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IOWNが変えるITインフラの形 超高速通信時代になぜストレージ技術が重要なのか激変するIT環境を見据えたデータ基盤の在り方を探る

生成AIの普及に伴うITリソースの分散やデータ管理の複雑化に、NTTの次世代通信技術「IOWN」とNetAppのストレージ技術が新たな可能性を示した。共同検証の成果からITインフラ変革の潮目を読む。

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 NTTが2019年5月に発表した「IOWN構想」がいよいよ普及段階に近づきつつある。IOWNはネットワークの全ての区間で光波長を占有することで、高速・大容量・低遅延な通信を実現するもので「APN」(All-Photonics Network)、「DTC」(Digital Twin Computing)、「CF」(Cognitive Foundation)の3つで構成される。このうち、IOWNの核を担うAPNサービスはすでに実用化されており、遠隔地へのデータ伝送に関わる課題を解決するものとして注目を集める。

 NTTの研究開発マーケティング本部でIOWN推進室 室長を務める荒金陽助氏は「われわれとしては、光をうまく使うことでハイパフォーマンスを目指しつつも、消費電力の増加を爆発的ではなくある程度に抑え込むことを狙っていました。それが2019年当時の話です」と構想を立ち上げた当時を振り返る。

 しかし、その後のAIの発展スピードは当事者たちの想像をはるかに超えるものだった。今日、生成AIをはじめとする高度なAI技術は社会の在り方を根本から変えつつあるが、同時にデータセンターにおける電力消費やリソースの不足は、単なるIT業界の技術論を超え、国家レベルの深刻な社会課題として取り沙汰されるようになっている。

 「IOWNはわれわれが当初思っていた以上に世の中の役に立ちそうだという実感を今、強く持っています」と荒金氏は語る。特に直近の数年で、コンピューティングの世界における「光」への期待はかつてないほどに高まっている。通信に関する国際会議『OFC』の議論も、かつてはラック間を光でつなぐスケールアウトが主流だったが、現在はチップ間にまで光を導入せざるを得ないという認識で一致している。2025年に入り、この転換期は明確になった。

 さらに、今後のトレンドとして注目されるのが、現実世界とAIがリアルタイムに相互作用する「フィジカルAI」だ。物理世界から発生する膨大なセンサーデータや画像・映像データを瞬時に処理し、その結果をフィジカル世界へとフィードバックする。ここで発生するデータは多種多様かつ膨大なものになる。

 このような世界においては、データが発生した場所のすぐ近くでデータを処理し、AIの推論を実行する分散型のアーキテクチャが不可欠だ。


NTT 研究開発マーケティング本部 研究企画部門 IOWN推進室 室長 博士(工学) 荒金陽助氏

 従来のITインフラは光信号と電気信号の変換が必要だったが、IOWNはこれをなくしてエネルギーロスと遅延を解消する。これにより、電力や距離の制約による「妥協のシステム設計」から解放され、超遠隔地へのリアルタイムデータ転送や、地方の余剰電力を生かしたデータセンターの柔軟な運用が可能になる。

 「さまざまな場所で生まれるデータをAI学習に生かす際も、IOWNであれば伝送遅延やデータ量を心配する必要はほぼなくなります。ニーズの高まりは想定を超えており、当初2030年頃を見据えていた実現のスケジュールを前倒して実装を進めています」(荒金氏)

"AI Ready"なデータ活用のためのAIネイティブインフラ「AIOWN」

 IOWNが目指すのは、ネットワークとストレージ、メモリが密に連携し、これらの制約からITインフラを解き放つことだ。インフラが物理的な制約から解放されれば、企業はデータやGPUなどの計算資源を、場所を問わず最適な環境に配置できる。この「どこにでも置ける自由」を具現化し、データ中心の考え方で電力やエッジまでを含めたITインフラ全体を最適化する取り組みこそ、NTTが2026年4月に発表したAIネイティブインフラ「AIOWN」だ。


AIOWN GPUや電力などのリソースを最適化する「AIOWN」(出典:NTT)

 IOWNおよびAIOWNは1社のみで実現するものではない。NTTは国際団体「IOWN Global Forum」を立ち上げ、Open Compute ProjectやLinux Foundationを含む多様な企業・団体とともに標準化を進めている。この中でも早い段階から技術検証を進めてきた企業の1社がNetAppだ。グローバルでの協業に基づき、ストレージ領域におけるプロトコルの技術検証を積み上げてきた。

ビジネス成果に直結するAI Readyなデータ基盤に求められるものはどう変わるか

 NetAppがIOWN Global Forumにいち早く参加した背景には、今後顧客が直面するこれらの課題への危機感と、同社ストレージ製品設計のポテンシャルへの期待がある。

 NetAppの日本法人ネットアップで代表執行役員社長を務める斉藤千春氏は、「AIの黎明(れいめい)期はAIツールをいかに使いこなすかがテーマでした。しかし、データ中心の世界となった現在、データとAIでいかにビジネス価値を創出するか、効果をどう出していくか、という実用化のフェーズに移行しています」と現状を分析する。

 AIの実用化フェーズでは、インフラの進化と合わせて、データを安全に使いこなせる基盤の整備を進めることが価値創出の鍵を握る。ビジネスの成果に直結するAI Readyなデータを整える上で最大の障壁になるのが、データが存在する「場所」の問題と、それらをつなぐ「ネットワーク」の帯域および遅延、アクセス権の管理、サイバーセキュリティのリスクだ。


