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ビジネスモデルをあるべき姿へ実践! UMLビジネスモデリング(5)(2/2 ページ)

これまでは、現状のAs isなビジネスモデルの抽出方法について説明してきた。今回はいよいよAs isモデルを、ビジネスゴールを達成するためにTo beモデルへと洗練させていく手順を説明する。

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To beビジネス分析モデルの作成

 前ページではビジネスユースケースとビジネスワークフローをAs isモデルからTo beモデルへと洗練させてきましたが、今度はこれらをさらにビジネス分析モデルに落としていきます。

 ビジネス分析モデルは本来、ビジネスモデルから有効なシステム化の範囲を切り出すために効果を発揮します。しかし、ビジネスの静的な構造と動的な振る舞いを定義することで、ビジネスの問題点を浮き彫りにすることができるため、ビジネスの改善にも有効に使うことができます。

ビジネス分析モデル: 洋菓子を作成する

 まずは、先ほどビジネスワークフローを洗練させた「洋菓子を作成する」のビジネス分析モデルを見てみましょう。以下が、「洋菓子を作成する」のTo beなビジネス分析シーケンス図になります。

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図6 ビジネス分析シーケンス図: 洋菓子を作成する

 このビジネス分析シーケンス図は、営業日の開始時に製造計画に従って、レシピを基に材料を用意して洋菓子を製造していくことを示しています。

 では、シーケンスを順を追って見てみましょう。もし製造計画を満たしていない(洋菓子の数が足りない)場合は、パティシエがレシピを確認し、次に材料を用意します。洋菓子を作るために材料を使った結果、在庫が減少することもここでは表現されています。さらに、製造が完了した洋菓子を登録することにより、製造計画に対して実際の製造実績の管理も行います。ここでは「製造」というビジネスオブジェクトが製造実績を管理します。このように製造実績を管理しておけば、製造計画の精度を上げることができます。

 さらに、このビジネス分析シーケンス図を基にビジネスオブジェクト間の関係を定義したものが、以下のビジネス分析クラス図です。

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図7 ビジネス分析クラス図: 洋菓子を作成する

 これで、「洋菓子を作成する」のビジネス分析モデルはひとまず完成です。

ビジネス分析モデル: 計画を立てる

 次に、図3で示した「計画を立てる」のビジネス分析モデルについて同様の検討を行ってみましょう。まずは、ビジネス分析シーケンス図です。

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図8 ビジネス分析シーケンス図: 計画を立てる(クリック >> 拡大)

 シーケンスを順を追って見てみましょう。営業日の最後にその日の販売や製造に関する予実をチェックします。予実差がある場合は、その原因を分析する必要があります。しっかり分析しておかなければ、翌営業日の計画は信用できないものになってしまいます。予実差の原因は、計画が甘かったからか、不慮の事故があったのか、予定していた材料が期日までに届かなかったのか、きちんと切り分ける必要があります。また、それ以外にも起こり得る問題を分析して、その要因を取り除いたり、あるいは問題の発生が避けられない場合は、それをあらかじめ考慮に入れた計画を立てる必要があります。

 さらに、このビジネス分析シーケンス図を基に作成したビジネス分析クラス図は、以下のようになります。

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図9 ビジネス分析クラス図: 計画を立てる

To beなビジネスドメインモデルの完成

 最後に、いままで行ってきたTo beモデルへの洗練作業の過程で洗い出されたさまざまなビジネスエンティティを統合して、ビジネスドメインモデルを作成します。以下に、連載第3回で作成したAs isモデルのビジネスドメインモデルと、今回新たに作成したTo beモデルのビジネスドメインモデルを示します。

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図10 初期のAs isビジネスドメインモデル
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図11 最終的なTo beビジネスドメインモデル(クリック >> 拡大)

 このように、As isモデルにビジネスゴールを設定し、To beモデルへ洗練させていった結果、ビジネスドメインモデルも随分異なったものが完成しました。

 今回はAs isモデルからTo beモデルへの洗練について説明しました。重要なのは、まず初めにビジネスゴールを適用することで、単にAs isモデルをTo beモデルに洗練するのではなく、ビジョンや戦略に即したモデルへと洗練できるということです。

 次回は今回の話を基に、「有効なシステムの識別」について紹介する予定です。ビジネス分析モデルがビジョンや戦略に即しているということは、そのモデルから識別される有効なシステムも、ビジョンや戦略に即しているということになります。

 具体的にどのような方法で有効なシステムを識別すべきかについて、順を追って説明していく予定です。

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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