AI Readyデータの本質は「日々の業務の中」にある:現場の業務改善とともに、AIが理解できるデータを育てるには
生成AIの導入が進む一方、「自社業務で使えない」「PoC止まり」と悩む企業は多い。その壁はAIの性能ではなく、“データの質”にあるとドリーム・アーツは指摘する。どのようなデータを用意すれば、AI導入の壁を乗り越えられるのか。
「AIを導入しても、思ったほど効果が出ない」――。生成AIの活用が広がる一方、成果を挙げる企業とPoC止まりの企業に分かれるのはなぜだろうか。
その分かれ目を、AIモデルの性能ではなく「データの質」と見るのが、大企業向け業務デジタル化クラウド「SmartDB(スマートデービー)」を手掛けるドリーム・アーツだ。同社は2026年6月、AI活用コンセプトの最新版「DAPA(DreamArts Practical AI) 2.0」を発表。その中核に据えたのが、データに業務上の意味、文脈、権限を持たせる「意味のDX(Semantic DX)」という考え方だ。
同社の石田健亮氏に、これからのAI活用に必要なデータインフラの本質を聞いた。
AIが「実務を担う」時代に変わる
生成AIの活用が進み、社内データを参照するRAG(検索拡張生成)の導入も広がった。しかし、大企業でもRAGの精度向上は容易ではない。
「社内文書を検索させても、回答は一般論にとどまるか的外れになりがちです。『本当に使えるのか』という疑念は拭えていません」
一方で2026年に入り「AIエージェント」が実用期を迎えようとしている。AIは質問に答える存在から、業務そのものを担う存在へと進化しつつある。
「同じ『AIエージェント』という言葉でも、2025年とは意味合いが違います。当初は『任せれば何でもやってくれる』といったばら色の未来が語られがちでしたが、現在は『実務を代行してくれる存在』という意味合いが強くなっています」
中でもソフトウェア開発の現場では実用化が進む。「この波は、一般のビジネス部門にも確実に押し寄せます」と石田氏は語る。
LLMは、あなたの会社のことを知らない
ただ、AIエージェントが実務をこなすには壁がある。
「LLM(大規模言語モデル)は、世の中の一般的な知識は持っていても、皆さんの会社のことを知りません」
AIに社内の申請方法を聞いても一般論しか返ってこず、社内のどこにどんなデータが蓄積され、どういうルール設定の経緯があるかは分からない。今期の予算額や稟議の承認結果といった確定情報は、ERPやCRMのようなSoR(System of Record)に残るが、そこに至る議論や判断の背景など文脈は抜け落ちる。
「重要なのは、『意思決定のプロセス』です。過去の議論や差し戻しコメント、意思決定の根拠。そうした情報と結び付いて初めて、データは意味を持ちます。しかし現状は、さまざまなツールや担当者の頭の中などに散在しており、AIが利用できる形に整備されていません」
データを一カ所に集めるほど、AIから遠ざかる?
データ活用では、全社のデータをデータレイクなどに集約する発想が一般的だが、石田氏は、AIエージェントが業務の文脈まで理解するためには、データを一カ所に集めるだけでは十分ではないと指摘する。
非構造化データ・半構造化データを問わず集積するデータレイクであっても、データの関連性には不明瞭さが残り、作成・変更の経緯はAIに伝わらない。これらの情報がひも付かなければ、業務の文脈を踏まえた回答は難しい。
AI Readyデータは、現場で生まれ、業務とともに “育つ”
そこでドリーム・アーツは、データを中央に集約し後から整形するのではなく、「データが生まれる業務の現場で最初から意味や文脈を伴う形で生み出し、業務とともにAI Readyな状態へ育てる」発想を提示する。
業務アプリケーションが生み出すデータを「Data as a Product」として整え、アプリケーションや部門を越えてつなぎ、AIが横断的に活用できる状態をつくる。データレイクも構成要素の一つとして生かしながら、データの意味や業務との関係性を保つ。これが、ドリーム・アーツが目指すデータメッシュの世界観であり、SmartDBもその構成要素の一つになる。
SmartDBは、大企業の複雑かつ大規模な業務をデジタル化する基盤だ。情報システム部門だけでなく事業部門も完全ノーコードで業務アプリを作成でき、申請、承認、受発注といったプロセスを現場主導で構築・改善できる。Webデータベースと柔軟なワークフロー、複雑な権限制御を一体で備える点に特徴がある。
この基盤上で日々の業務を進めることで、AIが実務で利用できる「AI Readyデータ」が蓄積される。SmartDBの強みは、単にデータをためる場所ではなく、申請・承認・判断など、日々の業務そのものを動かす基盤であることだ。
現場の担当者がアプリを作って、申請・承認を回してコメントを残す。こうした日々の業務を重ねることで、「誰が、どのような判断をしたのか」「どの文書が関連しているのか」といった情報が、文脈を伴ってつながる。
これは、全社のデータを一カ所に集め、トップダウンでAI基盤を整えるアプローチとは異なる。業務や組織が複雑で、現場の独自性が強い日本の大企業では、日々の業務からデータとその意味を積み上げる方が現実的だ。そのために重要になるのが、現場がデジタル化を進める「内製化」だ。現場が自ら業務アプリを作り、改善を重ねることで、業務固有の知識や判断の背景もデータとして蓄積される。
