「ROI不明でも投資継続」が6割超 AI投資は短期収益から戦略的必然へ:IT調査ピックアップ
KPMGの調査により、企業のAI投資がROI重視から「戦略的必然」へと転換した実態が判明した。6割超が投資効果の測定にかかわらず投資を継続し、半数が1億ドル超の巨額予算を見込む。リスク管理や人材育成を伴う、中長期的な競争力強化へのシフトが進んでいる。
KPMGコンサルティングは2026年4月9日(現地時間)、企業のAI投資に関する最新調査結果を発表した。
調査によると、回答者の65%が「明確な投資効果の測定にかかわらずAIへの投資を継続する意向」を示しており、従来の財務指標のみに依存しない意思決定が世界的な広がりを見せている。
巨額の資金を投じる先行企業は、不確実なROI(投資対効果)の先に何を見据えているのだろうか。
AI投資を支える長期視点と企業戦略
調査はKPMGが実施した四半期ごとのグローバル調査で、英国を含む各国の経営層の見解を集めたものだ。多くの企業は生産性や業務品質、意思決定の速度と精度、収益性といった領域では効果測定に一定の自信を示している。他方で、経営判断に資する高度な分析など、間接的で長期的な価値の評価については不確実性が大きく、測定に自信を持つ回答は少数にとどまった。
AI投資の継続を支える背景には、短期的な成果よりも中長期的な競争力強化を重視する認識の変化がある。調査において、企業の58%が今後1年間で5000万ドル以上をAIに投じる計画を持ち、その半数は1億ドルを超える規模を想定している。景気後退の可能性があっても、70%がAIを優先投資分野と位置付けている点も特徴だ。
他方で課題も浮き彫りになった。投資効果の説明を難しくする要因として、「人材不足」や「データプライバシー」「サイバーセキュリティへの懸念」が多く挙げられた。加えて、「長期的な価値の定量化の難しさ」も大きな障壁となっている。今後12カ月の戦略上の課題としても、「リスク管理」「データ品質」「従業員の活用定着」が重要視されている。
AIエージェントの導入状況を見ると、94%の企業が「導入」または「導入検討」の段階にある。その内訳は、「検討や試行段階」が34%、「複数部門での展開」が19%、「高度な複数エージェントの開発、実装」が13%、「業務全体にわたる統合的運用」が8%と、進捗(しんちょく)にはばらつきがある。企業ごとに成熟度の差が大きい状況が分かる。
リスク対応としては、「従業員支援としてAIを活用しつつ教育をする企業」が48%、「人間が結果を確認する体制を採る企業」が39%、「機密データへのアクセスを人の監督下に置く企業」が37%だった。AI活用の拡大に伴い、技術面だけでなく運用体制の整備が不可欠となっている。
KPMGのAI責任者であるリアン・アレン氏は、「AIが企業全体の変革を支える基盤として認識され始めている」と指摘する。「単なる効率化ツールから、業務プロセス全体を変革する存在へと位置付けが変化しており、導入の在り方もより戦略的な検討が求められている」とした。適切な設計や開発、導入、運用監視の各段階で統制を確保することが、安全かつ有効な活用につながると強調している。
人材面においても、AI時代に対応するための取り組みが進む。企業の61%が「既存従業員のスキル向上」を実施または計画しており、52%が「専門人材の採用」、48%が「職務設計の見直し」に取り組んでいる。現在の人材基盤に不安を持つ企業は少数にとどまる。
採用において重視される能力も変化している。適応力や継続的な学習意欲、論理的思考や問題解決力、技術的知識が重要視されており、人とAIが協働する前提の能力が求められている。AIの普及によって業務内容そのものが変化しつつあり、従来の職務区分にとらわれない柔軟な人材活用が鍵となる。
今回の調査は、AI投資の判断基準が従来の短期的な収益指標から、より広範な価値創出へと移行している現状を示した。同時に、リスク管理や人材育成といった基盤整備の重要性も明確になっており、企業には総合的な対応が求められている。
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