ハイビジョンの本質:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)
デジタル放送や薄型テレビの普及、Blu-rayやHD DVDの台頭、民生用HDVカメラなど、ハイビジョンに向けたトレンドが明確になってきた。2004年最後の「デジタル閻魔帳」は“ハイビジョンの本質論”を麻倉怜士氏が熱く語る。
2005年はハイビジョン元年
――ハイビジョン環境は放送が先行してますが、2005年以降のハイビジョンのトレンドを教えて下さい。
麻倉氏 : 2005年は「パッケージ」と「クリエイティブ」の環境が充実してくるでしょう。ハイビジョンを録画できるBlu-rayは、現在3社がラインアップしていますが、本格的な普及が始まる“Blu-rayラウンチ”は2005年の後半以降になると思います。録画ができてもパッケージメディア(BD-ROM)が再生できないとなると魅力が半減するわけで、BD-ROMがかかって大容量HDDもしっかり内蔵するといった“Blu-rayレコーダの完成形”は、来年後半以降になるでしょう。ちょうどその頃にはHD DVDも登場するわけで、そこでBlu-rayとHD DVDのデビュー合戦が繰り広げられるのです。
「Blu-ray vs HD DVD」論はまた別の機会にやりたいですが、簡単にいうと、DVDレコーダの延長がBlu-rayで、DVDプレーヤーの延長がHD DVDです。つまり両方とも必要。最終的には、どちらもかかるレコーダがあるべき姿だと考えています。
――今年はハイビジョン撮影できるビデオカメラも登場しましたね。
麻倉氏 : ハイビジョン普及でもう1つ重要なのが“ハイビジョンを作る”ということです。今年10月にソニーが民生用初の1080i対応HDVカメラ「HDR-FX1」を発表しましたが、カムコーダによるハイビジョン撮影が来年ブレイクするでしょう。従来のDVカメラの世界はもはや成熟市場ですが、これまでのDVカメラは運動会や赤ちゃんが生まれた時といったイベント時に活躍するもので、日常は静止画をデジカメで撮影するというカタチでした。だがこれからは、ビクターのHDD MPEG-2カメラ「Everio」のように動画デジカメが動画文化になっていくでしょう。DVカメラが担ってきたクオリティの動画は新しいデジカメで撮影し、DVカメラはハイビジョンを撮影する道具になっていくのです。
メディアは放送とパッケージとクリエイティブが揃って初めて一人前となる。ハイビジョンではすでに放送は始まっているものの、パッケージとクリエイティブはこれから。そういった意味で、観る/録る/撮影するの3つのメディアトライアングルが揃う2005年は“ハイビジョン元年”と呼べそうですね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
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