みなさんはe-Bikeという自転車のジャンルをご存知でしょうか。e-Bikeとは、電動アシスト自転車の中でもスポーツタイプのモデルを指す言葉です。電動アシストユニットを搭載しつつも、スポーツ性を損なわないように設計されているのが特徴です。
ここでは、筆者がe-Bikeを購入後にタイヤをレースタイヤに交換した話と交換しての感想を紹介していきます。
Fav-Log編集部員。学生時代はモノ系ブログを運営し、大学卒業後はモノ系媒体の企画営業としてスマートフォンやオーディオ製品のプロモーションに携わる。その後もコンシューマー向け媒体で、企画・進行として6年の経験を積んだのちFav-Log編集部へ。趣味のモノはカメラやオーディオをはじめとした家電・ガジェットや、自転車、ファッションなどデジタルからアナログまで多岐にわたり、気になった製品ジャンルはとことん調べるデータ収集タイプのオタク。
もともと自転車にどっぷりハマっていたものの、さまざまな理由から自転車趣味から離れていた筆者。e-Bikeの動画を見たことをきっかけに検討を始め、ついには購入へと至りました。
購入後は、もともとカスタム好きということもあり、早々にパーツの交換を検討し始めました。
どこから改造するかは決まっており、まずはタイヤの比較検討を開始しました。タイヤは自転車の中で唯一、地面と接触するパーツなので、交換することによる恩恵が最も大きいと言われています。そのため、筆者は自転車をカスタムする際は、タイヤから交換するようにしています。
そうして交換先のタイヤを吟味し始めたのですが、交換する目的が楽に速く走ることだったため、スリックタイヤと呼ばれる溝が無く転がり抵抗の少ないタイプを中心に探すことにしました。とはいえe-Bikeの車重を支えるタフさは必要であるため、ガチガチのレースシーンで使われるような23c〜28cの細身のモデルは避けて32cのモデルを探すことに決定。純正のタイヤが38cなので、それでもかなり細くはなります。
スリックタイヤかつ、転がり抵抗の少なさに定評があること、32cのモデルがあることを条件に絞っていき2つの候補が残りました。
「シュワルベ ワン」は、ドイツに本社を置くタイヤメーカー「シュワルベ」のフラッグシップモデル「シュワルベ プロワン」ベースに作られたオールラウンドモデルです。転がり性能や乗り心地に定評のあるモデルで、e-Bike対応をうたっていることや、ロードバイクに乗っていた頃に最後に装着していたタイヤということもあり、最終候補に残りました。
「グランプリ 5000」は、ドイツの自動車部品メーカー「コンチネンタル」の自転車タイヤフラッグシップモデル。非常に高い耐パンク性能、耐久性と転がり性能、グリップ性能を兼ね備えたモデルで、プロショップの店員や自転車クラスタにおすすめを聞いたら、最初に名前が挙がるようなモデルです。
最終的に、馴染みのプロショップの店長に上記の2モデルで耐久性の優劣を聞いたところ、グランプリ 5000に軍配が上がるという話だったので、交換するタイヤはグランプリ 5000に決定しました。
まず大きく変わったのは見た目。タイヤの太さが38cから32cへと細くなり、溝の無いスリックタイヤになったので、かなりスマートな外観になりました。
実際に測ってみるとグランプリ 5000の横幅は3.15cm。純正タイヤの実測値は4cmだったので横幅が1cm近く細くなっています。
ハイエンドのレースモデルかつ、細いスリックタイヤへと変更したので、転がり性能はかなりアップしました。もともと平地ではギアの7速、8速を常用していたのが8速、9速が常用帯に。電動アシストも使用できる4段階の中で最も強いスポーツモードをほとんど使わなくなったので、ギア1段分以上の効果があると言えそうです。
さらに使用するアシストモードのレベルが下がったということは、アシスト可能距離が伸びたということでもあります。燃費(電費)が改善するのはe-Bikeにおいてかなりポジティブな要素。e-Bikeは転がらないタイヤでも、どうせアシストされるから変えなくていい――と言われがちです。しかし個人的には基本スペックの1つであるアシスト可能距離も伸びるので、e-Bikeのタイヤ交換は大いにアリという結論です。
タイヤを交換してから200kmほど走りましたが、問題は今のところ起きていません。消耗スピードも普通で、乗っていて違和感もゼロです。
e-Bikeが重いと言っても普通のロードバイクと比べて10kg前後の差なので、重さが耐久性や使用感に影響することはほとんど無さそうです。10kg前後なら車重より乗る人ごとの体重差の方が幅は大きいでしょう。
また、よく言われるe-Bikeの急な加速による影響もほぼゼロと言っていい気がします。そもそもスポーツタイプの電動アシスト自転車であるe-Bikeは、急加速などせず自然な加速感になるようにチューニングされていますし、タイヤにかかる負荷も一般人がe-Bikeでアシストを利用して走るよりも、ロードバイク上級者が時速40キロ前後で巡行したり、時速50キロ超の速度でアタックをしたりする方が、よほど負荷が掛かるはず。レースタイヤは、そういった速度や加速にも対応できるように設計されているので、e-Bikeに装着したところで耐久性やグリップの問題が起こるというのは考えづらそうです。
実際に乗っていても、停止状態から時速30キロまでアシストを利用しつつ急加速したり、時速35キロ前後で巡行したりしても不安を感じる場面は無く、消耗の度合いもロードバイクに装着した場合と比べて多いということもありませんでした。
耐久面に関しては、使用するタイヤが対応する重さの範囲内に車重と体重の合計が収まっていれば、e-Bikeだからと特別な選び方はしなくて良いと思います。タイヤの太さについてはホイールの内径によって装着できる幅に制限があるので、調べたり店員さんに相談したりしつつ、選ぶようにしましょう。
ここまで性能面や耐久性については、e-Bikeのタイヤを交換しても問題が起こることはほとんど無いと紹介してきましたが、大きな注意点が1つあります。それは、純正のタイヤよりも太いタイヤに交換した際に、法律で定められたアシスト上限速度を超えてしまう可能性がある点です。
e-Bikeの速度の認識にはホイールの回転数を利用している場合が多く、純正よりも太いタイヤを装着するとホイールが1周するまでに進む距離が長くなります。
これの何が問題が分かりやすく極端な例を挙げて説明しますが、純正タイヤでは1回転で1m進んでいたが、太いタイヤに交換したことで1回転で1.5m進むようになったとします。そうすると、e-Bike側はホイールの回転数で速度を認識しているので、元の上限速度の1.5倍の速度までアシストを行ってしまいます。その影響で道路交通法施行規則で定められたアシスト上限速度(時速24キロ)を超えてアシストが行われるようだと基準外となり、公道走行が違法となります。
実際にはここまでタイヤの周長が伸びることは稀ですし、日本のメーカーは上限速度に対してマージンを設けて時速22キロあたりでアシストが切れるように設定していることが多いので、多少太いタイヤを装着しても基準を超えることは、あまり無いでしょう。しかし、もし超えてしまえば違法なe-Bikeとなってしまうので、元よりも太いタイヤに交換する場合はプロショップの店員さんなどに確認・相談してから行うのが無難です。
また速度表示機能が元から付いているe-Bikeの場合、太くした場合、細くした場合に関わらず、正確な速度が表示できなくなるというデメリットも生じます。筆者は割り切ってサイコンを別途装着しましたが、気になる人もいると思うので、そういったデメリットもあることを認識したうえで交換を行うのをおすすめします。
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