icon GUIの充実

 ext3やGRUBが最も大きな特徴だと紹介してきたが,Red Hat Linux 7.2のもう1つバックグラウンドには,GUIを駆使した管理ツールの充実がある。従来からX Windowを利用したさまざまな設定管理ツールを提供しているが,中には日本語化がされていないツールが含まれるなど完成度について疑問な点も多かった。しかし,Red Hat Linux 7.2ではほとんどのツールが日本語化されており,さまざまなツールが標準で利用できるようになっている。

グラフィックシェル「Nautilus」

 Red Hat Linux 7.2では,GNOMEがバージョン1.4となった。そしてGNOME 1.4で動作するグラフィックシェル「Nautilus」が搭載されている。

 X Window起動直後のデスクトップには,「ここからスタート」といったWindowsを思い出させるようなアイコンがあり,これをダブルクリックするとFig.4のようにNautilusが起動する。

 NautilusはWindowsにおけるエクスプローラのような存在で,ファイル一覧を参照したり,ウィンドウ上にWebページ(HTMLファイル)を表示させることができる。

 これによりデスクトップの操作性がかなり向上し,サーバ環境ではなくデスクトップ環境としてLinuxを使おうという人には便利と感じる点が多いはずだ。もちろん日本語対応もかなりの完成度であり,日本語ファイル名を使っても問題が起きないよう配慮されている。

Fig.4■Nautilus
Fig.4

各種設定管理ツール

 Red Hat Linux 7.2では,初心者でも各種設定変更や管理がしやすいようさまざまなGUIツールが付属されている。ほとんどの基本設定は,もはやエディタを使ってテキストファイルを編集するのではなく,GUIで設定できるようになっている。おもな設定ツールには次のようなものが用意されている。

  • ネットワーク設定
     TCP/IPの設定をするツール。どのネットワークカードにどのようなIPアドレスを割り当て,どのようなDNSを設定するのかをGUIで設定できる。
  • インターネット設定ウィザード
     PPPなどを使ってインターネットに接続するための設定をするツール。ISDN,モデム,xDSLの3種類の接続に対応し,ウィザード方式で質問に答えるだけで簡単に設定ができる。
  • Lokkitファイアウォール
     質問に答えるだけでファイアウォールを設定できるウィザード。外部からのアクセスの可否,メールの送受信の有無,telnetの有無,SSHの有無などの質問事項に答えるだけでファイアウォールが設定される。
  • サービス設定
     Linux上で動作するサービス(デーモン)の状況を見たり変更したりする。
  • ハードウェアブラウザ
     接続されているハードウェアの情報を見る。ハードディスクに関しては,グラフで利用状況やパーティションの割り当て状況を参照することもできる。
  • プリンタ設定
    プリンタを設定する。
  • ユーザー管理
    ユーザーやグループを編集する。
  • 日付時刻の設定
     日付や時刻を設定する。NTPを利用して時刻を同期させることも可能だ。

 これらの設定は,「ここからスタート」(Fig.4内の[システム設定]をダブルクリックして表示させればそれぞれのアイコンをクリックし設定できるようになっている(Fig.5)。

Fig.5■システム設定
Fig.5

 これらのツールはすでにRed Hat Linux 7.1より付属していたが,Red Hat Linux 7.2では幾つかの項目が日本語化されている。

 また上記以外の項目として,Red Hat Linux 7.2ではサーバ向けのApache設定ツールやDNSサービスであるBINDの設定ツールなども追加されている。

 利用者にとって特にお手軽なものの1つが,インターネット設定ウィザードやLokkitファイアウォールだろう。これらのツールはすでにRed Hat Linux 7,1から付属されていたもので,常時接続環境でインターネットサーバを構築する際,設定を容易に実現できるものだ(Fig.6Fig.7)。

Fig.6■インターネット設定ウィザード
Fig.6

Fig.7■Lokkitファイアウォール
Fig.7

 ただし,Lookkitファイアウォールは,/etc/sysconfig/ipchainsファイルの設定を書き換え,ipchainsコマンドによるパケットフィルタの有効,無効を切り替えたり,幾つかのデーモンを停止,起動させるといった特定の操作をまとめたものだ。あまり詳細な設定ができるわけではないため,強力だとはいえない。

