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モデルと現実の比較ソフトシステム方法論「SSM」とはなんだ(2)(1/2 ページ)

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 前回(「柔らかな」システム思考のすすめ)は、SSMの開発経緯とSSMプロセスのステージ4までを紹介しました。今回は引き続きステージ5から紹介します。SSMの各ステージに順番はありません。状況をみながら各ステージをランダムに繰り返します。例えば、前回説明したステージ3(あるいはステージ4)を一番初めに実施し、その後ステージ1に戻ることもあります。こうすることによって、より鮮明なリッチピクチャーを描くことができるからです。各ステージは1サイクルを回して終わりではなく、数サイクルを実施して、最終的なアクションプランを作成します。

(4)ステージ5

【モデルと現実の比較】

 ステージ3とステージ4からある程度のアコモデーションが得られたら、ステージ5では作成したモデルと現実を比較して、何をしなければならないかを明確にします。このステージでは改革案や代替案の議論を行うことが重要です。ステージ4のモデルは理想の姿になっていますので、モデルと現実を比較しながら議論します。

1.モデルと現実の両方に存在する活動

  • 現実の活動は問題なく行われているか?
  • 現実の活動はどの程度、目的を達しているのか? あるべき姿をどのくらい満たしているのか?

2.モデルにのみ存在する活動

  • 現実に存在しなくても良い理由があるのか? 代替活動があるのか?
  • モデルの活動は目的を達成するために必要な活動なのか?

3.現実にのみ存在する活動

  • モデルになくとも良い理由は何か?
  • モデルの検討不足ではないか?
  • 範囲外のことではないか?

  さらに、議論を深めるために現実世界の活動モデルを作成し、理想と現実を比較しながら議論することもあります。このようにして比較を行うと、いままで気付かなかった「ハっと!」するような改革のアイデアが出てくることがあります。関係者の中で何かがくすぶっているようなら、もう1回サイクルを回してみましょう。モデルと現実の比較は表にしてまとめます。作成方法は下記の表を参照してください。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

(5)ステージ6

【実行可能で望ましい改革案の定義】

 このステップではいままでの議論をもとにして、改革案を作成します。ステージ5の検討中に改革案は出てきますが、ステージ5ではあくまでも議論が中心です。このステージでは実現可能性を考慮した検討を行います。チェックランド教授は「文化的に」実現可能かを重要視しています。

 「Systematically desirable and culturally feasible」。すなわち、システム的に望ましく、文化的に実行可能であることを目指します。組織文化の問題は非常に大きいものです(例えば、徳川幕府が崩壊した理由の1つに、有識者が提案した改革案を実行できなかった組織文化の壁があるのではないでしょうか)。

 改革案は、関係者全員が受け入れられるような、ある程度の幅を持つものになるでしょう。マインド面、組織文化面、プロセス面と多岐にわたって検討します。

(6)ステージ7

【問題状況を改善するための行動】

 このステージはステージ6で作成した改革案を実行するステージです。大きな側面を取り扱うプロジェクトになるとその改革案によって局面が変わり、新たなSSMのサイクルが必要になることもあります。

(7)SSMのステージの補足

 各ステージの概要は理解していただけたでしょうか。ホンダの「ワイガヤ」精神(Honda用語で役職や年齢、性別を越えて気軽に『ワイワイガヤガヤ』と話し合うという意味の言葉)に代表されるようなナレッジマネジメントの文化を持つ日本人には、受け入れやすい方法論ではないかと思います。

 以下に各ステージの説明を補足します。

1.この問題状況(システム/仕組み)の外か中か

 根底定義を作成していると、人によって対象としている問題状況の外部環境(あるいは内部環境の)認識が異なっていることがあります。時間的な経過とともに変化することもあります。その場合には、「何を環境と考えるか」「どのような条件で環境が変化するか」などを、あらかじめ明確にしておくとよいでしょう(ただし、変化するので柔軟であることは意識しておきましょう)。

2.活動モデルの基準

 概念活動モデルの評価には、3つの判断基準があります。

  • 実行性:基本定義を実行できるか
  • 効率性:無駄な活動はないか
  • 有効性:T(変換プロセス)の実現はO(所有者)の目的に合致しているのか

 作成したモデルがこれらの基準に当てはまるか、を評価してみてください。

3.モデルと現実の比較

 「現実が概念活動モデル通りなら何が起こったか」というシナリオを書いてみましょう。そのシナリオをもとに検討を加えると、さらに得るものがあるはずです。

4.全ステージを通して

 SSMの全ステージでいえることは、モデルの作成に意味があるのではなく、モデルを通して議論を行うことに意義があるということです。議論を通して、関係者の間で相互理解を深め、アコモデーションを促し、許容できる実行可能なアクションプランを導き出します。これがSSMの重要なポイントです。

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