大企業に勤める回答者の過半数が「非エンジニアによる開発を実施」 全社に行き渡ったコード、検証できているのか?【調査】:編集部コラム
非エンジニアによるAI開発は、大企業ほど広がっている――。全社に行き渡ったAI生成コードは、誰がどう検証しているのか。調査からは、大企業のIT部門が品質チェックの他に求める施策が浮かび上がった。
生成AIがシステム開発に浸透し、非エンジニアによるアプリケーション開発も活発になってきた。
「ITmedia エンタープライズ」と「キーマンズネット」は「開発におけるAIの活用に関する調査(2026年)」を実施した(実施期間:2026年7月27日〜8月5日、回答数106件)。本稿では従業員1001人以上の企業(以下、大企業)に勤める回答者を中心に、AIを利用した開発(注1)に関する結果を紹介する。
非エンジニアの従業員がAIツールを使って開発に取り組んでいるかを尋ねた設問では、開発でAIを利用している、または利用したことがある層のうち「取り組んでいる」と答えた割合は全体で40.0%だった。大企業の回答者(20件)に絞ると65.0%に上る(図1)。
開発でAIを利用している大企業の回答者の過半数が、非エンジニアによる開発を実施していると答える中で気になるのが、ガバナンス体制やトラブル発生時の対応だ。
AIを使って開発した結果、IT部門の対応が必要なトラブルや事件が発生したかを尋ねた設問では、開発でAIを利用している大企業の回答者の55.0%が「把握できていない・分からない」を選んでいる。
開発でAIを利用している回答者に利用規模を尋ねた設問では、大企業の回答者の50.0%が「全社で利用している」と答えた(全体は37.8%)。非エンジニアによる開発と全社での利用が先行する大企業で、AIが生成したコードはどう検証されているのか。
全社に行き渡ったAI生成コード、大企業は検証しているか
人間が一から書いたコードと比べたAI生成コードの「エラーや欠陥の質」を尋ねた設問に対し、大企業の回答者が最も多く選んだのは「AI生成コードの検証をしていないため分からない」(33.3%)だった。
全体では「単純なミスは減ったが、アーキテクチャの不整合やセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性などの『深い欠陥』は増えた、または目立つようになった」(32.5%)が最多で、「AI生成コードの検証をしていないため分からない」は30.0%で2番目だった。
フリーコメントとしては、「『AIを(開発に)活用している』と伝えたら、最終チェックは人がきちんとやっているのかと詰められた」(IT製品関連業、IT部門、5001人以上)という声が寄せられた。
AIを利用した開発のデメリットを尋ねた設問で、大企業の回答者が最も多く選んだのは「生成されたコードの意図や構造を理解しないまま使うことで、いわゆる『理解負債』がたまる」(46.0%)だった。回答者全体でも、この項目が最多(53.8%)だった。
一方、大企業の回答者では「コードのレビューや検証に、かえって時間がかかる」(26.0%)が全体の21.7%を、「『速くなった』という体感ほど、実際の生産性は上がっていない」(22.0%)が全体の17.0%を上回った(図2)。
では、AIを活用した開発を今後安全かつ効率的に進めるために必要な施策として、大企業の回答者は何を求めているのか。この設問に対し、大企業の回答者の1位は「AI生成コードの品質や脆弱性を自動でチェック・監査するツールの導入」(56.0%)だった。回答者全体でも、この項目が1位(53.8%)だった。
差が出たのは「AI活用に関する全社的なセキュリティ・ガバナンスガイドラインの策定」だ。101〜1000人の企業に勤める回答者では38.2%が選んだのに対し、大企業の回答者では18.0%、うち5001人以上の企業に勤める回答者では9.1%にとどまった(図3)。
大企業のIT部門が「品質チェックツール導入」の他に求める施策は?
AIを活用した開発を今後安全かつ効率的に進めるために必要な施策を回答者の所属部門別に見ると、上位に挙がる施策が変わる。
IT部門(注2)に所属する回答者では「トークン消費量や利用コストを部門別・プロジェクト別に可視化・制限できる管理ツールの導入」が41.4%で2位に入り、IT部門以外の回答者(26.0%)を15.4ポイント上回った。逆に「非エンジニア(事業部門)向けの、セキュアなAI・ローコード開発基盤の標準化と提供」は、IT部門以外の回答者の24.7%が選んだのに対し、IT部門の回答者では13.8%にとどまった。
大企業のIT部門の回答者(14件)に絞ると、最も多く選ばれた項目は品質チェックツールの導入とコスト可視化ツールの導入の2つだった。品質チェックツールの導入が多くの回答者に選ばれるのは全体と同じ傾向だが、IT部門ではコストを可視化し、管理できるツールの導入も同じ割合(64.3%)で選ばれた。
「ITmedia エンタープライズ」が2026年に実施した読者調査「企業のAI活用編」では、AIの利用に当たって環境・組織文化の面で障壁になるものとして「成果を測定・評価するための指標がない」が35.8%で2位に入っている(注3)。
AIにかかるコストが想定を上回る企業が増加する中、成果測定の取り組みが急務になっている。「ITmedia エンタープライズ」と「キーマンズネット」が実施してきたこれまでの調査でも、「AI利用の効果を測る指標がない」という回答が多く寄せられてきたが、依然として指標を持っていない企業が一定数を占めるようだ。
なお、該当する層が少ないためあくまで参考程度だが、今回の調査でIT部門からは非エンジニアによるAIを使った開発に対してネガティブな意見も聞かれた。「非エンジニアに関しては、AIを活用した開発を取りやめるべき」を選んだ割合は、IT部門以外の回答者で1.3%だったのに対し、IT部門の回答者では13.8%だった。
AIを活用した開発で起きたトラブルとして、次のような声も寄せられた。「若手が『1日で作った』という経費精算ツールが、異動後に突然動かなくなった」(流通・サービス業、IT部門、100人以下)。「経理が独自で作成したツールがセキュリティソフトに検知された」(製造業、IT部門、1001〜2000人)。「AIだけを過信して開発されたものがそのまま使われてしまい、実務での予想外の事象に対応できず、システムがエラーになった」(IT製品関連業、経営部門、100人以下)。
今回の調査では、大企業の回答者ほど非エンジニアによる開発と全社での利用が進んでいると答える一方で、AI生成コードの検証やトラブルの把握が追い付いていない実態が浮かび上がった。非エンジニアによる開発が広がる中、AI生成コードの検証とトラブルの把握を誰がどのような手段で担うのか。
開発を手掛ける非エンジニアの多くは、現場の業務を熟知している可能性が高い。非エンジニアによる開発を止めるのではなく、利用状況とコストを可視化し、AI生成コードを検証する仕組みを整える。IT部門にはこうしたAI活用によるトラブルを防止する「土台」を用意する役割が求められている。
(注1)本調査における「AIを利用した開発」は、AIコーディングツールやAIアシスタントによるコード補完、自律型AIエージェントによる開発自動化、バイブコーディングによるプロンプトベース開発、ローコード/ノーコードプラットフォーム内蔵AI、汎用(はんよう)AIチャットツールを利用した開発を指す
(注2)本稿における「IT部門」は、所属部門として「情報システム部門」を選んだ回答者を指す
(注3)ITmedia エンタープライズ読者調査 2026年7月「企業のAI活用編」(調査方法:ITmedia エンタープライズ Webサイト上の自記式アンケート、調査対象者:ITmedia エンタープライズ読者、回答数:360件、調査期間:2026年6月10〜24日)
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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