D4パネル最高峰プロジェクター、エプソン「EMP-TW500」の実力:レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(6/6 ページ)
エプソンD4パネルのリファレンス機ともいえるホームプロジェクター「EMP-TW500」。その完成度やレベルの高い画質は、20万円クラス機とは一線を画す。透過型液晶プロジェクター中トップとの呼び声も高いTW500の実力を探ってみた。
液晶ならではの階調表現の豊かさを重視する人に
TW500は明るさやコントラストといった面で突出した数字は見られないが、実際に映し出す絵のレベルは非常に高い。実力を発揮するためには完全遮光された部屋が必要なため、同時にいくつものプロジェクターがデモされている量販店のデモルームなどでは本来の力が見えにくいが、条件が揃った時のTW500はTW200Hと同じD4パネルである事を忘れるほど良い絵が出る。
実売価格からすると、今後はVPL-HS50と比較される事が多くなるだろう。オートアイリスによる、白ピークと黒沈みの絶対的な差はHS50に軍配が上がる。また遮光が不完全な状態では、HS50の方がやはり有利だろう。しかし、アイリスをした状態固定ならば本機の方が全般的な質は高い。オートアイリスのクセが気になるならば、TW500の方が良いと感じるはずだ。
また両者には絵作りの方向性にも明確な違いがある。HS50は液晶WEGAなどに近い雰囲気の絵が出るが、TW500はやや抑えめの落ち着いた雰囲気がある。より映画指向の強い人ならばTW500、万能性を求めるならばHS50といったところか。
価格的にはXGAパネルを採用したDLPよりも多少高くなるが、DLPは色再現が的確でコントラスト感が高く、解像感、先鋭感が高いといったプラスの面もあれば、階調表現や暗部のざわついたノイズ(疑似階調処理)、そしてカラーブレーキング(動きの激しい部分でRGBが分離して見える虹状のノイズ)といったマイナス面もある。
豊かな階調を元にした絶妙の絵作りは本機の大きな美点。この点をどこまで評価するかが、実際に購入する上でのポイントとなろう。ただし1点、気になるところもある。それは発売後、1年近く経過しているため、新機種が出るのでは?という懸念だろう。
しかしエプソンによるとTW500の後継機種は、今のところ発売を予定していないという。おそらく来年春にプロジェクターベンダーに対して量産出荷されるD5の720Pパネルを搭載し、TW500の後継機種も開発されると予想されるが、D5パネル出荷直後に後継機種の発売となるほど、品質重視の上位モデルは簡単なものではない。早くて来年夏、順当にいけば冬商戦向けの商材となりそうだ。
加えて本機の価格が大きく下がっている事も、買い得感を高めている。この記事の掲載日(11月12日)現在のITmediaショッピング登録ショップの最安値は30万4000円である。後継新機種が登場するとすれば、おそらく元の価格(40万円超)となるはず。現行のTW500はなかなかお買い得である。
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