こうした構造は「Context Graph(コンテキストグラフ)」と呼ばれ、業務上の意味や関係性をAIが理解するための「オントロジー※形成」にもつながる。
※オントロジー:データの意味や相互の関係性を整理した、知識の設計図。AIが業務の文脈を理解するために利用される。
「データをわざわざ集めて分析しなくても、現場でアプリを使っているだけで、AI Readyデータという副産物が自然とたまる。これは、宝の山になり得ます」
もう一つ欠かせないのがデータへの「アクセス権限」だ。複数部門の兼務や、プロジェクト単位の異なる権限、さらに組織改編や人事異動など大企業のアクセス統制は複雑だ。
「SmartDBなら、権限もデータの一部として持っています。異動や昇格にもリアルタイムに追随して、利用者の権限に合わせてAIの提示する情報を制御できます。ガバナンスで、大きな差になります」
意味と文脈をひも付けるContext Graphやオントロジー、データと一体の権限。これらを日々の業務の中で育てることこそが、同社の掲げる「意味のDX」の実体だ。
AIを業務プロセスに組み込み、組織的な活用へ
そして今、内製化の対象は業務アプリの構築だけでなく、AI活用にも広がり始めている。2026年4月には「SmartDB Practical AI」が実装された。
ある企業では稟議(りんぎ)を上げる際、Excelでの膨大な規定集から分類コードを入力する手順が原因で、入力ミスによる差し戻しが6割に達していた。「AIオプションを組み込めば、規定集を学習したAIが適切なコードをサジェストしてくれます。意思決定の遅れを解消した事例です」と石田氏は語る。
SmartDB Practical AIが重視するのは、AIを業務プロセスそのものに組み込み、組織として継続的に活用することだ。
業務ごとに設計したプロンプトは「プロンプトデータベース」で一元管理し、あらかじめ業務プロセスに組み込む。ユーザー自身がプロンプトを入力する必要はなく、画面に表示されたAIのサジェストを確認し、必要に応じて修正するだけ良い。個人のAIスキルに依存せず、日々の業務の中で自然にAIを活用できる仕組みだ。
意思決定プロセスにAIが溶け込むイメージ(上画像)。会社独自のルールや暗黙知を業務プロセスに組み込み、申請時のチェックをAIで支援。利用者は意識せずにAIの恩恵を受けられる(下画像)(提供:ドリーム・アーツ)《クリックで拡大》
「意味のDX」が描く近未来
ドリーム・アーツは、2026年後半から2027年にかけて「意味のDX」を段階的に実装し、SmartDBを意思決定を支える基盤へと進化させる。
例えば、取引先を引き継いだ営業担当者がAIエージェントに「過去の経緯を知りたい」と入力すると、AIは商談履歴や関連文書、これまでの判断を踏まえて要点を整理し、次のアクションまで提示する。上司の承認時にも、過去の経緯や権限に応じて必要な情報を提示する。
将来的には、MCP(Model Context Protocol)を通じて外部のAIエージェントに業務データを安全に供給する「業務コンテキストサーバ」としての利用も構想している。鍵は、どのエージェントにどこまでアクセスを許すかを管理する「AIエージェント台帳」だ。
「参照できるデータや実行できる操作まで十分に制限できなければ、事故につながりかねません。そのため、エージェントごとに権限を設定して適切に管理する必要があります」
AI時代こそ「DX内製化」――現場で作り、育て続ける
AIエージェントが本格化する時代に、何から始めるべきか。石田氏のメッセージは明快だ。
「AIで成果を挙げるには、まず業務をデジタル化する必要があります。Excelやメールを使う定型業務をシステム化して、業務の文脈を蓄積する。急がば回れ、です」
“魔法のつえ”はない。現場主導で業務をデジタル化し、その過程で自社固有の業務や意思決定の文脈を蓄積していくことが、AI時代のDX内製化の土台になる。
日本では、デジタル人材の約7割がITベンダー側にいるとされ、IT活用を外部に委ねてきた。だからこそAI時代には、自社の業務を知る人が自らデジタル化し、その知識や文脈を社内に蓄積することが重要になる。
「『現場主導で業務をデジタル化し、内製する』というDXのアプローチの本質は、昔と変わりません。ただ、そこにAIという強力なテコが加わることで、デジタル化に挑戦する企業とそうでない企業の間に生まれる『格差』は、これまでとは比較にならないほど大きくなります」
日本企業には「すり合わせ」や合意形成など、判断に至るまでの豊かな文脈がある。これを業務とともにデータとして残していくことが「意味のDX」につながる。
「AIの専門家がいなくても、現場がSmartDBでアプリを作り、日々の業務を回す。その積み重ねが他社には模倣できない『AI Readyデータ』を自然に育てるのです」
数年かかるデータ統合を待つ必要はない。目の前の業務を一つずつデジタル化し、自社の業務とデータを育て続けることが、AI時代の競争力につながる。
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提供:株式会社ドリーム・アーツ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年11月27日




