東芝・NEC、HD DVDのロードマップを説明――DVDメディアとの兼用生産プロセスは稼動段階に(2/2 ページ)
東芝、NECなど3社はHD DVDの普及を加速させるため、国内コンテンツ事業者向けの説明会を開催。Blu-rayと異なる規格になった“発想の違い”や、既存のDVDとの互換性が高く、移行コストを抑えられる兼用生産ラインがすでに稼動しつつある状況など、HD DVDの強みについて強調した。
DVDメディア製造を手がけるメモリーテックの大塚正人氏(技術開発部長)は「DVDソフトウェア市場は今後も継続成長が予測され、ピークに対応するためには世界のディスク生産能力を2倍にする必要がある」とDVDソフトウェア産業の成長を語る。
ただ、HD環境の整備が進む中、パッケージソフトだけが現行の画質のままでは市場に取り残されてしまう可能性が高い。そのため、コンテンツ制作側からは「高画質」はもちろん、「強力なコピープロテクション」「低コスト」「既存DVDとの互換性」を備えたメディアを求める声が上がっているという。
既存DVDメディアとの互換性は、メディア生産を行うメーカーとしても重要な要件。向こう数年に渡って既存DVDメディアの需要が伸びることが予想されるからだ。とはいえ、その後は次世代規格が伸び、いずれは取って代わることも予想される以上、製造過程に互換性を持たせることができれば、スムーズな対応が可能になる。
HD DVDメディアの物理構造は既存DVDと同じだが、記録密度が高くなるためより厳しい製造管理が必要。また、基礎技術は共通とはいえ、精度面から既存DVD並みの歩留まりを実現することは困難だった。だが、同社では2年の歳月をかけ、HD DVDのみならず、既存DVDも生産可能な兼用生産プロセスの開発に成功したという。
新開発したプロセスでは、2層HD DVDでも1枚あたり3.5秒(歩留まり90%以上)という既存DVDと同レベルの生産性を獲得。つくばと甲府に製造した新ラインでは、ラインあたり月間で70万枚の製造が可能で、すでに既存DVDの量産とHD DVDの試作に利用されているという。
「DVDとの互換性をディスク・ドライブの双方で持っていなくてはいけない」と述べる大塚氏。この兼用ラインについては東芝との共同開発が行われており、両社では8月末からこのノウハウを公開する予定としている。
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