 サーバ環境でしっかりとしたセキュリティを保ちたいのであれば,従来通り手作業での設定が必須となるだろう。

One Point!設定ファイルを手作業で書き換える場合には,GUIの各種ツールによる設定と反しないように注意したい。特にLookitファイアウォールを使ってファイアウォールの設定をした場合,ipchainsによるパケットフィルタリングが有効になる点を忘れていると,たとえデーモンを動作させていても,(そのデーモンにIPパケットが届かないために)正しく動作しないという不可思議な現象に悩まされるだろう。

Red Hat Networkによる最新版へのアップデート

 Red Hat Linux 7.2の商用パッケージでは,Red Hat Networkを利用したパッチやアップデートファイルのインストールがサポートされている。これは製品パッケージに付属される「Update Agent」プログラムを使いネットワーク越しにRed Hat Networkのサーバーに接続するものだ。日々報告されるセキュリティ上問題があるものや,バグがあるもの(Errata)の修正パッチ,アップデートファイルなどをまとめてダウンロードし,インストールすることができる。

 Red Hat Linuxでは,アプリケーションをインストールするためにRPMファイルを利用するのが一般的なので,とくにRed Hat Networkを使わなくてもアプリケーションのインストールの不便さはないのは事実だ。

 しかし,Red Hat Networkでは修正すべきファイルをいちどにまとめてダウンロードできるため,特にセキュリティホールの問題点を修正するには見落としなどがない。しかもRed Hat Networkでは,自分のコンピュータのインストール状況に合わせてアップデートすべきファイル一覧が表示されるため,不要なものをダウンロードしなくても済むというメリットもある。

 ほかにもRed Hat Networkでは,定期的に最新のアップデート情報をダウンロードし自動的にインストールしたり,常に最新の状況を保つという仕組みとして最新のアップデートモジュールが公開されたならば,メールで通知してくれるサービスも用意されている。

 日ごろホームページをチェックしてセキュリティホール情報などに注意をすることも大事だが,管理の手間をなるべく軽減させるにはこのような仕組みをうまく取り入れたいものだ。

 なお,Red Hat Networkを利用するためには製品版パッケージのプロダクトIDを提示し,Red Hat Softwareのホームページでユーザー登録する必要がある。

 なお,Red Hat Networkは将来に渡って利用できるわけでなく,Deluxe版の場合は登録から90日間,Professional版の場合は180日間となっている。それ以上継続したい場合には,別途利用権(原稿執筆時点では19.95ドル/月〜複数ライセンスもあり)を購入することになる。

6.2からの移行が進むと予想される7.2

 以上,簡単にRed Hat Linux 7.2の特徴を説明してきたわけだが,実際のところRed Hat Linux 7.1が登場した時のようにシステム自体が大きな変貌を遂げたわけではない。

 しかし,細かい部分に手が入りほぼ完成されたカーネル2.4系のディストリビューションであることは間違いない。

 Red Hat Linux 7はカーネル2.2ベースであった経緯もあり,Red Hat Linux 7.1で初めてカーネル2.4が採用された。不具合が幾つかあったのも事実だ。それらを改良したRed Hat Linux 7.2は,地味なバージョンアップではあるものの,安定したディストリビューションとして利用できるものだと筆者は考える。

 Red Hat Linuxは,6.2が全盛の時代がしばらく続き,24時間安定した稼動を要するユーザーの間では,7.0や7.1への移行はあまり進まなかった。しかし,Red Hat Linux 7.2の完成度を見る限り,今後は6.2から7.2へとアップデートされる環境が増えていくことが予想される。

 本連載「Linux How-To」では,いままでRed Hat Linux 6.2をベースとして各種How-Toを紹介してきたわけだが,このような背景から今後はRed Hat Linux 7.2をベースとした連載に切り替えていくつもりだ。

 次回2回目は,Red Hat Linux 7.2でサポートされたext3ファイルシステムについてさらに深く解説していこう。

関連リンク
→ レッドハット
→ Red Hat Linux 7.2製品情報(レッドハット)

[大澤文孝,ITmedia]

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