「.NEXT 26」に見るNutanixのAI戦略と日本市場の現在地 顧客数17%増の背景を探る:「.NEXT 2026」現地レポート
NutanixはAI時代に向け、HCIベンダーからプラットフォーム企業への転換を進めている。米シカゴで開催された「.NEXT 26」で示されたAI戦略の全貌とともに、顧客数が17%増と成長を続ける日本市場への影響と展望を、現地での取材から読み解く。
NutanixはAI時代に向け、プラットフォーム戦略へと舵を切った。2026年4月、米国シカゴで開催した年次カンファレンス「.NEXT 26」では「Nutanix Agentic AI」を披露、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)ベンダーからの転換を見せた。
CEOのRajiv Ramaswami(ラジーブ・ラマスワミ)氏(以下、ラマスワミ氏)は、「既存のアプリから将来のAgentic AIまで、同一プラットフォームで動かせるようにする」と述べ、仮想マシンだけでなく、コンテナ、そしてAIエージェントも含めて提供するという方向性を見せた。
垂直統合モデルからの脱却 「どこでも動く」プラットフォームへ
Nutanixは「ワンプラットフォーム、ワンエクスペリアンス」を掛け声に、Kubernetes対応、外部ストレージとの連携、パブリッククラウド統合を進めている。同社はハードウェアとソフトウェアが一体化した垂直統合モデルからの転換を図っている。
この方向性について、ラマスワミ氏は「大きな前進だ」とする。一方で、ストレージハードウェアやクラウドなどにおいてパートナーへの依存が増えることで自社単独でのコントロールが及ばない領域が広がる。この懸念については、「確かに、もはや垂直統合の一体型製品ではない。より分散したモデルになっている。しかし、私たちがコントロールできる部分を最大限シンプルにすることで、顧客にはどの構成でも一貫した統一体験を提供できる」と述べた。
ラマスワミ氏が強調するのは「Run anything, anywhere」(場所を選ばず、何でも動く)という考えだ。これは社内でも徹底しており、エンジニアリングチームは開発に当たって、常に「いかなる環境でも動作すること」と「プラットフォームとして統一された体験を提供すること」を前提に据えているという。イベント期間中にある顧客から「ダークサイト(完全オフライン環境)への対応は考えているか」という問いがあったと紹介し、「そういった要件も含め、全てを想定して製品を作っている。2025年12月のリリースで、管理プレーンの『Nutanix Central』をSaaSではなく完全オフライン環境でも動作するようにした」と述べた。
エコシステムを通じてプラットフォーム戦略を強化
パートナーエコシステムも急拡大している。.NEXT 26のスポンサーパートナー数は、3年前の約25社から2025年は85社、2026年は100社超へと増えた。
ラマスワミ氏は成長の背景として2つの要因を挙げた。一つはNutanixの戦略だ。「エコシステムの強さがプラットフォームの強さを決める。われわれはパートナーをオープンに受け入れる」。もう一つは業界の構造変化だ。「Broadcomがエコシステムへの関与を縮小したことで、多くのパートナーが『次の5年、10年で誰と組むか』を見直している。その結果として自然とNutanixに集まってくる」と話す。
例えば、GPUベンダーとの関係だ。長年協力関係にあるNVIDIAについて、ラマスワミ氏は「NVIDIAはエンタープライズ向けの営業力やプラットフォームを持っていない。NutanixがエンタープライズへのGPUの浸透を担うことでWin-Winの関係になっている」と説明した。これに加え、足元で提携を強化しているAMDとは、財務面も含めた関係にある。「AMDもNVIDIA同様、エンタープライズへの直販力を持っていない。私たちが市場に出て顧客にAMD GPUを選んでもらうことで、AMDが恩恵を受ける構図だ」と述べた。
外部ストレージのパートナー拡大も進めている。現在Dellの「PowerFlex」、EverPureの「FlashArray」に対応済みで、Dellは「PowerStore」(2026年夏を予定)にも拡大する。また、NetAppとの提携は本イベントの目玉の一つといっても過言ではない。この他、Lenovoの「ThinkSystem」とも提携した。
ラマスワミ氏はストレージ連携の方針について、「IPベースの主要ストレージアレイのほぼ全てを長期的にサポートすることが目標」とし、「(レガシーな規格である)Fibre Channelは対応予定がない。世界中でNVMe over Ethernetへ移行しており、過去の資産を追いかけるよりも前向きな投資を優先させたい」とも述べた。
なお、「VMware」からの移行需要については「移行は複数の波で継続的にくる」としつつ、「全ての顧客との会話で、今やKubernetesとAIの話をしている」と述べ、次の成長軸への移行を示唆した。
Agentic AIは「数年がかりの取り組み」
今回の.NEXT 26で最も力を入れて語られたテーマがAgentic AIだ。ラマスワミ氏は市場におけるAIの変化について、「過去2年間はAIモデルのトレーニングが業界の中心だったが、現在急速に推論とエージェンティックAIへとシフトしている」と述べる。
現状、多くの企業はAIアプリをパブリッククラウドやネオクラウド(GPU中心のAI向けクラウド)で動かしているが、そこには課題があるという。
「セキュリティリスクやマルチテナントのスケーリング問題、運用の複雑化、コスト管理。これらがエンタープライズとネオクラウドが直面している現実だ」。Nutanixはこの課題に対し、エンタープライズグレードのセキュリティガバナンス、導入後の運用(Day 2運用)の自動化、GPU利用率の最大化(Cost-Per-Tokenの低減)をセットで提供するポジションを狙う。
GPUやその他アクセラレータは高価で不足状態にあり、Nutanixはマルチテナントによるリソース共有を推進している。ただし、ラマスワミ氏はその動機について「GPU不足だから実施しているのではない」とする。
