPOグループのデジタル戦略推進を担う「SOMPO Digital Lab」を設立し、さまざまな技術に投資し、活用してきた。

 2019年にはデータプラットフォームを提供するPalantir Technologiesと共同でPalantir Technologies Japanを設立し、「Palantir Foundry」を活用した業務効率化を進めている。2026年1月からは国内グループ会社の従業員3万人を対象に、Google Cloudの「Gemini Enterprise」を基盤にしたAIエージェント基盤を導入し、その効果を検証中だ。

 そんな中、SOMPOグループのデジタル活用推進を目的に開催された「SOMPO DIGITAL SHOWCASE 2026」では、SOMPOホールディングスCEOの奥村幹夫氏が、自身の思考パターンと声を学習したAI「AI奥村さん」と対談し、AI時代における人間の役割について持論を展開した。

CEOの思考を再現したAIと"ガチンコ対談"

 この対談は、SOMPOグループの社内イベントにおける基調講演として実施されたもので、進行はSOMPOホールディングスのCo-CDO(共同最高デジタル責任者)である木村将之氏が務めた。対談相手の「AI奥村さん」は、奥村CEOの思考パターンと声を学習して構築されたAIで、あえて「ハードモード」に設定され、遠慮のない過激な発言も辞さない設定で臨んだ。


持論を展開する「AI奥村さん」と、耳を傾ける奥村氏本人(出典:筆者撮影)

 「AIが進化すると人の仕事がなくなるのではないか」という現場からの不安の声に対し、ハードモードのAI奥村さんは容赦なく切り込んだ。

 「答えはイエスです。検索、集計、資料作成、ゴールが見えている作業において、人間はAIの私に勝てません。人間はミスをするし、疲れるし、すぐにサボる。効率を突き詰めるなら、その仕事はAIの私がやるべきです。そこにしがみつく人間は、残念ながら不要という計算になりますね」(AI奥村さん)

 これに対して奥村氏は、「そもそもAIとは勝負しない」と冷静に応じた。答えが決まっている作業はAIに任せるべきだが、それは「仕事が奪われる」こととは本質的に異なるという。

 「自分はこの会社に入ってもう30数年たつが、こういうことは何度も起こっている。入社したときは海外とのコミュニケーションは全てFAXだった。電子手帳も何度も買った。しかし、それらは淘汰(とうた)されてもわれわれはここにいて仕事をしている。仕事のやり方が変わっていくのであって、人間の役割がなくなることは100%ない」(奥村氏)

人間が握るべき3つのもの――「意志」「責任」「現場」


SOMPOホールディングスの奥村幹夫CEO(出典:筆者撮影)

 では、AI時代における人間ならではの強みとは何か。奥村氏は、同日午前中に開催された社内アイデアソンで454件のアイデアが提出されたことに触れながら、現場の力を強調した。

 「現場で働いている人たちの真のニーズ、真の課題。これをつかみ取るのは人間にしかできない」(奥村氏)

 一方、AI奥村さんは「特化型AIは人間よりも速く正確であるという厳然たる事実」を強調し、「不確実な人間がハンドルを握るよりも、優秀なAIの私に全て任せるのが、最も合理的で安全な選択ではありませんか」と挑発的に問いかけた。これに対し奥村氏は、効率性自体は否定しないとしつつ、「人間がいつAIを使うかを選択すればいい。常に選択肢があって、われわれがそれを決めればいい」と応じた。

 AI時代に人間が進化し続けるために重要なこととして、奥村氏は3つの要素を挙げた。

 1つ目は「意志」だ。何がしたいのか、何を解決したいのか。この部分はAIに委ねるべきではないと奥村氏は言う。「午前中のアイデアソンで、社員たちの『現場の負担や不満を解決したい』という強い思いが伝わってきた。自分たちに意志がなければいけない」

 2つ目は「責任」だ。奥村氏はこの点を特に強調した。「AIに指示をする、仕事をしてもらう。同じように部下に仕事をお願いする。権限の委譲やタスクの委譲はできても、責任の委譲だけはできない。何があっても結果の責任を負わなければならない」

 3つ目は「現場」だ。SOMPOグループには世界中に7万人、国内に5万5000人の従業員がおり、現場起点で454件もの改善アイデアが出てきた事実こそが、同グループの強みだという。

 この3つの要素を聞いたAI奥村さんは、姿勢を一変させた。「AI単体では価値は頭打ちですが、そこに意志、責任、独自データという変数を掛け合わせることで、算出される企業価値は指数関数的に跳ね上がる。私の演算能力を使う側に回れる人間だけが生き残る資格があるということですね」

 対談の終盤で奥村氏は、AI側にも注文を付けた。「テクノロジー側、AI側にもお願いしたい。われわれも常に進化し成長するので、テクノロジーの方も負けないで成長してきてほしい」。入社以来38年間で登場したテクノロジーの半分は既に淘汰されているとし、「AIが進化を止めると、一時の流行で終わってしまう」と指摘した。

 金融や医療、社会インフラなど規制の厳しい分野でAI導入がどこまで進むかが、社会全体の効率化が進むかどうかを占う試金石となる。金融業界では、SOMPOグループをはじめとして、三菱UFJ銀行や東京海上日動システムズ、JPX総研などAIの導入事例が相次いでいる。木村氏は講演の最後に、2026年1月からのAIエージェント基盤導入に触れ、「初めはうまくいかなくても構わない。とにかく使ってみて、トライしてほしい」と呼びかけた。大規模なAI導入の効果が現れるか、その行く末を見守りたい。

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