ネットアップ 代表執行役員社長の斉藤千春氏

 「データのオーナーシップを持ち、不測の事態が起きた際もアクセスを維持してコントロールできることが重要です。データがどこにあっても透過的に管理、利用でき、データは常に自分たちの支配下にあるという世界を作らなければなりません。NetAppが提唱する『Intelligent Data Infrastructure』(IDI)は分散するデータを一貫したポリシーで管理、保護することを重視してプロダクトを設計しています。どの場所にあっても同じポリシーを基にストレージ層でデータを守り続けられる強みはIOWNやAIOWNが描く超高速ネットワークを前提とした分散型のITインフラにおいても有効だと確信しています。AIOWNとNetAppの強みが組み合わさることで、お客さまと共にデータのブループリントを描ける環境が整いました」(斉藤氏)


NetAppのデータプラットフォーム戦略。データ管理やガバナンス、セキュリティなどを考慮したストレージ基盤を目指す(資料提供:ネットアップ)

3000キロ離れたリソースでAIモデル学習が現実に 背景には綿密な技術交流

 前述のIOWN Global Forumはすでに多様な産業でユースケースを次々と生み出している。放送業界では放送局内で遠隔から映像を編集する「リモートプロダクション」が現実のものとなりつつある。建設業界では大型重機をリモートで操縦できるようになり、人手不足の解消と労働環境の改善に貢献している。

 ここで注目したいのが、NTTとNetAppが共同で成功させた「遠隔GPUによるグリーンコンピューティング実証実験」だ。この実験では、NTTが開発した大規模言語モデル「tsuzumi軽量版」を使ってAIモデルをトレーニングした。NetAppのデータ管理技術と、大容量かつ低遅延なIOWN APNを組み合わせることで、最大3000キロ離れた遠隔地のGPUを利用した場合でも、処理時間の増加をわずか1%未満に抑えられることを確認。物理的に遠く離れた計算資源であっても、手元のローカル環境とまったく遜色なく利用できることを証明した。

 散在するデータを1カ所に集約することなく、電力使用効率の高い地域のデータセンターに配置したGPUから効率的にAIの学習や推論が行える。このパフォーマンス向上を支えたのは両社による技術チューニングだ。APNの帯域幅やネットワークのセッションの在り方、さらにはウィンドウサイズやバッファサイズを含むプロトコル層での最適化を徹底的に追求した。この両分野の専門知識の掛け合わせが、データ転送性能を最大12倍にするという結果をもたらした。


実証実験の結果。3000キロの伝送の遅延を大幅に短縮した(出典:ネットアップ)

 荒金氏は「プロトコルの最適化やハードウェアへの実装、さらには付随するセキュリティ要件やメンテナンス性も含め、トータルでお客さまのビジネスを支えるためにはわれわれだけでもできない」と、NetAppとの協業の重要性を説明する。

 「あらゆる場所に分散するデータを共通の基盤でつなぐアイデアは、当時のネットワーク帯域や遅延の限界によって一定の制約を受けていました。しかし、IOWNという『光の導管』が実現したことでストレージOSのポテンシャルを生かす環境が整ったのです」(斉藤氏)

金融機関の重要システムを確実に守る超遠隔バックアップ〜広がるユースケース

 IOWNとNetAppによる共同検証の成果は、さまざまな業界が直面する具体的な課題を解決するための強力なソリューションとして具現化しつつある。

 その代表例が、金融機関をはじめとする重要インフラにおける災害対策(DR)およびビジネス継続計画(BCP)の高度化だ。すでに技術検証を進めている段階だという。

 金融システムにおいては、1トランザクションの消失も許されない極めて厳格なデータ整合性が要求される。災害などの有事に備えて、遠隔地にデータをリアルタイムに同期しておき、ビジネスを継続する必要があるが、従来の電気的な通信プロトコルとIPネットワーク環境では、伝送遅延の制約から同期可能な距離は数十キロ圏内が限界とされていた。

 しかし、広域災害を想定した場合、数十キロ程度の距離ではメイン拠点とバックアップ拠点が同時に被災する共倒れのリスクを排除できない。IOWN APNの超低遅延特性とNetAppのデータ管理技術を掛け合わせれば超長距離のサイト間でリアルタイム同期が可能になる。

インフラ刷新を「未来への投資」に〜枠を超えた共創が生む次世代の社会基盤

 IOWNの技術革新をきっかけとしたインフラ大変革は、決して遠い未来の話ではない。すでに技術は実装フェーズに入っており、企業はインフラ投資を新たなビジネス価値を創出するための「未来への投資」として捉えるべき時期に来ている。

 「今後、私たちの想像を超える勢いで新たな社会課題が次々と出てくるはずです。それに一組織だけの知見/技術で対処するのは不可能です。それぞれが得意な知見/技術を持ち寄り、一緒になって課題を明らかにして解決する。そうした社会インフラの共創が、これからの時代は一層大事になると感じています」(荒金氏)

 データ基盤の側面からインフラの進化を支えるNetAppも、この共創の輪の中で果たすべき役割を見据えている。

 「IOWNが目指すのは、国や業種を限定しない、地球全体で必要とされる普遍的なインフラの進化です。その中で私たちベンダーに求められるのは、技術提供だけではなく、多くのお客さまのご意見をうかがい、共に最適解を模索すること。AI時代に向けてさらに進化したデータ基盤によりビジネス変革を全力でご支援していきます」(斉藤氏)


取材後のNTTオフィスで。グローバルでのパートナーシップを両社が支える

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年8月22日

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