ITILはまずSWOT分析から始めよう:体験的ITIL攻略法(1)(3/3 ページ)
ITサービスマネジメントに関する体系的手法をなぜ、どのように適用すればよいのか。本連載ではこれについて、筆者の経験に基づき納得できる説明を提供することを目的とする。今回は連載の第1回として、SWOT分析を通じ、ITサービスマネジメントに取り組むための動機付け、意識付けを行う。
3. SWOTカード合わせと整理
S、W、O、Tごとにカードを集め、カード番号を付け、同種の項目でグルーピングする。グループ分けした項目群の内容を概説し、抽象化してタイトルを付与する。次のような列を持った表を作成すると整理しやすい。
- カードグループのタイトル(グループのタイトルとして、カード群がいいたいことを抽象化し、一言に要約する)
- 概要(同じような意味のカードをグルーピングし、そのグループがいいたいことの概要を簡潔にまとめて記載する)
- カード番号(必要に応じて参照するため、グループに属するカードの番号を記載する)
4. 相互関係の作成
カードグループのタイトルを記入したカードを作成し、カードグループごとの相互関係を考える。相互関係には、主従関係、反対関係、因果関係などがある。相互関係のない、独立したカードも大切にする。
自社の提供する「ITサービス」について、SWOT分析を行い、相互関係を図式化した例を図2に示す。参考にしてほしい。
5. 成功要因の抽出
カードグループの相互関係を、強みと機会、弱みと機会、強みと脅威、弱みと脅威の4つの区分で網羅的に調べることによって、何を重点的に取り組むかを検討し、体系的なITサービスマネジメントを実現するための成功要因を抽出する。
- 強みと機会の組み合わせ:機会をうまく自社の強みで取り込むためには?
- 弱みと機会の組み合わせ:機会を自社の弱みで取りこぼさないためには?
- 強みと脅威の組み合わせ:脅威でも自社の強みで機会に変えるためには?
- 弱みと脅威の組み合わせ:脅威と弱みの鉢合わせで最悪の事態を招かないためには?
図2で示した相互関係を基に抽出した成功要因の例が表1である。
いかがだろうか。SWOT分析の手法を利用して、効果的・効率的なITサービスマネジメントを実現するために取り組むべき項目を、関係者全員の思いとして共有する。ITILを活用することが自社にとってどんなメリットがあるかよく分からない、あるいは、金融商品取引法への対応のための取り組みをトップダウンで指示されているが、現場に今ひとつ危機感が伝わらない、といった悩みを抱えている場合の、関係者に対する動機付け、意識付けの手段としてトライしてみてもらいたい。
なお、ブレーンストーミングを起点としてSWOT分析を効果的に進めるために、経験豊富なファシリテータに進行を手伝ってもらうことも一考に値する。
著者紹介
▼著者名 鈴木 広司(すずき ひろし)
PwCコンサルティング、IBMビジネスコンサルティングサービスを経て、現在エクセディア・コンサルティング シニアコンサルタントとして、ERP導入プロジェクトにおけるベーシス・インフラ関連のコンサルティングから、ITマネジメントコンサルティングまで幅広く手掛ける。
ITガバナンス研究分科会(itSMF Japan)座長、ITガバナンス協会(ISACA)会員、ITコーディネータ、技術士(情報工学部門)、システム監査技術者。電子メールアドレス:hsuzuki@xiidea.com
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