この夏“買い”の大画面テレビ:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」――バイヤーズガイド編(4/4 ページ)
今年のボーナス商戦は、30インチ以上の大画面テレビが“買い”だ。今回の「デジタル閻魔帳」は、大画面テレビを知り尽くした麻倉怜士氏に、大画面テレビの動向と“この夏イチオシ”の大画面テレビを聞いた。
――最後はリアプロTVですね。
麻倉氏: リアプロTVでは、セイコーエプソンの“LIVINGSTATION”をお薦めしたいです。画質云々というよりも、エプソンがえらいのは、リアプロTVには逆風が吹いていた日本市場で、しっかりとしたロードマップをもとに不退転の決意で、先駆者として取り組んでいる点です。新しい映像文化をリアプロTVで創っていこうとしているのです。
今年登場した新製品“Sシリーズ”は、従来モデルよりも明らかによくなっています。今年のSシリーズが日本市場での真の意味での第1号機といえるでしょう。スクリーンを通すことによるボケ感や視野角の狭さ、コントラストの弱さなどリアプロTV特有の問題はありますが、新製品は前モデルに比べても着実に改善されています。スクリーンを通して見るというテレビ製品を受け入れられるか否かで、今後の普及のポイントとなるでしょう。
番外ですが、スクリーンがあってもすごいと思ったのが、ソニーの70V型SXRDリアプロTV「QUALIA 006」(最新価格はこちらをクリック)です。むしろ逆にスクリーンを通すことでギラギラ感が抑えられて、自然でなおかつ艶っぽい映像を表現できるようになってます。このようにリアプロTVは発展途上なのでまだまだ可能性が残されています。たとえば、同じ光学エンジンで自由に画面サイズを変更できるというのも投影型のリアプロTVの特徴。これを生かして、自分の家にピッタリの大画面サイズを自由にオーダーできるような“BTOでのテレビ”という可能性もリアプロTVにはあります。その意味でも、PCでBTOを展開しているエプソンには大いに期待したいですね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)――ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)――プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)――ソニーのネットワーク戦略
「DVD――12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)――DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)――記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)――互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)――プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)――新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)――シャープの鋭い商品開発のドキュメント
関連記事
- オーディオと音楽の本質
近年のオーディオ製品は高機能/高付加価値商品が主流。評論も機能/スペックにフォーカスしたものが多い。だが、本当にそれでいいのか? 音楽理論も専門分野というデジタルメディア評論家・麻倉怜士氏が“オーディオと音楽の本質”を語る。 - プラズマテレビは生き残れるか
ソニーなど大手メーカーの事業撤退、液晶の躍進とリアプロTVの台頭など、プラズマテレビを取り巻く環境が厳しい。果たして生き残れるのだろうか。マルチメディア評論家の麻倉怜士氏がプラズマテレビの過去、現在、そして未来を語った。 - ソニーは復活するか
不振にあえぐソニーが行ったトップ人事刷新が話題を呼んでいる。果たしてソニーは復活するのだろうか? “30年来のソニーウォッチャー”である麻倉怜士氏が、復活にかけるソニーの今後の方向性を語る。 - エアチェックの本質
DVD/HDDレコーダーの普及、デジタル放送の登場などでエアチェックのスタイルも変化してきた。一方で、コピーワンスが気軽なエアチェック環境を妨げている。麻倉怜士氏が“エアチェックの本質”を熱く語る。 - CES取材で見えてきたデジタルAVの最新トレンド
International CESでは、今年もさまざまな新製品/新技術/トレンドが紹介された。2005年最初の「デジタル閻魔帳」は、“世界最大級の家電の祭典”に毎年出向いている麻倉怜士氏に、CES取材で見えてきたデジタルAVの最新トレンドを語ってもらう。 - ハイビジョンの本質
デジタル放送や薄型テレビの普及、Blu-rayやHD DVDの台頭、民生用HDVカメラなど、ハイビジョンに向けたトレンドが明確になってきた。2004年最後の「デジタル閻魔帳」は“ハイビジョンの本質論”を麻倉怜士氏が熱く語る。 - リアプロTVは日本に根付くのか?
今年後半に国内で注目を集めた大画面テレビが「リアプロジェクションTV(リアプロTV)」。家屋の狭い日本で“第3の大画面”は日本のユーザーに受け入れられるのだろうか。“業界のご意見番”麻倉怜士氏に日本市場でのリアプロTVの将来性などを聞いた。 - 麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」 〜秋のプロジェクター編〜
“業界のご意見番”こと麻倉怜士氏の月イチ連載がスタート。麻倉氏のAV製品チェックノート「閻魔帳」から、最新のAV製品情報やインプレッションなどを聞き出す。第1回のテーマは「ホームシアター派に贈る“秋のプロジェクター”」。 - “麻倉先生おすすめオーディオ”、ビックカメラ新宿店で
- ブルーレイは大好きだがコピーワンスは大嫌い
- プラズマ/液晶は“これからのテレビ”に相応しい?
- 「麻倉怜士」って、なんかすごいこと言うぞ
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.