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SNS詐欺は過去最悪、被害は子どもにも 警察庁が示した“ネット治安悪化”の衝撃半径300メートルのIT

国家レベルのサイバー戦争から、SNS詐欺、そして子どもを狙う犯罪など、治安悪化するサイバー空間で私たちは何に気を付ければいいのでしょうか。警察庁の定期レポート「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」の内容から注目ポイントを解説します。

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 警察庁は2026年3月12日、「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を公開しました。定期的に公開されているレポートの中でも重要なもので、私たちが見ているサイバー世界の攻撃が、「犯罪」そのものだと理解できる内容となっています。

 世界情勢が非常に不安定な今、私たちはいつ戦争に巻き込まれるか分からない状況です。ある意味では既に巻き込まれているといってもいいでしょう。同様にサイバー領域においても戦争は激化しています。インターネットにつながるデバイスを日々使っている私たちにとって、もはや国境も距離も関係ありません。

 このコラムでは警察庁が発表した資料を基に、サイバー戦争や日常に潜むサイバーリスクといった私たちを取り巻く現状を整理し、有効な対策を考えます。

治安が悪化するサイバー空間 その矛先は子どもにも……

 「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」のコラムによると、2022年のロシアのウクライナ侵攻において、侵攻が開始された同年2月24日より以前、同年2月16日に大規模なDoS攻撃が観測されたことが確認されています。

 この動きは日本にとっても当然無関係ではありません。同ドキュメントの第2部の「警察の取組」では、真っ先に国家安全保障におけるサイバー警察の果たす役割が記されています。「もはや平時ではない」と理解せざるを得ない状況に、私たちがいることを実感します。

 もちろんこれは2025年5月に可決、成立した「サイバー対処能力強化法及び同整備法」、いわゆる「能動的サイバー防御法案」を前提とした内容です。警察庁という組織が矢面に立っているようにも見えますが、実際には官民が連携し、自らを守っていかねばならないという前提での話です。ここだけを見てしまうときな臭さを感じるかもしれませんが、これが現実です。“ヒトゴト”と考えず、この法律と目指す方向をしっかりと理解することから始めていきたいと思います。


「能動的サイバー防御」で何ができるのか?(出典:警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)

 ここまで聞いても「ちょっと遠いところの話」と思う方もいるかもしれません。ただ、実はこのドキュメントは皆さんの家族に差し迫った脅威も数多く書かれています。

 同ドキュメントの「インターネット空間を悪用した犯罪に係る脅威情勢」(P23)では、インターネット詐欺に関する相談や犯罪が生々しく記されています。2025年の特殊詐欺の被害額は約1414億2000万円(前年同期比96.7%増)と、過去最悪となった2024年の被害額を上回り、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額についても約1827億円(前年同期比 43.6%増)と前年を大きく上回っています。目の前にある犯罪行為として無視できません。


特殊詐欺/SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は右肩上がりだ(出典:警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)

 個人的に非常に懸念しているのは、その矛先が子どもたちにも向かっていることです。この資料ではSNSに起因する事犯の学職別被害児童数の推移も記されており、「特に小学生の被害児童数が近年増加傾向にあり、被害児童の低年齢化の傾向が見られる」(P26)としています。このグラフは大変つらい内容でした。


SNSに起因する事犯、その小学生の推移も右肩上がり(出典:警察庁「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)

 もちろんランサムウェアや証券口座/インターネットバンキングを狙うこれまでの攻撃もなくなってはいません。私たちが把握する「ネットの攻撃」はもはや一般的な「犯罪」であり、取り締まりも同じようにすべく、しっかりと警察機構が動いているという印象です。この資料は皆さんもご一読いただければと思います。組織においても個人であってもです。

なぜサイバー犯罪にだけ「防犯意識」が薄いのか?

 治安維持は警察だけの仕事ではありません。私たちにとっても「防犯」は当たり前のように必要なことです。今や家に鍵を付けない人はいませんし、自転車も盗まれないように考え得る限りの対策をしているはず。犯罪に対してはある程度、自分たちで防ぐことを考えるのは当たり前です。

 しかしなぜか「サイバー犯罪」となると、「脆弱(ぜいじゃく)性を作り込む方が悪い」と言ったり、「お金を出して買ったものだから10年、20年たっても使わせろ」という考え方になりがちです。そうではなく、サイバーに関しても他の「犯罪」とおなじよう、できる限りのことは自分でも対策が必要でしょう。

 例えばOSやソフトウェア、ブロードバンドルーターなどは日々のアップデートが必須です。この他、古くなったハードウェアはアップデートに耐えきれなくなる時期が必ず来ます。そのときには古いものを使い続けるのではなく、最新版を導入することが「防犯」の観点から必要でしょう。

 モノを買って新しくするだけでは足りません。そこには意識のアップデートも必要です。従来なら自転車はシリンダータイプのチェーンや、たたけば壊れるような鍵を使っていたかもしれません。しかし大事な自転車なら家の中に入れて保管することも対策の一つでしょう。やり方を変えなければならないときもやってきます。サイバー空間ではもはやパスワードだけでは守れないため、正しく2要素認証で守ることも重要です。今ではもう攻撃者もそれを前提とした攻撃を仕掛けてくるので、パスワード管理ソフトや証明書など、最新の攻撃でも耐えられる対策も求められます。

 サイバーにおいても「防犯」の考え方は重要です。そのための手引きも、良質のものがたくさん出てきています。先日リストだけが公開された「情報セキュリティ10大脅威 2026」に、組織編の解説書が公開されています。これらを参考にし、さらなる対策をしていきましょう。

 先日参加したイベントで、GMOインターネットグループの熊谷正寿氏(グループ代表)が「モーセの十戒にも『汝、盗む勿れ』とある。紀元前からそういう犯罪はあるなら、今後もなくなることはない」と述べていたのが非常に印象的でした。われわれは「防犯」を考え、自分にとっての大事なものを守っていかなければなりません。人ごとでも、対岸の火事でもなく、「家族を守るためにできることは何だろう」と問い続けることこそが、その第一歩なのだと思います。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。


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