いよいよ本格化、デジタル放送対応レコーダー選択のツボ:バイヤーズガイド(3/3 ページ)
2005年冬、各社のDVDレコーダーはデジタル放送対応が進み、一気に選択肢が増えた。しかし、カタログスペックだけでは違いが分かりにくいのも事実。今回は各社のデジタル放送対応レコーダーを取りあげ、その違いを解説していきたい。
「デジタル先行組」の日立、シャープは、上位モデルでデジタル放送の2番組同時録画を可能するなど、デジタル放送へのシフトという点では1歩リードしている。反面、日立の製品はアナログ放送がEPG非対応と、現状での地上波デジタル放送の視聴可能エリアを考慮すると“割り切り過ぎ”の感がある。もちろん1年後、2年後を見据えれば見方も変わってくるのだろうし、予算さえ許せばデジタル放送の2番組同時録画機能が魅力であることは間違いない。
新モデルの特徴ではないが、現状のデジタル放送対応DVDレコーダーの課題を1つクリアしているのが日立の製品だ。「TSX」という録画モードでは「TS」録画とMPEG-2録画の最高画質である「XP」モード録画を同時に行い、視聴時は「TS」録画を、DVDへのダビングには「XP」モード録画分を利用する仕組みを採用している。HDクオリティの視聴とDVDへの高速ダビングを唯一実現している点で注目に値する。既に地上波デジタル放送のエリアで、コピーワンスというデジタル放送の制限を気にしない人であれば、魅力的な製品になるはずだ。
はっきりとした目的意識が必要な製品選び
いろいろとケチを付けてきたが、基本的に各社の2005年冬モデルは“粒揃い”だ。とくに10万円以下で購入できる製品――従来ならミドルレンジの価格帯に位置する製品は、カタログスペックが横並びに近い状況で、実際に購入する人も多いだろう。
反面、予約録画機能については製品ごとの違いも多い。たとえば4強の製品では松下以外は自動録画機能を備えているが、とにかく見そうなジャンルの番組はどんどん録画する、という目的で使えるのは実質的にソニー製品のみだ。東芝製品は自動録画では必ずキーワード設定が必要だし、パイオニア製品はどちかといえば強力な番組検索機能という位置づけ。東芝の自動録画機能はどちらかといえば不定期だったり、放送時間の変動が大きな番組の確実な録画のためといえるし、パイオニア製品は番組表では見落とすような番組も見落とさないため、という印象だ。一口に自動録画機能といってもメーカーによってアプローチが異なり、一括りにはできない。
また、デジタル放送を最終的にどのような形で残すのか? という点にも注意したい。いずれの製品もSDクオリティへダウンコンバートしてDVDメディアへダビングということになるが、MPEG-2の最高画質(XPモード)で約2時間のダビングが可能なDVD-R DLをサポートしているのはパイオニア製品のみだ。アナログ放送であればSPモードとXPモードで大きな画質差はないと思う人も多いと思うが、デジタル放送を録画した場合には、はっきりとした画質差を感じることも多い。
もう1つのダビング方法が、D-VHSへのムーブという手段だ。重要なのは実際にD-VHSへダビング(ムーブ)することではなく、D-VHSへのムーブが可能であれば、来年には登場が期待される次世代DVDドライブを採用したDVDレコーダーへムーブし、TS録画のままBlu-rayやHD-DVDといった次世代DVDメディアに保存できる可能性が残されること。
D-VHSへのムーブ機能を備えているのは、4強では東芝の「RD-X6」「RD-ZD91」のみで、後は日立の上位モデルとシャープ製品となる。最終的にHDクオリティのままで(次世代)DVDメディアに残したいと思うのであれば、可能性を期待してD-VHSへのムーブ機能に対応する製品を選択したほうがいいだろう。
ようやく各社の本格展開が始まったデジタル放送対応DVDレコーダーだが、厳しい目で見れば“過渡期の製品”だ。デジタル放送非対応の従来製品で見られた各社の傾向がそのまま反映されており、カタログスペックでは見えにくい、得意/不得意がはっきりと存在する。
自分がデジタル放送対応DVDレコーダーを購入し、どう使いたいのか。それをしっかりと決めておかないと後悔してしまう可能性も高い。アナログ放送の基本的な予約録画に関して言えば、スポーツ番組対応延長や放送枠拡大などへの対応は地上波アナログ放送のEPGをサポートしない日立製品以外はそつなく対応しており、既に機能差は小さくなっている。つまりデジタル放送をどう楽しみたいのか、そこをきちんと決めてから製品選択をするのが重要だろう。
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