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ITリーダーは、従業員のビジネス環境を真剣に考えよガートナーと考える「明日のITイノベーターへ」(5)(2/3 ページ)

スマートデバイスの導入、Windows XPのサポート切れなど、企業ITのクライアント環境は1つの節目を迎えている。特に東日本大震災以降は、事業継続性の担保という観点からデスクトップ仮想化も注目を集めた。今、企業のIT担当者には自社のクライアントコンピューティングの将来像を、しっかりと見極める力が求められている。

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デスクトップ仮想化の価値はサーバ仮想化とは異なる

三木 東日本大震災以降、災害対策や節電のためにデスクトップ仮想化を導入することをさまざまなベンダが提唱してきました。しかし、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが、この分で行くと、来年には各企業とも災害対策や節電のことはすっかり忘れてしまって、それに伴いデスクトップ仮想化に対する興味も薄れてしまうのではないかと感じています。


「どこでも働けるようになることは、災害対策だけではなく、ビジネス全体にとって大きなメリットがある。“守りの視点”に固執していては、デスクトップ仮想化の本当の価値は見えてこない」――針生恵理

針生氏 確かに、「単なる災害対策としての端的なテクノロジの導入」という意味では、デスクトップ仮想化に対する興味は一過性のもので終わってしまうかもしれません。

 しかし本当に重要なのは、仮想化やリモートアクセスの技術によって、「社員が場所を問わず、どこでも働けるようになること」は、災害対策だけではなく、ビジネス全体にとって大きなメリットがあるという点です。

 災害対策をきっかけにデスクトップ仮想化に興味を持った方も、こうした視点を持って自社のデスクトップ戦略を考えていくべきです。そのためにはまず、経営トップが「ビジネスのパフォーマンスを上げる」というビジョンをしっかり持ち、その上でそれを実現するための手段としてデスクトップ仮想化のようなソリューションを検討していかなくてはいけません。


「のど元過ぎれば熱さを忘れる、ではないが、このままでは災害対策や節電のこと、そしてデスクトップ仮想化に対する興味も薄れてしまうのではないか」――三木泉

三木 同じ仮想化の技術でも、サーバ仮想化に関しては、コスト削減効果という名目があったからこそ普及が進んだのだと思います。しかし一方のデスクトップ仮想化は、その導入メリットはある程度理解されつつも、実際に導入の検討を始めてみると予想以上にコストが掛かることが分かり、最終的に頓挫するケースが多いように思います。

針生氏 サーバ仮想化は、サーバの運用管理を担う情報システム部門や、IT予算を管理する企業側にとってメリットが大きい技術です。一方のデスクトップ仮想化は、情報システム部門だけでなく、本来エンドユーザーにとっての価値を追求したものですから、サーバ仮想化と同じ尺度では価値を判断できないはずです。つまり、先ほど申し上げたような「守りの視点」に固執していては、デスクトップ仮想化の本当の価値は見えてこないのです。デスクトップ環境というものは、実際に現場でビジネスを回す社員が使うものですから、ビジネスの結果に直結するものなのです。このことに、もっと多くの企業は気付くべきだと思います。

 さらに長期的な視点で見ると、今後はクライアントの世界でもクラウドコンピューティングの応用が進み、デスクトップ環境にアクセスする端末の種類も、より多様化していくことが予想されます。

 従って、デスクトップ仮想化もこうしたクライアント環境の将来に向けた1ステップとしてとらえるべきです。そうしないと、デスクトップ仮想化にはコストがかかるから難しいということで終わってしまい、それ以上発展しなくなってしまいます。

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