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FDEとリコーの新コンサルサービス、どこが違う? AXのパートナー選びを考察Weekly Memo

企業はAXに向けてどのようなベンダーをパートナーに選べばよいのか。リコーの新たなAIコンサル会社と最近よく聞く「FDE」との共通点と相違点を明らかにしつつ、考察する。

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 企業はAIを中核に業務プロセスやビジネスモデルを変革するAX(AIトランスフォーメーション)を推進する際、どのようなベンダーをパートナーに選べばよいのか。AXパートナーの見付け方について、リコーの新たな取り組みにヒントがあると感じたので、今回はその内容を紹介して考察したい。

企業のAX支援に向けたリコーの新たな取り組みとは

 リコーの新たな取り組みとは、同社が2026年6月29日に発表したコンサルティングファームのライズ・コンサルティング・グループ(以下、RCG)との合弁事業だ。リコーが80%、RCGが20%を出資し、企業のAXを支援する「リコーAIコンサルティング」を設立して7月から事業を開始している。

 発表同日に開催された会見では、合弁会社の代表取締役社長に就任した梅津良昭氏(リコー 経営企画本部 AIサービス事業部 事業部長)、取締役に就任した中司佳輔氏(RCG 執行役員)らが、新たな取り組みについて説明した(写真1)。


会見の様子。左から、梅津氏、中司氏、リコーの児玉哲氏(経営企画本部 AIサービス事業部 AI事業開発センター 所長)、リコーAIコンサルティング パートナーの大鐘崇氏(RCG パートナー)(筆者によるキャプチャー)

 発表によると、「合弁会社では、リコーグループが有する顧客基盤、顧客接点力、AIの基盤技術およびAIソリューション提供力と、RCGの強みであるAI・デジタル領域における戦略立案から実装・活用までのコンサルティング力を融合し、企業に最適なAI導入と定着を一貫して支援する」という。

 リコーはこれまで、AI技術やソリューションの開発・提供を進めるとともに、2025年には企業内に蓄積された暗黙知や非構造化データを活用するAI技術基盤「Hi.DEEN」を発表した。一方、RCGはAI・デジタル領域において、戦略立案から実装・業務定着までを一貫して支援するとともに、現場に深く入り込んで伴走するコンサルティング力を強みとしている。

 両社はそれぞれの強みを組み合わせることで、AIの価値を実際の業務成果へと着実につなげ、より実効性の高いAI支援を実現できると判断し、合弁会社を設立した。これにより、企業内のデータ活用を軸に、生成AIを「導入するだけでなく使いこなす」ための伴走型支援を強化する構えだ。

 合同会社の具体的な業務内容は次の通りだ。

 合弁会社のリコーAIコンサルティングでは、顧客企業の経営や業務における課題の整理から着手し、AIを活用した価値創出シナリオや将来像の策定を支援する。その上で単なるPoC(概念実証)にとどまらず、成果につながるKPI(重要業績評価指標)設計や業務プロセス改革、AI活用基盤の構築を支援し、導入後の定着と継続的な改善まで伴走する。本番導入フェーズではリコーグループのAI技術やソリューションを活用し、導入から運用、定着、展開までを支援する。これにより、顧客企業の生産性向上や競争力強化に加え、新たな価値創出や事業変革の実現を目指すとしている(図1)。


図1 リコーAIコンサルティングの特長(出典:リコーの会見資料)

 以上が、発表の概要だ。ここからは、梅津氏および中司氏の会見での説明で印象的だった話を4つ挙げたい。

 1つ目は、AXの取り組み方についてだ。

 梅津氏は、「AXは高度化、複雑化する。その実現には、業務に合わせたAIエージェントの活用や基幹システムとの連携など複雑な統制が求められる」として、次のように説明した(図2)。


図2 AXの取り組み方(出典:リコーの会見資料)

 「これまでは汎用(はんよう)業務においてチャット型AIを使って壁打ちする利用形態が中心だった。しかし、AXではさまざまな業務に合わせて、自社情報を検索する『情報検索型AIエージェント』や定型業務を担う『ワークフロー型AIエージェント』、非定型業務に対応する『自己改善型AIエージェント』など多様なAIエージェントが動き出し、全体として高度で複雑な仕組みになる。こうしたことを想定した上で、インフラ整備も含めてAXを考える必要がある」

 これはすなわち、「自社のAXをイメージし、グランドデザインをしっかりと描いて進めよ」とのメッセージと筆者は受け取った。社内で誰がAXのプロジェクトリーダーになるのか。どんなベンダーをパートナーにするのか。全社的な取り組みはそこから始まる。

