オーディオと音楽の本質:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
近年のオーディオ製品は高機能/高付加価値商品が主流。評論も機能/スペックにフォーカスしたものが多い。だが、本当にそれでいいのか? 音楽理論も専門分野というデジタルメディア評論家・麻倉怜士氏が“オーディオと音楽の本質”を語る。
――具体的にはどんなセットになっているのですか?
麻倉氏: 例えば、ジャズをジャズらしく聴かせてくれるスピーカーというのがあるんです。私が選んだのは、JBLの4312D。ハッキリとしたコントラスト感と音の立ち上がりの素早さ、そしてやや土臭いが重量感ある押し出しの強さ。この表現力というのは、ジャズにピッタリなのです。このシステムは好評で、人気も高いそうです。
またドイツ・ELACのスピーカーを組み合わせた提案は、室内楽を好むユーザーに向けたヴァイオリンセット。音の滑らかさ/きめ細かさ/中高域の反応の素早さなどといったELACの特徴を備え、自然さや空気感が非常によく出るスピーカーで、モーツァルトのヴァイオリンソナタなどでは演奏者の息づかいまで感じられます。
現在は新宿西口店と有楽町店のみにコーナーがありますが、将来的には全国展開していくようです。
――メーカーに望むことは?
麻倉氏: 今回、さまざまな切り口のセットを選んでいて感じたのは、CDプレーヤーやアンプで、“音楽”を聴くためのツールに徹し、なおかつコストパフォーマンスの高い商品が非常に少なくなったということです。最近はマルチチャンネルで高機能な製品が多いですが、2chでコンパクトで単機能、でも非常に音がいいという製品もニーズは十分あると思います。機能よりも音にこだわったオンキヨーのINTEC 275シリーズがいまもの凄く売れているのは、いい音を気軽に聞きたいというニーズが盛り上がっている証拠だと思います。ぜひ素敵でシンプルな、そして音楽性のあるステレオセットをつくってくださいね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに"映像の鬼"。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという"3足のワラジ"生活の中、精力的に活動している。
著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)――ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)――プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)――ソニーのネットワーク戦略
「DVD――12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)――DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)――記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)――互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)――プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)――新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)――シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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