ハイビジョンビデオカメラの本質:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)
停滞するビデオカメラ市場に“映像革命”を巻き起こしたソニー「HDR-HC1」。今回の「デジタル閻魔帳」は、ビデオカメラウォッチャーの麻倉氏が、HDR-HC1の魅力とハイビジョンビデオカメラが切り拓く新市場の可能性を語る。
――ハイビジョン記録形式はHDR-HC1の採用するHDVフォーマットでいいのでしょうか?
麻倉氏: HDVフォーマットの最大の問題点は、解像度が1440×1080ピクセルというところ。縦方向はまだしも、横方向の1440ピクセルは、今後フルHD(1920×1080ピクセル)が映像の主流になっていくことを考えると、やはり相当許せない点です。当然アーカイブ需要も狙っているのだとしたら、現在撮影している子どもが大人になり結婚式の頃には、すべてのテレビがフルHDになっているはずなのです。そのときに横方向の解像度が1440ピクセルしかないなんて話にならない。ぜひフルHDに対応して、最大の解像度でアーカイブしていかなければならないと思います。
――最後に、HDR-HC1に期待するのものは?
麻倉氏: いろいろ苦言も呈しましたが、そうはいっても一般ユーザーがなんのストレスもなく、三脚ナシで、自然光でハイビジョン映像を撮れるというのは、長年の夢が本当に実現したと言ってもいいぐらい、画期的なことです。
特に意図性がなくても、画質で十分押し切れる表現力がハイビジョンにはあります。BSフジに「東京散歩道」という普段見慣れた街並みをハイビジョンで映し出す番組がありますが、見慣れた世界でもハイビジョンで見ると、異様なリアリティが発生してもの凄く新鮮なのです。そして再生喚起力があるのが、ハイビジョンの底力ですよね。このあたりは、「ハイビジョンの本質」で詳しく語っていますが、自分が撮った映像がこんなに力があるのかというのは、放送がハイビジョンになる以上の驚きだと思います。
――ハイビジョンビデオカメラが創り出す市場に、大いに期待したいですね。
麻倉氏: はい。ソニーには縦型、超小型などバリエーションを期待したい。キヤノンはまずはXL2の後継のハイエンド・ハイビジョンビデオカメラを作って欲しい。となると問題は松下電器ですね。HDVメンバーではない松下電器には、BDビデオカメラを担当してもらいましょう。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)――ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)――プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)――ソニーのネットワーク戦略
「DVD――12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)――DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)――記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)――互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)――プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)――新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)――シャープの鋭い商品開発のドキュメント
シャープのBDレコーダーの上に並ぶのは「ANAの制服フィギュア」。「全10種類ということで試しに10個買ったら重なったのが2種類しかなく、一気に8種類が集まった。これ、よくできているんですよ」と麻倉氏。こういったお茶目な一面があるトコロも同氏の人気の秘密
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