「球団を運営してブランド認知を高め、顧客獲得費用を削減したい」――10月18日、プロ野球球団・福岡ダイエーホークス買収意向を表明したソフトバンクの孫正義社長は都内で会見し、ねらいを語った。
「わが業界のライブドアや楽天が新球団設立に向けがんばっているが、それをうらやんで買収を名乗り出たのではない」と孫社長は強調する。孫社長は、同社がグリーンスタジアム神戸の命名権を獲得した2年前から、できれば球団を持ちたいと考えていたという。
ソフトバンクは、ライブドアや楽天と違い、球団単体での黒字化にはこだわらない方針だ。
「現在、Yahoo!BBや日本テレコムの顧客獲得コストに、合計で年間1000億円以上をかけている。球団経営によってブランド認知を高め、顧客獲得効率が1割でもアップすれば、それだけで百数十億円浮く。球団が年間数十億程度の赤字を出しても、全体で見れば十分採算は取れる」。
ライブドアが計画しているように、選手の年俸を削って黒字を捻出するつもりもないという。「単体で採算を取ることにこだわらず、国民に愛されるスタープレーヤーが集まる魅力的なチームにしたい」。
赤字前提とはいえ、新しい収益モデルの導入も考えている。Yahoo!オークションでチケットや関連グッズを販売するほか、試合模様をインターネット中継する、選手とファンが交流できるWebサイトを作る――といった新サービスを提案する。
「情報通信業界では今後、いかに魅力的なコンテンツを提供できるかが勝負の分かれ目になるだろう」。孫社長は、高速なADSLならDVD並み、光ファイバーならハイビジョン並みの画質で試合中継を楽しめると話し、ブロードバンド事業と野球コンテンツとの相乗効果を期待する。
楽天やライブドアが、日本プロ野球組織(NPB)の審査でアダルトサイトの扱いについて聞かれたことに関しては「ソフトバンク本体はアダルト関連事業を行っていないが、子会社のヤフーにはありとあらゆるコンテンツがある。アダルトコンテンツをどう扱っていくかは今後、ヤフーの社長と話し合って決めたい」とした。
「いくら高くても2兆円はしないでしょう?」
同社は今日、買収の名乗りを上げただけで、ダイエーやNPBなど関係者との交渉は今から始めるという。交渉前に会見を開いた理由を孫社長は「水面下で根回しせず、正面から正々堂々と交渉したいから」と説明。「ダイエーが球団を手放すなら、熱心な買い手がいるということを知って欲しかった。ダイエーが継続保有を決めた場合は深追いしないし、産業再生機構が選定する再建スポンサー企業の方針も尊重する」と話した。
ちなみに買収金額は「他にも名乗りを上げる企業があるだろうし、自分が決められるものではない」としながらも、「現預金は常に数千億レベルあり、上場済み株式の含み益は2兆円以上。球団がいくら高くても、2兆円はしないでしょう」と、手持ち資金で十分にまかなえることを強調した。
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2月から近鉄に買収提案していたというライブドア。会見を開いて買収への“本気度”をアピールし、売名行為ではという憶測を否定した。
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