次世代DVD、遠ざかりつつある“規格統一への道”(3/3 ページ)
次世代光ディスクの規格統一に向け、東芝・ソニー・松下による話し合いが先週末に行われた。会合は物別れに終わったが、そこで3社はどんな議論を繰り広げ、そしてどんな思惑が渦巻いたのだろうか? 規格統一への道が見送られた背景を探ってみた。
今後、統一の可能性があるとするならば、本社トップレベルの“ホットラインによる裁定”以外にない。しかし、事態がすでにパートナー企業にまで影響を及ぼしていることもあり、かなり難しい状況になっていることは間違いない。近々には18日にBlu-ray Disc Association(BDA)の幹事会があるため、ここでソニー・松下から他参加企業に対してどのような説明が行われるのかも注目されるところだ。
製品化までのプロセスを見ると、分裂後は従来通りのロードマップで、HD DVDとBDそれぞれに開発が進められることになるが、その場合、東芝はかなり苦しいスケジュールをこなさなければならなくなる。
以前にもお伝えしたことがあるが、0.6ミリ構造での大容量実現にはかなりの高度な技術力が必要となる。DVDに比べ、短波長化による高密度寄与よりも多くの容量増加分があるからだ。「メディアは作りやすいが、プレーヤーの開発が難しい」というのがHD DVDなのだ。今回の交渉の中で徐々に明らかになってきたことだが、特にHD DVD-Rおよび-RWの開発には、まだ完成の見通しが立っていないという。中でもランドグルーブ方式で2層相変化記録を行うHD DVD-RWの2層は、層間のクロストークが問題で解決の糸口は見つかっていない。
またHD DVD-ROMに関しても、1層15Gバイトは問題なく読めるようだが、2層30Gバイトは十分な読み取り品質が実現できておらず、PRMLによる安定的な再生品質を実現するまでに至っていない。スケジュール通り「年末のプレーヤー発売」を実現するには、読み出し専用のHD DVD-ROMの2層読み出しを早期に安定させる事が不可欠となる。
いずれの問題も「発売までには解決できる」としているが、スケジュール面などで東芝の置かれた状況が厳しいことは間違いない。
もちろん、BD側も前述のROM複製の歩留まり向上が求められているが、BD-ROMの再生をサポートする装置の発売は早くとも来年の春。同時発売のソフトがあるとしても、当初から多くの出荷量が求められるとも考えにくく、時間的な余裕はHD DVDよりも多い。
このような事情を鑑みれば、東芝側は「0.1ミリでの統一規格策定」の方がメリットは多い。しかし、残された時間はほとんどゼロに近い。果たしてトップ裁定があるのか否か。統一の可能性はほぼなくなってきた次世代光ディスク規格だが、あと1回だけチャンスは残っている。
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