中小企業の約半数、ITツール導入で「かえって不効率」に 成否の分岐点は?:IT調査ピックアップ
業務効率化のためにITツールを導入したのに、かえって管理の手間が増えてしまう――。中小企業の経営者や幹部を対象にした調査で、約半数が逆効果を感じていることが分かった。効率化の成否を分けるものは何か。
業務効率化を目的としてITツールを導入する企業は多い。しかし、法人向け印刷ECサービスを手掛けるラクスルがこのほど発表した調査によると、ツール導入で新たな負担が生まれるケースが目立つようだ。
ラクスルは2026年6月9日、中小企業の経営課題に関する実態調査の結果を発表した。「ITツールの導入で、かえって管理の手間や作業の複雑さが増したと感じるか」という問いに対し、「非常に強く感じる」「やや感じる」と答えた割合は合計49.5%に達した。
人手不足の影響が「非常にある」とした企業に絞ると、ITツールの導入によってかえって管理の手間や作業の複雑さが増したと感じた割合は合計57.4%に上る。業務効率化のためのツールにより、新たな手間が生まれている様子が浮かび上がる。
もっとも、ITツールを導入した全ての企業で業務効率化が阻まれているわけではない。効率化が実現するかどうかの分岐点とは。
ITツール、成否を分ける要因は?
ラクスルがITツール導入において着目するのが「仕組み化」の有無だ。ITツールは既存の仕組みを自動化したり効率化したりするものであって、仕組みそのものをつくる道具ではない。仕組みが整わないままITツールを導入しても十分に機能せず、かえって管理の手間が増えやすいと、同社は指摘する。
同調査の「経営が特定の個人や経験に依存せず、安定的に成果が出る仕組みで回っていると思うか」という設問に対しては、「あまりそう思わない」が35.3%、「全くそう思わない(属人化している)」が12.7%で、合わせて48.0%が仕組みを構築できていなかった。
ITツールの使いこなし度別に見ると、どうか。導入済みのITツールを「全く使いこなせていない」企業では、92.3%が「仕組みで回っていない」と答えた。一方で、「非常に使いこなせている」企業で「仕組みで回っていない」と答えた割合は39.1%にとどまった。
仕組みの有無で成果に約6倍の差
営業活動でも仕組みは整備されていない企業が多い。「属人化を排除した再現性のある仕組みが構築されているか」という問いに対し、「構築されている」と答えた企業は10.3%にとどまった。「一部構築されているが個人に依存している」が54.3%、「全く構築されていない」が35.3%で、合計89.6%の企業が仕組みづくりを十分に進められていない可能性がある。
仕組みの有無は事業の成果にも表れた。売り上げ向上のために改善の取り組みを実施した企業のうち、営業の仕組みが「構築されている」企業は、「期待以上」または「おおむね期待通りの成果が出た」と答えた割合が90.0%に上った。一方、仕組みが「全く構築されていない」企業で、「期待以上」または「おおむね期待通りの成果が出た」と答えた割合は15.4%にとどまり、約6倍の差がついた。
経営全体でも傾向は同じだった。安定的に成果が出る仕組みで「回っている」と答えた企業ほど取り組みの成果が出やすく、「全くそう思わない(属人化している)」と答えた企業で「成果が出た」と答えた割合は0.0%だった。
仕組みづくりが進まない理由は
仕組みを整備する必要性は、76.4%の経営者や幹部が認識している。それでも取り組みが進まない理由として、ラクスルは「仕組みを一緒に設計してくれる存在がいない」点を挙げる。
「中小企業向けの支援サービスに、経営を俯瞰して仕組みを設計する存在が不足していると感じるか」という問いに対し、「非常にそう感じる」が11.0%、「やや感じる」が45.7%で、合わせて56.7%が不足を感じていた。
ラクスルは、多くの中小企業が仕組みづくりの必要性を理解しながらも、「何から、どのように設計すればよいか分からない」状態にあり、仕組みづくりを十分に構築できていない可能性があるとみている。
同調査は全国の従業員数2〜100人規模の中小企業経営者や幹部300人を対象に、2026年2月に実施した。
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