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HD DVDの事業ビジョンと不確定要素――東芝・藤井常務に聞く連載:次世代DVDへの飛躍(2/2 ページ)

昨年の一連の次世代光ディスク連載に続き、今年も「2005 International CES」やハリウッド取材で得た情報を順次紹介していこう。1回目は、CESでHD DVDの事業計画を発表した東芝の執行役上席常務でデジタルメディアネットワーク社長の藤井美英氏に、HD DVDの事業ビジョンを話してもらった。

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 では、年末の製品化が可能だと仮定した場合、来年の市場規模をどの程度と予測しているのだろうか。

──御社の山田尚志首席技監からは、来年100万台、再来年に300万台という予測を伺いましたが?

 「私の予測では、PC搭載のHD DVDドライブとプレーヤー/レコーダーのHD DVDドライブを合わせ、200万台から300万台はいくだろうと読んでいます。大型のハイビジョンテレビが予想を超えて市場に普及していることもあり、ハイビジョンでプレミアムコンテンツを楽しみたいニーズは膨らんできているからです。

 DVDの時には画質の向上がほとんどありませんでしたが、今回は誰が見ても違いが明らかです。しかも映像光ディスクに対する認知、DVDという商品の認知がずっと進んでいます。DVD関連家電機器の市場は年間4000万台ですから、そのうちの5%をHD DVDで取りたい。これで200万台、くわえてHD DVD搭載PCが100万台と見積もっています」。

 過去を振り返ると、VHSもDVDプレーヤーも、北米における市場規模が年200万台になると、その後は急激に普及が進んでいる。上記はワールドワイドの数字だが、藤井氏の読みが正しければ、2007年には200万台を大きく超える市場規模に成長することになる。

 ただし、DVDプレーヤーが北米で年200万台の市場規模へと成長するまでに足かけ3年、実質2年余りの時間がかかった。HD DVDはその記録を短縮することになるのか? そのためには、2006年のうちにプレーヤー価格が普及の目安とされる500ドルを切らなければならないだろう。

──来年中にプレーヤーの単価はどこまで下げられるのでしょう?

 「われわれも年200万台という市場規模をひとつのマジックナンバーと捉えている。そのために2006年第4四半期にはプレーヤー単価を499ドルまで下げる計画です。そこからさらに市場を加速させるため、299ドルという次の目標も立てています。これを達成できるのは2007年から2008年ぐらいになると考えています」。

 しかし、青紫レーザーダイオードの価格は、まだ高止まりしたままになっている。高出力品ばかりしかないことも原因だろうが、小出力品でも劇的には安くならないと聞いている。

――急激な低コスト化を行う上で、レーザーダイオードのコストは問題とはならないのか?

 「レーザーダイオードに関しては全く心配していません。再生専用の20ミリワット出力品ならば、歩留まりも悪くはありません。これはわれわれだけでなく、Blu-ray Discを推進しているソニーや松下電器とも話しているが、どのベンダーも心配はしていないと思います」。

 HD DVD-ROMは、BD-ROMに比べてメディアに要求する物理的精度が緩く作られているようだが、そのぶん、2層記録時のトラッキング精度が高い必要があるとBD陣営の企業が話していたこともある。

――トラッキング精度が厳しいというのは本当ですか? また、この点はプレーヤーのコストに影響しないのでしょうか?

 「そうした話が出ていることは知っていますが、事実とは異なります。私は光ディスクの技術サイドは担当していますが、現場からトラッキング精度が厳しいといった話を聞いたことはありません。噂を聞いて質問したこともありますが、そのような問題は全くありませんでした」。

 しかしBD陣営は、光ディスクとしての発展性や、カムコーダー、ゲーム機など多目的用途での応用範囲の広さなどを持ち出している。それに比べ、HD DVDは極論すれば映画会社のための映画コンテンツ販売メディアという印象が強い。この点について藤井氏はどのように事業全体を見渡しているのか? なぜ、HD DVDにコダワリ続けるのか? 後編では、これらに加え、PC上での再生サポート手法についても話を聞いていく。

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