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SCS評価制度が描くサプライチェーンセキュリティの全体像:4つのメッセージが示す企業単体を超えたリスク管理の基軸★の本質――SCS評価制度の裏を読む

本連載の総括として、SCS評価制度を4つのメッセージと2つの基軸で整理します。そこから見える当該制度の本質は、自社単体ではなくサプライチェーン全体でセキュリティ水準を引き上げる発想にあります。本総括と共に、連載を通じて示してきた評価基準への理解を、認証取得に向けた具体的な第一歩として活用してください。

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 本連載ではこれまで、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の設計思想から出発し、個別の要求事項や評価基準に着目しながら、そこに込められたメッセージを整理してきました。本稿はその総括として、制度全体の骨格を一望できる視点を示します。これらの内容を振り返ると、個々の要求事項はばらばらに存在しているのではなく、一定の観点に基づいて体系的に構成されていることが分かります。

 本連載では、本制度を以下の4つのメッセージから読み解いてきました。


SCS評価制度が示す4つのメッセージ(出典:ITR)

 以下にそれぞれのメッセージの概要を示します。

(1)現状把握の必要性と実効性の確保

【参考連載記事】

 本制度は、取引先を「事業継続リスク」と「情報管理リスク」の2つの観点からリスクを区分し、その結果に基づいて★3または★4のどちらを求めるかを判断することが前提となっています。

 この枠組みがあれば、取引先へのセキュリティ要求水準を根拠とともに説明できます。その結果、過剰、過少な要求を防ぎ、妥当な交渉が可能になります。また、評価基準はISO/IEC 27001などの既存ガイドラインと整合し、実効性も確保されています。

(2)取引先や外部サービスへの対応

【参考連載記事】

 サプライチェーンにおけるセキュリティは自社のみで完結するものではなく、取引先やクラウドサービスなどの外部サービスを含めた関係性の中で成立します。

 本制度では、クラウドサービス提供事業者を「管理すべき取引先の1つ」として位置付けています。加えて、データを自社の重要情報資産として統制する「データガバナンス」を評価基準に組み込んでいる点にも注目すべきです。この設計はデジタル庁や情報処理推進機構が近年強調してきた論点と整合します。

(3)継続的な運用の定着

【参考連載記事】

 セキュリティ対策は導入して終わるものではなく、継続的に運用されて初めて機能します。本制度では、★3で8項目、★4ではこれに加えて15項目で、年1回以上の点検や教育訓練などの実施が求められています。

 こうした継続運用には、相応の業務負荷が伴うため、「誰が何をどこまで担うか」の役割を事前に整理し、運用体制を構築することが重要になります。この役割整理に当たっては、国家サイバー統括室が公表した「サイバーセキュリティ人材フレームワーク活用の手引き2026」が指針として有効です。自組織で担う役割と外部委託との組み合わせを具体化していく視点が、継続運用を現実的に支える鍵となります。

(4)レジリエンスの強化と経営層の関与

【参考連載記事】

 本制度では、インシデント対応体制の整備や経営層への報告体制の構築が求められており、サプライチェーンリスクを全社的なリスク管理の対象として位置付け、継続的に対処できる体制の確立が重視されています。

 こうした体制の整備を通じて、サプライチェーンリスクを経営課題として位置付けることで、予算確保や体制整備の意思決定がしやすくなります。また、経営層との対話を平時から積み重ねることは、インシデント発生時に経営層が迅速に判断を下せる体制を醸成することにもなります。


 これら4つのメッセージを俯瞰(ふかん)すると、(1)(2)は「外部との関係構築のあり方」に、(3)(4)は「継続的な組織活動のあり方」に対応しており、この2つの基軸を本制度の骨格と捉えることができます。


4つのメッセージに対応する2つの基軸(出典:ITR)

外部との関係構築のあり方

 クラウドサービスや外部委託が一般化した現在、全てのサプライチェーンリスクへの対策を自社のみで完結させることは現実的ではありません。その対策をどこまで自社で担い、どこから外部組織の協力を得るのかという観点を整理することが「(1)現状把握の必要性と実効性の確保」の問いです。

 さらに、企業は取引元として要求する側にも、取引先として対応する側にもなり得ます。こうした双方向の関係性の把握を前提に、取引を通じたセキュリティ水準の確保が制度設計に組み込まれていることが「(2)取引先や外部サービスへの対応」のメッセージです。

継続的な組織活動のあり方

 ツールの導入や体制整備だけで、サプライチェーンリスクへの対策は完了しません。定期的な点検や見直し、さらにインシデント発生時の対応までを含め、その運用を定常化させていく必要があります。

 「(3)継続的な運用の定着」が問うのはまさにこうした仕組みの定着です。加えて「(4)レジリエンスの強化と経営層の関与」では、インシデント対応体制の整備や経営層への報告体制の構築が求められており、サプライチェーンセキュリティを組織全体で定着に向けて推進する姿勢が求められています。

まとめ

 本制度の本質は、単にセキュリティ対策の導入状況を確認するものではなく、企業に対して全ての対策を自社で実施することを求めているものではありません。企業がサプライチェーン全体のリスクにどう向き合うかを問うものです。

 サプライチェーン全体のセキュリティ強化を実現するためには、自社の体制整備だけでなく、取引先や外部サービスを含めた関係者との連携を前提としたリスク管理が不可欠になります。本制度は、そのようなサプライチェーン全体でリスクに向き合うという考え方を制度として整理したものといえるでしょう。企業単体の対策ではなく、サプライチェーン全体でセキュリティ水準を引き上げていくという発想こそが、SCS評価制度の本質です。

 ★取得のために、まずは本連載で取り上げた4つのメッセージを手がかりに、自社の現状を「外部との関係構築のあり方」「継続的な組織活動のあり方」の2軸から見直すことから始めてみてください。

 具体的には、1.主要取引先のリスク区分を「事業継続リスク」「情報管理リスク」で書き出す、2.既存の認証取得状況を棚卸して★取得対応に充てられる項目を洗い出す、3.『継続的な運用』を担うチームの役割分担を整理する、といったステップが考えられるでしょう。

 本連載が、SCS評価制度への理解を深める一つの手がかりとなり、サプライチェーン全体のセキュリティを共に引き上げていく動きにつながれば幸いです。

筆者紹介:中村悠(アイ・ティ・アール アナリスト)

ユーザー企業の情報システム部門および外資系セキュリティベンダーでの実務経験を経て、2023年より現職。情報セキュリティ分野の市場分析を担当し、執筆や講演を通じた啓発活動にも取り組む。CISSP/CEH保有。


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