特殊詐欺の犯人はなぜ「固定電話」を狙う? 元刑事が解説する理由と対策法 被害を防ぐ電話機の機能とは?
オレオレ詐欺や還付金詐欺など、主に高齢者からお金をだまし取る「特殊詐欺」の被害は、2020年までは6年連続で減少を続けていたものの、その後増加に転じています。離れて住む高齢のご両親がいる方などは、不安に感じているのではないでしょうか。
オレオレ詐欺や還付金詐欺など、主に高齢者からお金をだまし取る「特殊詐欺」の被害は、2020年までは6年連続で減少を続けていたものの、その後増加に転じています(出典:警察庁組織犯罪対策部資料)。離れて住む高齢のご両親がいる方などは、不安に感じているのではないでしょうか。
特殊詐欺は、最初に犯人側から「アポ電」と呼ばれる電話がかかってくることが多く、被害に遭わないためにはアポ電を防ぐことが重要です。
今回は、固定電話にアポ電がかかってきやすい理由や対策について紹介します。
山根厚介
東北大学中退後、15年間警察で勤務。在職中は主に刑事部門を担当し、鑑識や初動捜査、知能犯罪捜査などを手がける。在職中に日商簿記2級、2級FP技能士、情報セキュリティスペシャリストなどの資格を取得。警察を退職後ライターとして活動を始め、前職や資格をいかして情報セキュリティなどIT関連や家計の節約に関する記事などを手がけている。
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固定電話にはアポ電がかかってきやすい
特殊詐欺では、最初に犯人が被害者へアポ電をかけてくることが多くあります。犯人はアポ電の反応によって犯行を行うかどうかを判断しているのです。
警察庁が2023年4月にまとめた「特殊詐欺の手口と対策」によると、2022年11〜12月に認知した事件のうち、被害者側の通信手段は97.2%が固定電話だったそうです(出典:警察庁組織犯罪対策部資料)。確かに筆者の経験からも、アポ電が携帯電話にいきなりかかってきたという事例はほとんど記憶にありません。
固定電話にアポ電が多い理由
なぜ固定電話にアポ電がかかってきやすいのでしょうか。大きく2つの理由が考えられます。
電話番号が名簿として出回りやすい
固定電話は電話帳が作成されているため、名簿として出回りやすいです。犯人は「名簿屋」と呼ばれる業者から名簿を入手し、名簿を元にアポ電をかけます。名簿は電話帳のほかにも、学校の卒業生名簿や通販の高額利用者など、さまざまなリストから作られています。
筆者も何度か特殊詐欺の捜索を行ったことがありますが、捜索先でアポ電用の名簿をしばしば目にしました。
固定電話を契約している人は高齢者が多い
固定電話の契約者に高齢者が多いことも理由に挙げられます。携帯電話に慣れている若い世代にとっては、固定電話の必要性が感じられないため、契約していない方も多いのではないでしょうか。
しかし、かつては固定電話の契約が社会的信用にもつながっていたことなどから、高齢者世代では現在も固定電話を契約し続けている方も多いでしょう。
そのため、犯人の立場からすると、固定電話の名簿からアポ電をかければ、ターゲットである高齢者層にヒットする可能性が高いのです。
アポ電を防ぐ対策
アポ電を防ぐ対策にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つの対策を紹介します。
ナンバーディスプレイ/ナンバーリクエスト
ナンバーディスプレイはアポ電を防ぐために必須の機能です。ナンバーディスプレイがなければ固定電話にかかってきた電話をとらざるを得ませんが、ナンバーディスプレイがあれば知らない電話番号からの電話に出ないという選択ができます。
もう一つ有効な機能として、「ナンバーリクエスト」があります。ナンバーリクエストとは、非通知で電話をかけてきた相手に、番号を通知してかけ直すように自動的にアナウンスされるサービスです。固定電話の着信音は鳴らないため、非通知でアポ電をかけてきた場合には、自動的にシャットアウトできます。
NTT東日本とNTT西日本では2023年5月から、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者の回線であれば、ナンバーディスプレイ・ナンバーリクエストを無償で利用できるサービスを始めています。まだ申し込んでいない方は、この機会に申し込むことをおすすめします。
通話を録音する
通話を録音することも有効な対策です。犯人はできるだけ自分たちの証拠を残したくないため、音声が録音されることを警戒しています。しかし、音声を録音できる電話機がない場合も多いでしょう。
その場合は、電話機を常に留守番電話にしておき、電話にはすぐに出ず、録音された内容を確認してからかけ直すことをおすすめします。用事がある人であれば留守番電話にメッセージを残すでしょうし、アポ電であればわざわざ留守番電話にメッセージを残すことは考えにくいからです。
電話番号を変更する
アポ電がすでに何度かかかってきたことがある場合や、かかってくる可能性がある場合は、電話番号の変更も有効です。変更後は、家族や知人など限られた人にだけ番号を知らせるようにして、名簿として売られないように気を付けましょう。
手軽に特殊詐欺対策ができる固定電話機を紹介
ここまでアポ電を防ぐための対策について説明してきましたが、そもそも固定電話を置かないことが最も有効な対策です。しかし、さまざまな事情で廃止できない人もいるでしょう。また、ナンバーディスプレイなどの契約や設定を行うのは、機械の設定に慣れた人でなければ難しいかもしれません。
そこで、手軽に特殊詐欺対策機能を設定できる電話機を紹介します。
シャープ 「JD-AT95CL」
シャープの 「JD-AT95CL」は、さまざまな特殊詐欺対策機能を持つ電話機です。着信すると、着信音が鳴る前に「通話が自動録音されている」などの警告メッセージが流れます。
また、家族など電話番号を登録した人からの着信は緑色のランプが点灯しますが、登録外の番号からかかってきた場合は赤色ランプが光るため、不審な電話かどうかがすぐに判断できます。
これらの防犯機能はあらかじめ設定されているため、機械の設定に不慣れな方でも安心して使えるでしょう。
パナソニック 「VE-GD27DL」
パナソニックの「VE-GD27DL」も、さまざまな特殊詐欺対策機能を持つ電話機です。先述したシャープの 「JD-AT95CL」のような、自動録音や着信前の警告メッセージもあります。
そのほか、ボイスチェンジ機能も搭載しています。女性の場合でも、男性のような声に変えることができ、特殊詐欺だけでなく、しつこいセールス電話などにも有効です。ショッピングサイトでの販売価格が7000円台とリーズナブルな点も見逃せません。
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