AXパートナーの選択は「技術力+伴走力」に注目せよ

 2つ目は、リコーのAXの取り組みについてだ。

 梅津氏は「現場ドキュメントのAI化」「定型業務のAIエージェント化」「非定型業務のAIエージェント化」「フィジカル現場へのAIエージェント実装」と、4つのステップで進めていることを説明した(図3)。そして、「AI×データによる知識爆発や技智融合によって世の中に貢献したい」と力を込めた。


図3 4ステップからなるリコーのAXの取り組み(出典:リコーの会見資料)

 ここで注目すべきは、フィジカルAI領域も対象にしていることだ。同氏は、「(3ステップまでの)サイバーで生まれた知能が、現実世界のフィジカルで活用できるようになる」との見方を示した。リコーはもともと精密機械の製造業者なので、フィジカルAIには執着があるようだ。さらに、日本政府が今後の重点事業の筆頭に挙げていることもあり、ビジネスチャンスは大きく広がりそうだ。

 3つ目は、AXの顧客ニーズにどう応えるかだ。

 梅津氏はリコーとして保有しているアセットと不足しているアセットを示しながら(図4)、次のように説明した。


図4 AXの顧客ニーズにどう応えるか(出典:リコーの会見資料)

 「高度化、複雑化するAXへのお客さまのニーズに、誰がどのように応えるのか。リコーはAIについて高い技術を保持しているし、既存のビジネスにおいて多くのお客さまもおられる。そうしたお客さまに分かりやすく丁寧に提案して伴走するような組織を作らないと、事業として広がらないだろうと考えた。そこで、リコーの強みをレバレッジとして顧客課題起点のAXの実行力を高めるために、『伴走力』に優れたRCGと合弁事業を実施することにした」

 2012年創業のRCGは、先にも述べたように「伴走力」を強みとしている。リコーもそれがRCGを合弁相手として選んだ決め手になったという。

 4つ目は、AI時代のコンサルティングの在り方についてだ。

 この点については、中司氏がこれまでとこれからのコンサルティングについて比較しながら(図5)、次のように述べた。


図5 AI時代のコンサルティングとは(出典:リコーの会見資料)

 「AIが人の仕事を代替する時代だからこそ、コンサルティングの価値も『提案』から『AIと共に成果を創ること』へ進化すると考えている。AIとの協調を前提に、成果にこだわるパートナーとして、お客さまの変革を最後までやり切る」

 同氏はRCGで培ってきたそうした取り組みを合弁会社でも実践することを強調した。

 ユーザー視点からすると、AIに関する技術力はもちろん、両氏の話にあった「分かりやすく丁寧に提案して伴走力に優れたベンダー」をAXのパートナーに選びたいものである。

FDEとの共通点と相違点は?

 最後に、今回の話を機に、今この分野のホットなキーワードとなっている「FDE」と呼ぶAI時代の新しい職種について取り上げておきたい。FDEは「Forward Deployed Engineer」の頭文字を並べた言葉で、「顧客の業務現場に深く入り込み、AIを活用して課題整理から設計、実装、運用、継続改善まで一気通貫で担うエンジニア職種」を指す。

 今回の合弁会社の役割も同じように見て取れることから、会見で「FDEの会社なのか」との質問も出た。これに対し、梅津氏は「活動内容は近いが、あえてFDEという言葉は使っていない。というのは、今注目されているFDEは顧客企業に常駐するのが前提となっているからだ。われわれは常駐してやる業務もAIエージェントでやれるようにしたいと考えているので、FDEとは一線を画している」と答えた。

 言い方を変えれば、FDEによるサービスの提供の仕方とは異なるが、目的は同じということだろう。目的が同じということで、筆者の懸念を一つ申し上げておきたい。FDEはそれぞれ個別のAIモデルおよびAIエージェント群の使用を前提としているので、ユーザーからすると、FDEが扱うAIのベンダーにロックインされてしまう可能性がある。

 ユーザー視点からすると、FDEが自社に適したAIを選んで勧めてくれるわけではない。そのことを踏まえておく必要がある。今後、ベンダーニュートラルのITサービス事業者がユーザーにとって最適なAIを選んで勧めてくれるようになるかもしれないが、それを待つよりも、ユーザーは自らAIの「目利き力」を磨くべきだろう。なぜならば、それこそが企業競争力の源泉になり得るからだ。

 そうした状況も踏まえながら、今回紹介したリコーAIコンサルティングの活動に注目していきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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