最も人気のAIユースケース、投資成果では“いまいち”だった Gartner調査:AIニュースピックアップ
Gartnerの調査によって、部門リーダーが「人気や話題性の高いAIアプリケーション」の導入を優先する傾向が明らかになった。導入率上位に挙がったAIユースケースと、投資効果上位に挙がったAIユースケースとの間のギャップとは。
ガートナージャパン(以下、Gartner)は2026年9月3日、AIを複数の事業部門にわたって本格的に展開した、またはAIファーストのアプローチを採用した組織は全体の22%にとどまるとするグローバル調査の結果を発表した。
成功事例が限られる一方、AIへの投資額は増大している。部門リーダーの85%が「2026年にAI関連支出を増やす予定」と回答し、2025年には各部門予算の平均12%をAIに充てていた。
導入率首位と投資効果首位のギャップとは?
Gartnerは、部門リーダーが実際に価値を生み出す活用例よりも、人気や話題性の高いAIアプリケーションを優先する落とし穴に陥りがちだと指摘する。
最も多く取り組まれているAIユースケースと、プラスのリターンを報告したリーダーの割合が高いAIユースケースを比べると、IT分野で明確なギャップが見られたという。
導入率で首位のAIユースケースと、投資対効果で首位のAIユースケースはそれぞれ何か。
Gartnerの調査によると、経営層の幹部が推進しているAIユースケースとして首位に挙がったのが、「サイバーセキュリティ脅威の検知/対応」と「ITサービスデスクの自動化」だ。どちらも54%の票を集めた。「コード生成およびリファクタリングの自動化」(44%)が続いた。
一方、投資効果が高いAIユースケースとして首位に挙がったのが「インテリジェントなIT資産・コスト最適化」(40%)だった。「合成データ生成」(28%)、「コード生成およびリファクタリングの自動化」(23%)が続いた。
つまり、導入率首位の「サイバーセキュリティ脅威の検知/対応」と「ITサービスデスクの自動化」と、投資効果首位のAIユースケース(「インテリジェントなIT資産・コスト最適化」)は一致しなかった。導入率と投資効果の双方で上位3位に食い込んだのは、「コード生成およびリファクタリングの自動化」のみだった。
11%の組織が、AIに投じた費用を把握できていない
Gartnerのティナ・ヌノ(Tina Nunno)氏(ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト、Gartnerフェロー)は「組織は、一般的にはあまり導入されていないものの、自社固有のビジネスニーズと密接に整合した戦略的なユースケースから、最大限かつ定量的な価値創出を得ている。CEOやCIO(最高情報責任者)は、どのユースケースが最大のリターンを生むかを特定し、各部門や部門リーダーに明確かつ効果的な目標を設定することが求められる」と提言する。
AI投資の成果を把握できているかどうかにも、企業間で差があった。AI投資のROI(投資対効果)を継続的に追跡し、AIを価値創出のポートフォリオとして管理するとともに、プロジェクトのパフォーマンスを定期的に評価し、成果の低い施策は再配分または中止する高パフォーマンス企業では、AI施策の81%がプラスのリターンを生み出していた。
一方、低パフォーマンス企業は、AI施策の29%について「投資対効果を把握できていない」と回答した。2025年に自部門がAIにどれだけ費用を投じたかを全く把握していない組織も約11%あった。
ヌノ氏は「財務面での可視性の欠如は、支出増大に伴いリスクを高める。ビジネス成果に直接結び付いた厳格な測定基準がなければ、組織はリソースの無駄遣いや期待外れの結果に陥るリスクがある」と指摘する。
また、多くの部門は大胆な変革や新たな収益源の創出よりも、生産性の向上を優先していた。生産性向上は部門リーダーの75%が主要な成果目標として挙げ、AI関連予算の平均約30%がこの目的に充てられていた。この割合は2番目に票を集めた目標の約2倍に相当する。
ヌノ氏は「生産性向上、売上成長、リスク軽減、イノベーションといった成果のカテゴリーごとに投資額を追跡している部門リーダーは、投資を正当化し、不調なプロジェクトがあれば迅速に再配分できる体制を整えている。ビジネス目標に直結した厳格な測定基準がなければ、組織は監視や説明責任への要求が高まる中で、資源配分の誤りや機会損失に直面する」と分析する。
日本でも期待したほどの効果は、得られていない
ガートナージャパンの亦賀忠明氏(ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト)は、国内の状況について次のように補足する。
「日本でも多くの企業が約3年前から生成AIの導入を進め、生産性向上を期待してきた。一方で、『期待したほどの効果が得られていない』という声は多い」
亦賀氏がこの背景として指摘するのは、AIを導入すればそのまま生産性向上につながるという安易な期待や、AIを使うカルチャーや業務プロセスが十分に整っていないまま導入を進め、結果として利用が広がっていないといった要因だ。一方で、AIエージェントプラットフォームを企業共通の基盤として整備し、業務そのものを変えていこうとする動きも急速に広がる。
「企業にとって重要なのは、これまでの取り組みを単純に成功・失敗で評価するのではなく、進化し続けるAIと向き合いながら、個々人の生産性向上からAIエージェントによるビジネス変革へと段階的に取り組み、企業を時代の変化に対応させることだ」(亦賀氏)
なお、今回の調査は2026年1〜4月にかけて、2025年度の年間売上高が5000万ドル以上の企業に所属する1303人を対象に実施されたものだ。
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