2.1 Windows NTドメインの問題点
従来,Windowsを基盤とするネットワークがある程度まで大規模化し,ワークグループによる管理が困難になった環境では,Windows NTのドメイン(以下NTドメイン)を使用してユーザーやコンピュータなどのリソースを管理するのが一般的であった。しかし,NTドメインにはさまざまな問題点があり,特にネットワークの規模が大きくなればなるほど,その問題が顕著になっていた。NTドメインで指摘されてきた問題とは,主に次のようなものである。
- リソースを階層化して管理することができない
- 管理の分散が困難である
- 複数ドメインの管理が煩雑である
- PDC(Primary Domain Controller)からBDC(Backup Domain Controller)への一方的な複製しかサポートされていない
- 拡張性がない
2.1.1 リソースを階層化して管理することができない
ネットワークが大規模になるにつれ,ユーザーやコンピュータなどのリソースをわかりやすく管理するために,階層構造は必要不可欠なものとなる。たとえば,何万件にも及ぶリソースが1つの階層に列挙されているようなシステムは,いうまでもなく管理しづらいものとなるだろう。
このことは,ファイルシステムを例に考えるとわかりやすい。もしフォルダ(ディレクトリ)という階層構造がなく,すべてのファイルを1つのレベルで管理しなければならないとしたら,目的のファイルを探し出すだけでも大変な作業となる。
NTドメインでは,リソースを階層構造で管理することができなかった。ローカルグループとグローバルグループを利用すれば,ユーザーを論理的に階層化することは不可能ではないが,制約も多いうえ,管理ツール上で視覚的に階層化されるわけでもなかった。ユーザーやコンピュータはすべて同じ階層に存在しており,ユーザー数が増えれば増えるほど,管理の手間は増大する。結果,「ある程度ユーザーが増えた場合には,別のドメインを作成したほうがよい」ということになってしまう。
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