「新基準原付」でも時速30kmや二段階右折は継続? 車両区分の見直しでルールは変わるのか
2025年11月に適用される厳しい第4次排ガス規制により、消滅の危機にさらされていた50cc以下の原付クラス。その代替案として登場したのが、125cc以下で最高出力を4kW(5.4ps)に制御した「新基準原付」です。
2025年11月に適用される厳しい第4次排ガス規制により、消滅の危機にさらされていた50cc以下の原付クラス。その代替案として登場したのが、125cc以下で最高出力を4kW(5.4ps)に制御した「新基準原付」です。
車両区分の見直しによって、原付免許や普通自動車免許でも乗れるこの新カテゴリー。交通ルールはどう変わるかなど、現在分かっていることを紹介しましょう。
大屋雄一
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
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道交法は現行の原付を踏襲 法定最高速度は時速30kmのまま
2023年12月に警察庁が容認したことで、実現に向けて大きく動き出した「新基準原付」。今後は法改正に向けてのパブリックコメントが募集され、新排ガス規制が原付に適用される2025年11月までに、具体的な法改正の内容が決まることでしょう。車両メーカーからも新基準原付モデルが順次発表される予定で、こちらも期待が膨らみます。
さて、原付と言えば特有の交通ルールがあります。まずは法定速度。道路の制限速度が時速40kmや50kmであっても、原付の最高速度は30kmに定められています。また、複数の車両通行帯がある場合は、やむを得ない状況を除き、一番左側の車両通行帯(第一通行帯)を走らなければなりません。
さらに、信号のある三車線以上の交差点を右折する際は、真っ直ぐに渡った先で方向を右に変え、正面が青信号になったら直進するという「二段階右折」が義務付けられています。
現行の原付は設計最高速度が時速60km以下のため、スロットルを大きく開ければ時速50〜60kmの交通の流れに乗る性能があります。しかし、その時点で時速20〜30km程度の速度超過となってしまいます。
この「時速30km規制」については、現実の交通状況に即していないなどの理由で昔から議論されており、もしや新基準原付の導入を機に見直されるかも? などという声もあったのですが……。残念ながら時速30km規制を含む全ての原付ルールが、新基準原付でも継続されるとのことです。
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新基準原付は不正改造防止措置や時速60kmリミッターも採用予定
新基準原付は、ゼロから新型車を開発するのではなく、現在販売されている125cc以下のモデルをベースに、「1:物理的な制御(スロットル開度の規制など)」「2:電子的な制御(エンジン・コントロール・ユニット/ECUによる制御)」「3:その両方の組み合わせ」によって、最高出力を4kW(5.4ps)以下に制御される予定です。
メカに詳しい人なら、これらの制御を改造することで、125cc本来のフルパワーを取り戻せそうだと考えても不思議ではありません。しかし、「容易な改造を可能とすることは、お客様の安全のみならず、製造メーカーの信頼を損なうことにもつながるため、改造防止は重要な課題である」との声明が日本自動車工業会から出されており、ハードルの高い不正改造防止措置が講じられることでしょう。
また、現行の原付と同様に、時速60km以上出ないようにするスピードリミッターが設けられるほか、スピードメーターも時速60kmを上限とした表示に改められるでしょう。さらに、原付は二人乗りが禁止されているため、ベースとなる125ccモデルが二人乗り可能な設計であれば、新基準原付ではシートを一人乗り用にしたり、タンデムステップを省略するなどの措置がとられる見込みです。
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ホンダは50cc以下を縮小 ヤマハは新基準原付を早期に投入する
こうした流れを受けて、ホンダは現行の原付である50cc以下の生産を縮小し、新基準原付に注力するとのこと。ヤマハは、そのホンダによって生産されている原付を廃止し、自社で125ccベースの新基準原付を開発して投入すると発表しました。
スズキはというと、実は2023年10月に開催されたジャパンモビリティショー2023で、電動バイクの実証実験機をさりげなく展示していました。「バーグマンストリート125EX」をベースに電動化したもので、最高出力は4.0kW。つまり、新基準原付に適合したモデルだったのです。
製品化に関してのアナウンスはありませんが、短距離移動がメインのコミューターであれば、電動というアプローチも有効でしょう。
ガラパゴス化していた日本のコミューターが、ついにグローバルへ。日常的な移動手段としてだけでなく、デリバリー業務や観光地のレンタルバイクなど、原付は日本中で活躍しており、今後も生き残る道筋ができたことは非常に喜ばしいことです。外観の識別方法(ナンバープレートの色など)や周知方法についてはまだ議論の余地があるものの、それらが決まり次第またお伝えしたいと思います。
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