Windows 2000ネットワーク解剖
サイトの分割とログオンの挙動

●自分の属するサイトが変化する場合のログオン
 Windows 2000クライアントは,これまでの例と同様にcelica.active.dsl.local.というホスト名である。ただし,ここではIPアドレスを192.168.1.2から192.168.2.2に変更してみる。つまり,もともとDefault-First-Site-Nameサイト(192.168.1.0)に属していたクライアントを,Another-Siteサイト(192.168.2.0)に移動させたという環境を作成したのである。List 3は,この状況下でactive.dsl.local.ドメインに実際にログオンしたときのトレースである。このトレースでも,一部を省略および編集させていただいた。

 Windows 2000クライアントであるcelicaは,当初はDefault-First-Site-Nameに属している。そのため,Default-First-Site-Nameというサイト名を含むSRVレコードを1番目のパケットで検索し,2番目のパケットで応答を得ている。そのあと,Default-First-Site-Nameサイトのドメインコントローラlilyに対してLDAPの問い合わせを実行しているが,その直後の5番目と6番目のパケットではAnother-Siteを含むSRVレコードを検索している。

 ここからは,トレース上には現れないクライアントの内部処理にかかわる問題なので,まったくの推測になってしまうのだが,クライアントは最初のDNS応答(2番目のパケット)で受け取ったSRVレコードに設定されているホストのIPアドレスをもとに,自分の所属するサイトを決定しているようである。この場合,最初に取得したドメインコントローラのIPアドレス(192.168.1.1)が自分のサブネット(192.168.2.0/255.255.255.0)と一致していなかったため,次のLDAP応答に含まれていたAnother-Siteというサイト名を含んだSRVレコードを検索しているものと思われる。つまり,ノートPCなどのモバイル環境でIPアドレスが変更される可能性があっても,サイトを正しく構成しておけば,クライアントはその時点で自分が所属しているIPサブネットに対応するサイトを発見し,そのサイトのドメインコントローラを使用するのである。自分のサイトのドメインコントローラを探索して,それが正常に稼働していることがわかれば,クライアントはそのドメインコントローラを使用する。

 なお,クライアントが属しているサイトの情報は,レジストリに記述されている。この例の場合,SRVレコードの検索に利用されるサイト名は,レジストリのHKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\Netlogon\Parameters\Default-First-Site-Nameに格納されている。

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