次世代DVD“規格統一”の方向性を探る(2/2 ページ)
新聞報道で注目が集まった「次世代DVD規格の統一交渉」。実際には断続的に進んできた動きが表面化しただけのようだが、では、どのような方向で規格統一が検討されているのだろうか。
もっとも東芝側にも0.6ミリカバー層の方が、構造的にパッケージソフト向きだとの自負がある。これまでのインタビューでもわかるとおり、東芝は一貫して光ディスクへの録画ニーズの縮小と映像パッケージビジネスへのフォーカスを訴えてきた。
また現実のビジネスでも、NECやメモリテックなどとHD DVDの商品化に向けて大きく歩みを進めており、後戻りしにくい状況もある。0.6ミリと0.1ミリ、両構造への互換を選択する事が現実的ではないとするのはBD側もHD DVD側も同じだ。BD陣営が“現行BDよりも少ない容量には絶対に向かわない”とするならば、東芝側が折れて「0.6ミリをあきらめる」ほかには道が無いように見える。
各社の公式コメントだけでなく、BDに関連する様々な関係者の話を総合してみても、統一に向けての努力は継続しているものの、現時点で具体的な規格統一の可能性を見い出せるところまでは話は進んでいないようだ。少なくとも4月中の合意はないと見られるが、5月以降ならばわずかながら可能性はあるかもしれない。
統一規格、別の切り口
統一規格成立を別の切り口で見ると、家電ベンダーvsコンテンツベンダーという図式でのパワーバランスに変化が起きる可能性もある。家電ベンダー側で規格統一を行えれば、コンテンツ供給側との交渉でライバル規格と“条件面での無駄な争い”をする必要がないからだ。
たとえば先日取り上げたAACSでの映像出力ポリシーに関しても、「アナログ信号の出力がより重要な市場なので、それを可能にするべきだ」といった意見も通しやすくなる。
次世代光ディスク規格統一への取材の過程でAACSに関する話もいくつか聞けたが、AACSの映像出力ポリシーが発表されていない理由のひとつは、家電ベンダーがアナログ出力禁止に対して強く抵抗しているからだという。HDCP対応デジタルインターフェイスの普及が進む米国とは異なり、アナログハイビジョン時代からHDTV受像器の販売が行われている日本では、アナログ信号でHD映像パッケージソフトが再生できなければ営業面で計り知れないマイナスをマイナスを負うことになる。
この点は映画スタジオ側も認識しているが、かといってアナログ信号出力のコピー保護を行う有効な手段が見つかっていないため、簡単には合意できないようだ。現時点ではアナログ信号出力可能フラグを設け、タイトルごと、あるいは地域ごとに可否をコンテンツベンダー自身が判断する方法が検討されているという。
北米でのHD映像パッケージソフトはデジタル出力専用となる可能性が高そうだが、日本では何らかの回避策が提供される可能性は低くないという。ある大手電機メーカーの関係者は「アナログハイビジョン受像機がサポートされないようならば、事業部は日本で製品を発売しないと言い出すかもしれない。そうならないように、強い態度で交渉には臨んでいる」と話す。
次世代光ディスク規格統一の行方は、意外なところでも消費者利益に絡んできそうだ。
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