「CPUの仮想化と本質的に同じだ。仮想化によってCPUを複数のワークロードで共有し、リソースを効率的に使えるようするのと同じ発想を、GPUに適用している」。そして、「リソースを無駄に遊ばせない、投資対効果を最大化するという考え方は、供給不足が解消されても変わらない。むしろ長期的に正当化される」と付け加えた。
一方で売り上げと顧客数という点で、NutanixにとってAIはまだ大きくはない。これについてラマスワミ氏は、「エンタープライズにおけるAI採用は今もまだ初期段階にある。本番稼働している事例の多くは比較的シンプルな推論ユースケースだ」と話す。
具体例として、医療分野での活用として「AIが医師と患者の会話を文字起こし、要約することで、医師が1日に診られる患者数が20%増えている」という事例を紹介した。シンプルな推論から、複数エージェントが連携して自律的に業務を遂行するエージェンティックAIへの移行については「マルチエージェント展開の事例が増え、トレンドとなり、大量採用へと進む。通常の技術採用曲線をたどるだろう。数年はかかる」との見通しを示した。
データ主権(ソブリン)については、Agentic AIのオンプレミス、プライベートクラウド展開を後押しする要因と見ている。「データ主権は(一過性のものではなく)間違いなく続く。各国が独自のソブリンクラウドを、CPUだけでなくGPUワークロードでも構築し始めている。これはNutanixにとって大きなビジネス機会だ」と述べた。
競合は3カテゴリー、ミドルウェアへの拡大も認める
プラットフォームの守備範囲が広がるにつれ、競合構図も複雑化している。競合についてラマスワミ氏は、BroadcomのVMware、IBMの「Red Hat」、パブリッククラウド各社と3カテゴリーをあげた。ただし、パブリッククラウドについては、ワークロードを自社クラウドに取り込もうとする側面では競合するが、Nutanixが「Amazon Web Service」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud」でも動くことで協業も成立することから「競合しながら協業する関係」と表現した。
これらが既存の競合とすれば、ワンプラットフォーム、ワンエクスペリエンス戦略の下で進むプラットフォーム戦略で競合も拡大するのか。例えば、2日目の基調講演では、RAGのためのデータの統合として、データベース/ファイル、オブジェクト/アプリケーションデータと複数のソースをまたいだデータのパイプラインと結合をする”AI Data Hub”のデモを見せた。
ラマスワミ氏はNutanixがカバーする領域が「ミドルウェアに近づいている」と認める。そして、次のように続けた。
「数年前には、プラットフォームサービスの領域でプレーできるとは思っていなかった。しかし今、私たちは徐々にその方向に近づいている。ただし、AtlassianやSalesforceのように開発者コミュニティーに軸足を置いたアプリ企業かというと、現時点では違う。アプリ層に踏み込むとなると、製品の方向性だけでなく、営業対象も組織文化もマインドセットも全て変わる。慎重に考えて実行しなければならない。今はまだその段階にない」
ラマスワミ氏は最後に、HCIからハイブリッドクラウド、外部ストレージ対応、AI、Kubernetesという変化の軌跡を振り返り、「どの技術企業も進化しなければならない。変化しないでいることはできない」と述べた。
日本は顧客数が17%増、外部ストレージ連携が加速
日本市場について、ニュータニックス・ジャパンで執行役員 Field CTO兼システムエンジニア統括本部長を務める荒木祐介氏に話を聞いた。
荒木氏によると、日本でも顧客数は前年比17%増、パートナー数は同23%増で成長しているという。また、外部ストレージ連携について日本市場の実態をこう説明する。
「EverpureやDellのストレージはNVMe over TCPという新しいプロトコルへの切り替えが必要で、ストレージ機器の交換スケジュールに合わせた商談になる。一方、今回発表されたNetAppはNFSでの接続になるため、比較的導入しやすい」と外部ストレージでの提案を加速する材料になるとの期待を見せた。
.NEXTで発表されたNKP(Nutanix Kubernetes Platform)のベアメタル対応については、想定ユースケースは「両極端」だという。
「一つは店舗や工場ラインに置くような小規模なエッジサイトで、ハイパーバイザーを挟むとリソースのオーバーヘッドが大きくなるため、ベアメタルで直接コンテナアプリを配布したいというニーズがある。もう一つは逆に大規模なAIトレーニング環境で、GPUを直接操作して性能を最大限引き出したいというケースだ」
管理はNKPで一元的に実施するが、ベアメタル環境ではハイパーバイザーが担っていたハードウェア抽象化の層がなくなる。そのため、物理サーバのファームウェアやドライバーなど、機器レベルの管理作業が従来より増えると見る。現時点では運用担当者にLinuxの直接操作など一定の習熟が求められる場面もあるという。一方で「ファームウェアのライフサイクル管理といった機能も順次追加されており、素のKubernetesをベアメタルで動かすより楽になるよう設計されている」と荒木氏は述べた。
ソブリンクラウドについては、日本ではソブリンクラウドという大きなくくりよりも、顧客個別の専有環境を構築してその中でサービスを提供するモデルが多いという。荒木氏は「NTTドコモがベアメタルでNutanixに対応したサービスもその一例で、セキュアなクローズド環境でのクラウドサービスのニーズは依然として高い」と述べた。
グローバルでは新たな顧客層として位置付けるネオクラウドについては、「海外ではスタートアップが担うケースが多いが、日本ではGPU調達などの初期投資の大きさから、ある程度の規模を持った既存プレーヤーが提供する形になるだろう。GPUをいくつ持っているかではなく、AIプラットフォームとしてどう動かすかまで含めたサービスが求められており、そこはNutanixがしっかりサポートする領域だ」と述べた。
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