パイオニアと東大が求めたDVDレコーダーの新しい“顔”:インタビュー(3/3 ページ)
パイオニアの「DVR-530H/555H」には、東京大学先端科学技術研究センターと同社「ユーザビリティ・ラボ」が共同開発した新しいGUIが採用されている。ユーザーニーズと認知心理学を取り込み、一から作ったという意欲作だ。
「これは東大側から最初に言われていたことでもありますが、先にキレイな画面を作ってしまうと、作る人間がそれに引きずられて頭が固くなってしまうんです。もちろん、後から変更するのも大変という理由もあります」
「社内の他部署からは“早くしてくれ”と突かれながらスケッチを書き、それをハードウェア担当に見せて実現性をチェックしつつ、デザイナーには画面のつながりを頭に叩き込んでもらう。そんな状態でした。ようやく完成したシナリオと画面デザインをベースに仕様を決定し、開発担当者の手に渡したのですが、実際の画面を作り始めたのは春頃ですから、かなりタイトなスケジュールだったと思います」
――製品発表も春だったような気がしますが……。しかし、実際に使ってみないと分からない部分もあるのでは?
「ええ。今回はユーザーの視点によるチェックをもっとも重視しましたから、開発と並行してシミュレーターや試作機を使ってモニターチェックを行っています。社内からDVDレコーダーに慣れていない人……とくにターゲットユーザーである若い女性に協力してもらい、6人ずつ、2〜3回のテストを繰り返しました」
「モニターチェックのときには一応マニュアルも置いてあるのですが、ほとんどの場合は、マニュアルをめくることなく操作できたようです。操作にかかる時間も短く、結果は“まずまず”といったところでしょう。ただ、皆が同じところで悩むといった部分もあって、そうした箇所は可能な限り修正を加えています」
――中には修正できなかった部分もあるわけですね。一体、どの部分でしょう?
「次の製品で変更された部分があったら、きっとそこです」(笑)
「実際、スケジュール的には無理な要求でしたが、開発担当者に頑張ってもらいました。われわれとしては、これまで年月をかけて(開発担当と)良い関係を作ってきたことが良い方向に働いたと考えています」
――発売から3カ月が経過しましたが、新UIの評判はいかがですか?
「通常、販売店やユーザーから寄せられるのは厳しい御意見が多くて、逆に“良くなった”とわざわざ意見をもらえることはほとんどありません。その点でいえば、DVR-555H/530Hは意見が随分と減りましたから、受け入れられている証拠だと思います。また、Webや雑誌のレビュー記事でも評価されているので、方向性は正しかったと考えています」
――UI共同研究プロジェクトの期間延長も発表されましたが、今後登場する製品には新しい展開があるのでしょうか? ……たとえば2番組同時録画やデジタル放送録画などの新しいトレンドを取り込んだとして、新UIはどんな使い勝手を提案してくれるのでしょうか
「将来の製品展開について、まだお話することはできません。ただ1つ言えるのは、現在のGUIは“簡単には破綻しないルールで作られている”という点です。DVDレコーダーの市場動向を考慮して、考え得る新機能の中から“プライオリティの高いもの”を選択し、仕様作成時に入れてあります。新しい製品が登場しても、ユーザーはとくに意識することなく使いこなせるはずですよ」
新しいGUIを搭載したパイオニアのDVDレコーダーは、2004年モデルと比較して明らかに使いやすくなった。ただ機能面を考えると、EPGやHDDは既に“当たり前”のものだ。他社製品も相応にGUIを練り上げているため、明確な差別化ポイントにはなりにくい。むしろ、“ようやくGUIが追いついた”という消極的な評価になることもあるだろう。
パイオニアの製品サイクルは、夏商戦前に普及モデル、冬のボーナス期に合わせて上位モデルをリリースするのが通例だ。その順番でいえば、秋には「DVR-720H/920H」の後継となる高機能モデルが発表されるはず。使い勝手を落とすことなく、新しいフィーチャーを取り込むことができたとき、新しいGUIは改めて注目されるはずだ。
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