H.264の画質向上がもたらすもの――PHL:次世代DVDへの挑戦(3/3 ページ)
例年通り、CES開催直後のタイミングでハリウッドの映像ビジネスの現場を取材した。今回のテーマは、コンテンツ作りに各社がどのように取り組んでいるのか。まずはCESで高画質なデモを披露したパナソニックハリウッド研究所(PHL)を取りあげる。
成果は、実は2年前――初めてPHLを取材した時にはすでに出ていた。2003年末にはテストエンコードの結果が出ていたからだ。このため「MPEG-2を推すのは心苦しかった。しかし改良型H.264はまだ技術提案も行っておらず、既存の知られたエンコーダーで比較するとMPEG-2が高画質だったため、あのような取材内容になったんです」と、現在はPHL所長の末次圭介氏は振り返る。
その後、2004年3月にミュンヘンで行われたMPEG委員会にピクセルフォーマットの拡張を含め、“Fidelity Range Extention”として提案され、7月のレドモンド会議において全会一致で採用が決定した。その結果追加されたのが、現在のH.264 High Profileである。映画会社からの評価も「MPEG-2/24MbpsよりもH.264HPの12Mbpsの方が高画質」と非常に良いものだった。
実は筆者は正式にH.264HPが承認される前、2004年5月にPHLでH.264HPの評価を行ったことがある。PHLの所長だった小塚雅之氏は「当時描いていた大容量を活かしたシナリオが崩れ、なんとスゴイものを作ってくれたものだと頭を抱えた。しかし同時に、BDのシナリオとは無関係に、優れた技術として標準化をしなければならない」と話していた。
柏木氏は「当時、松下電器内部ではH.264HPの評価を受けて“なにも難しい青紫レーザーで作る必要はないんじゃないか”という議論がありました。結局、今後の10年を支える技術として、可能な限り良いものを提供するには青紫レーザーは必要という結論になりましたが、それぐらいのインパクトがある進化だったんです」と振り返る。
結果的に30GバイトとBDよりも最大容量が少ないHD DVDに塩を送る結果となったH.264HPだが、コーデックの改良はすべてのユーザーが受けられるベネフィットだ。
PHLは現在、Xeonデュアルプロセッサのブレードサーバ9台をクラスタ接続したエンコードサーバを開発中。近くハードウェアアクセラレータを実装し、この春にはリアルタイムエンコード可能なレベルまで開発を進め、ハリウッドのオーサリングハウス各社にエンコーダーとしての導入をオファーする。
計画通りに進めば、夏から秋にかけて、PHL製エンコーダで制作された高画質ソフトも発売されることだろう。
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