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Chapter 2:Windows NT 4.0のTCP/IPサービス 〜WINSとDHCP〜

2.3 WINSによるWAN環境の改善

 すでに述べたとおり,WINSを導入することにより,WAN環境の名前解決とブラウジングが改善される。では,ブロードキャストやLMHOSTSファイルを利用した場合と比べて,どのような違いがあるのだろうか。

2.3.1 名前解決
 ブロードキャストやLMHOSTSファイルを利用する場合,異なるネットワークに存在するNetBIOS名を解決するには,LMHOSTSファイルを使用するしかなかった。この方法でも,ネットワークの規模が小さく,コンピュータの台数も少ない場合は,問題が表面化することはない。しかし,大規模なネットワークでは,メンテナンスコストがかかりすぎるという問題が発生するおそれがある。なぜなら,ネットワーク上に存在する多数のサーバーの情報を各コンピュータ上のLMHOSTSファイルで管理する場合,ネットワークやサーバーに変更があるたびに,各コンピュータ上のLMHOSTSファイルを更新しなければならないからである。また,大規模なネットワークではDHCPを使用することも少なくないが,LMHOSTSではこの環境にまったく対応できない。

 これに対して,WINSを利用すると,コンピュータの起動時に自動的にNetBIOS名を登録するようになるため,LMHOSTSファイルを利用する場合のような,管理上の手間や問題点は解決される。また,すべてのコンピュータが1台のWINSサーバーを利用するように設定することもできるし,各サブネットごとにWINSサーバーを導入してレプリケーションさせるように設定することもできる。

 どのようにWINSサーバーを配置するかは,導入するネットワーク環境に応じた考慮が必要になる。WINSを利用するほうが便利だといっても,WINSのために必要となる通信コストが高くなりすぎる場合は,LMHOSTSファイルを使用しなければならないこともある。たとえば,各サブネットごとにWINSサーバーを設置する場合,サブネット間の回線速度が遅いと,WINSサーバー間のレプリケーションにより回線が混雑し,ほかの通信に影響が及ぶこともある。逆に,各サブネットごとにWINSサーバーを配置するのではなく,1台もしくは少数のWINSサーバーで名前を解決しようとすれば,名前を解決するときにWANを経由しなければならないため,名前解決の性能とコストに影響が及ぶことになる。後者の場合,[ネットワークコンピュータ]を開くなどしてブラウジングしただけでもWAN回線にパケットが送出されるので,時間課金やパケット課金のWAN回線を利用している場合には,コストの問題が発生することになるだろう。

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