この特集のトップページへ
Chapter 1:NetBIOSの基礎知識

1.1 NetBIOSの基礎知識

 Windows NT 4.0までのMicrosoftネットワークでは,基本的にNetBIOSが利用されている。Windowsで提供されるほとんどのネットワークサービスはNetBIOSを利用するように実装されており,ファイル共有やプリンタ共有などもその一例である。NetBIOSは,NetBEUIのトランスポート層のプログラミングインタフェースであり,プロトコルの名称ではない。このインタフェースをTCP/IP上に実装したものが,NBT(NetBIOS over TCP/IP)であり,RFC1001とRFC1002で提唱されている。NBTは,NetBEUIのパケット構造をTCP/IPでカプセル化したものである。

 NBTで使用するポート番号は137〜139であり,Windows NT 4.0のservicesファイルでは次のように定義されている。

   nbname            137/udp
   nbdatagram        138/udp
   nbsession         139/tcp

 このうち,名前解決に利用されるのはUDP(User Datagram Protocol)の137番ポートである。138番はブラウジング([ネットワークコンピュータ]アイコンを開いたときに表示されるコンピュータの一覧を取得すること)やnet sendコマンドなどで利用される。139番はNBTのセッションを利用するためのTCPポートで,ファイル共有やプリンタ共有などに利用される。

 NBTの名前解決について理解を深めるために,実際にサービスを利用するためにどのような手順が必要となるのかを説明する。たとえば,デスクトップ上の[ネットワークコンピュータ]アイコンを利用してファイル共有サービスを利用するためには,Table 1-1のような処理が必要となる。

Table 1-1 [ネットワークコンピュータ]からファイル共有サービスを利用するための処理
ユーザーの操作 内部動作
[ネットワークコンピュータ]アイコンをダブルクリックする 利用可能なコンピュータが「ブラウジングサービス」によって一覧表示される
目的のコンピュータをダブルクリックする ダブルクリックされたコンピュータのIPアドレスを調べるため,名前解決が行われる
TCPの139番ポートでセッションが確立され,アクセス権限がチェックされる
必要なフォルダをダブルクリックする フォルダにアクセスする権限があるかどうかチェックされ,権限があればフォルダの内容が表示される

 このように,ファイル共有サービスを提供しているコンピュータと接続するためには,ブラウジングサービスを利用したあと,さらにNBTの名前解決プロセスを経て,はじめてTCPのセッションが開始されるのである。

 ところで,「名前解決」と「ブラウジング」は混同されやすいが,まったく別のサービスであることに注意してほしい。名前解決できないとNetBIOS名を使用してセッションを確立することはできないが,ブラウジングサービスを利用できなくとも(つまり[ネットワークコンピュータ]アイコンを開いたときに何も表示されなくとも)相手のコンピュータと接続することは可能である。たとえば,net useコマンドを使用して直接NetBIOS名を指定して接続する場合は,ブラウジングサービスを利用できなくてもかまわない。ブラウジングサービスは,あくまで「利用可能なコンピュータの一覧」を提供するためのサービスであり,セッションの確立に必要なものではないのである。

 ここでは,NBTの「名前解決」と「ブラウジング」について解説する。

PREV 2/14 NEXT