IoTやインダストリー4.0において目指される「つながる工場(スマートファクトリー)」。工場内の生産設備群だけでなく、工場と工場もつながることで実現するサプライチェーンも含めた生産の自律化および最適化が必要だ。こうした高度な"つながる"ための最新のシステムやテクノロジー、そしてそれにともなう製造・生産現場の変革を追う。
日本の製造業の基本ともなりつつある「トヨタ生産方式」。しかし、その源流を知り尽くし数々の改善を進めてきた鈴村氏は「今伝えられているトヨタ生産方式の多くは本質を誤解したものだ」と指摘する。どういう違いがあるのか。またトヨタ生産方式の本質とは何か。鈴村氏に伺う。
鈴村 尚久 氏
1976年3月京都大学法学部卒業。1976年4月トヨタ自動車入社。経理部、第2購買部、産業車両部、生産調査部、販売店業務部、国内企画部などを歴任。トヨタ生産方式の活用などに取り組む。1999年8月にエフ・ピー・エム研究所を設立。トヨタ生産方式のコンサルタントとして、はくばく、ピップフジモト、パナソニック、マルヨシセンター、トーメーコーポレーション、山田食品産業、リィツメディカルなどへのトヨタ生産方式の活用に取り組む。父親は大野耐一氏とともにトヨタ生産方式を確立させた鈴村喜久男氏。著書に「トヨタ生産方式の逆襲」(文春新書)がある。
トヨタ生産方式というと「かんばん方式」やストップウォッチ法などによる時間分析など、多くの実践的な手法が思い浮かぶかもしれない。しかし、本当のトヨタ生産方式とはこうした手法のみを示すのだろうか。鈴村氏は現在は「トヨタ生産方式という言葉は使っていない」とはいうが、源流には「トヨタ生産方式が目指した本質」があるという。その本質に従った場合、多くの日本の製造業ではトヨタ生産方式は非常に狭い意味合いで使われていると指摘する。例えば「在庫は悪だ」というトヨタ生産方式では常識だといわれる考え方も、「必ずしもそうとは限らない」と鈴村氏は述べている。この考えのズレはどこから来るのか、またトヨタ生産方式が目指した本質とは一体何か?
親子2代にわたってトヨタ生産方式に関わってきた鈴村氏が読み解く。
“日本版インダストリー4.0”ともいわれるIVI(インダストリアルバリューチェーンイニシアチブ)。19のWGでの活動が発表され、その取り組みが具体的な製造業の道筋として示され始めた。IVIの活動の根幹には欧米とは違う“緩やかな標準”があるといわれているが、その真意は何か。具体的にどういう方法で何に取り組んでいるのか。IVIの初代理事長である西岡氏に聞いた。
西岡 靖之 氏
1996年東京大学大学院博士課程修了(工学)。1999年法政大学工学部経営工学科専任講師。2004年マサチューセッツ工科大学客員研究員。2007年から現職。専門は、知識工学、経営工学、生産工学。ISO/IECの国際標準化の委員、経済産業省スマートマニュファクチャリングタスクフォース委員長など。2015年6月に発起人として「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」を立ち上げ、理事長を務めている。
欧米に主導権を握られたかに見えたインダストリー4.0やスマートファクトリーへの動きだが、ここのところ日系製造業の巻き返しが目立つ。その象徴的な存在がIVIである。IVIが目指す日本ならではの“緩やかな標準”は、世界の製造業の新たな潮流を巻き起こすかもしれない。
第4次産業革命の動きが押し寄せる中、日系製造業はどういうことを考えなければならないのか。日本電機工業会でスマートマニュファクチャリング特別委員会の委員長を務め、SCF2015の実行委員長、ロボット革命イニシアティブ協議会のWG主査など、第4次産業革命関連のさまざまな要職につく水上氏に、ポイントを聞いた。
水上 潔 氏
1979年(株)日立製作所入社。
大みか事業所に配属後、工場などの生産システム事業に従事。
現在はインフラ分野の国際標準化戦略に従事。
ロボット革命イニシアティブ協議会・IoTによる製造ビジネス変革WG 主査。
日本電機工業会(JEMA)・スマートマニュファクチャリング特別委員会 主査。
システムコントロールフェア2015実行委員長。
「第4次産業革命のインパクトは分かるがどの程度影響があるのか」と判断に迷いを見せる製造業は多い。個々の企業、個々の業界だけで捉えても第4次産業革命で起こるインパクトの真価は把握できない。日本版の第4次産業革命を実現させようという機運とともに巻き起こった多くの団体で要職につく水上氏は「ビジネスの仕組みそのものが変わる」とそのビジョンを示す。多くの企業にピンチとチャンスをもたらす第4次産業革命の本質を示す。
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