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head2.gif 5.2.4 リモートアクセスプロトコル
 PCをリモートアクセスサーバーと接続してデータを送受信するときには,いろいろなプロトコルを利用できる。Windows 2000でサポートされているリモートアクセスプロトコルは,SLIPおよびPPPである。これはWindows NT 4.0から変更されていないので,ここでは簡単な説明にとどめる。

●SLIP(Serial Line Internet Protocol)

 SLIPは,非同期のシリアル回線でIPパケットを伝送するデータリンク層のプロトコルである。ネゴシエーションや暗号化などの機能がなく,オーバーヘッドが小さい点が特徴である,比較的古い通信規格(RFC 1055)といえる。Windows 2000では,ルーティングとリモートアクセスサービスをSLIPクライアントとして構成することができる。SLIPしかサポートしていないリモートアクセスサーバーと接続するときに利用される。

●PPP(Point to Point Protocol)

 PPPは,IPなどのプロトコルを中継するために定義されたインターネット標準プロトコルである(RFC1171,RFC1172,RFC1331)。非同期通信の一部分を除いて,High-level Data Link Control(HDLC)のフレーム構造を採用している。Windows NTやWindows 2000でも,HDLCのフレーム構造を使用して,シリアル回線,ISDN回線,X.25回線におけるデータ転送を実現する。

 PPPの通信シーケンスとしては,最初にリンク制御プロトコル(Link Control Protocol:LCP)でリンクが確立されたあと任意の認証フェーズが実行される(ただし,認証は必須ではない)。認証が必要であれば,リンク確立フェーズで認証プロトコル構成オプションを指定する必要がある。そのあと,ネットワーク制御プロトコル(Network Control Protocol:NCP)がNCPパケットを交換し,PPPネットワークプロトコルを構成する。Windows 2000では,Windows NT 4.0と同様に,IPCP(Internet Protocol Control Protocol),IPXCO(Internetwork Packet Protocol Control Protocol),およびNBFCP(NetBEUI Control protocol)の3つが用意されている。ネットワーク層のプロトコルが構成されると,ネットワーク層のプロトコルを用いて,データグラムをリンク上で送受信できるようになる。

Fig.5-21 PPPの設定
fig5_21.gif
マルチリンクPPP
 通常,リモートアクセスにおける接続は,1本の公衆回線やISDN回線を使用して実現される。しかしWindows 2000は,複数の回線(回線の種類や速度は問わない)を束ねて使用するマルチリンク機能をサポートしている。マルチリンク機能とは,2台またはそれ以上のモデム回線やISDN回線の帯域幅を,1本の仮想情報パイプラインとして結合するものである。回線数が増える分だけ回線の使用コストは上昇するものの,理論上では回線数の帯域幅の総和までデータの転送速度が高速化される。たとえば,ISDN BRIの場合,通常は1Bを使用して64Kbpsの通信速度となるが,2Bを束ねて使用することで128Kbpsの通信速度が達成される。また,ISDN PRIでは,23Bまで束ねることもできる。
 Windows 2000のルーティングとリモートアクセスサービスで提供されるマルチリンク機能は,RFC 1717に基づくものである。このマルチリンク機能によって,並列したコネクションを利用して最大限の転送効率を実現する。この機能は,Point-to-Point Tunneling for Client-to-ServerおよびPoint-to-Point Tunneling for Server-to-Serverの両方で利用することができる。さらに,PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)でもL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)でも使用できるので,柔軟性が高い。Windows 2000では,以下に説明するBAPとBACPもサポートされるようになっているので,回線数を動的に制御することが可能になっている。
Fig.5-22 マルチリンクPPPの設定
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Bandwidth Allocation Protocol(BAP)とBandwidth Allocation Control Protocol(BACP)
 複数のISDNチャネルを使用して帯域幅を効率よく割り当てるための制御が,RFC 2125で提唱されているBandwidth Allocation Control Protocol(BACP)である。BAP(Bandwidth Allocation Protocol)は,BACPを利用するときに,呼制御によって帯域幅を動的に割り当てるためのルールを定義するものである。具体的には,マルチリンクから特定のリンクを追加したり削除したりするときに,標準的に利用されている。
 BACPは,ネットワークプロトコルが動作してから実行される。BAPは,BACPによるネゴシエーションが終了したあと,マルチリンクを使用して,ネットワークの状態に応じてリンクの数を増減させる。一定の割合以上の送信要求や受信データがあった場合には,Call RequestメッセージやCallback Requestメッセージを送信し,帯域幅を増やす。逆に,一定時間以上にわたって一定割合以下のデータ量であれば,Link Drop Quey Requestメッセージを送信し,帯域幅を減らす。もし,ほかの用途で帯域が必要になった場合は,LCPのTerminate Requestメッセージを送信し,リンクを削除する。これはマルチリンクのサポートと併せて,リモートアクセスサービスには有用な機能である。
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