リアプロTVは日本に根付くのか?:Theater Style〜麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(5/5 ページ)
今年後半に国内で注目を集めた大画面テレビが「リアプロジェクションTV(リアプロTV)」。家屋の狭い日本で“第3の大画面”は日本のユーザーに受け入れられるのだろうか。“業界のご意見番”麻倉怜士氏に日本市場でのリアプロTVの将来性などを聞いた。
麻倉氏 : いまは「チープな薄型テレビ代替」ということでアメリカで売れているのですが、それでは余りに情けない。これからは薄型テレビとは差別化した画質――というより「画調」ですね――が絶対になければなりません。スクリーンを介して観るリアプロTVの映像は、ブラウン管とも違うし、液晶/プラズマといったデバイス直視型とも違う。つまり従来とはまったく違うテレビなのです。私はそれを「第三の画質」といっています。
それを強く感じたのは、CEATECでSXRDリアプロTVを観た時です。ここではスクリーンを通過することで、ひとつ“味わい”のようなものが付加されていました。それがSXRDのリアプロジェクターの素晴らしいシネマ画質のことです。それを観ていたらスクリーンは邪魔なものでなく、「表現の道具」という位置づけになりそうと思いました。
例えて言うと、ブラウン管の直視型は「深みのある直接的自己発光画質ディスプレイ」であるのに対し、薄型テレビは「情報をしっかりと出すデジタル・トーン・ディスプレイ」です。これからリアプロは「スクリーンが表現する濃彩画質ディスプレイ」をめざすべきでしょう。
薄型テレビが追いつけない画質での独自性こそが、リアプロTVが追求しなければいけないところだと思います。つまり、画質では薄型テレビより良いという製品をつくることです。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
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