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インタビュー

“ミニマル”が描き出した東芝の新しい顔――「REGZA」インタビュー(2/2 ページ)

東芝「REGZA」は、「メタブレイン・プロ」の全面採用など画質を全面に押し出し、テレビの原点回帰をうたった新ブランドだ。そして、シリーズ共通のデザインにも同じ思想が流れている。“face”に代わる東芝の“顔”は、どのように生まれたのか。

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 一般的に、家電デザインの現場では、販売サイドの要望が色濃く反映されることがある。たとえば、量販店などの売り場で自社製品を目立たせるため“目立つデザインにしてほしい”、あるいは店頭で画面が映えるよう“輝度を高めに設定してほしい”といった具合だ。また目玉機能を重視するあまり、デザインが犠牲になるケースもある。坪井氏によると、REGZA「H1000」シリーズの前身となった“ちょっとタイムface”こと「LH100」シリーズもその1つだという。

 160GバイトのHDDを内蔵し、ハイビジョン録画やユニークな「ちょっとタイム」機能を実現した「LH100」シリーズだが、HDDユニットを収めた台座(卓上スタンド)は厚みと奥行きが大きく、決してバランスが良いとはいえなかった。しかも、台座のHDDと本体をi.Link接続している都合で動かすことができず、「液晶画面のスイーベルや壁掛けが不可能だった」(坪井氏)。第三者が見ても、外観より機能やメンテナンス性を優先して設計されたことは明らかで、デザイナーの坪井氏が「不本意だった」というのも頷ける。

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LH100シリーズ。画面は固定されていて、スイーベルはできなかった

 一方、後継機種である“REGZA”「H1000」シリーズが大きくスタイルを変えることができたのは、HDDをスタンドから背面に移動したためだ。HDDユニットは放熱を含む設計を見直して大幅な小型化。HDDインタフェースも従来のi.Link接続からシリアルATAへ変更するなど、技術部門のフォローによる部分も大きい。

 スタンド部は、他モデルと同様にすっきりとした板状になり、もちろん液晶画面のスイーベルも可能になった。オプションの壁掛け金具「FPT-TA9A」を使えば、壁掛けにも対応できる。「壁掛け用ブラケットを使用すると、全体が少し前に出た状態になるので、放熱の問題はありません。背面入出力端子の抜き差しは難しくなりますが、側面入力端子(従来の前面端子類は側面にある)へのアクセスやHDDの交換は可能です」(同氏)。

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「32H1000」の台座部

 外観に関していえば、ある意味個性的だった「LH100」に対して「H1000」は地味かもしれない。また、スタンダードモデル「C1000」と共通のデザインは、HDD内蔵という“売り”を目立たなくしてしまう可能性もあるだろう。

 しかし、ミニマルデザインの観点からいえば、それは“狙い通り”。「実際のリビングルームを考えたとき、部屋の趣とテレビが1対1の関係(ちょうど合うデザイン)というのはなかなか生まれません。であれば、存在を誇示せず、比較的コーディネートしやすいのがミニマルなデザイン。われわれは、ニュートラルな素材(=テレビ)を提供するというスタンスです」。

 「もう1つのポイントは、シンプルなものほど“長く使える”ということ。ユニークな筐体は、パッと見は良いものの、すぐに飽きてしまうでしょう。テレビの平均寿命は10年といわれていますが、長く使っていても飽きない。これはテレビを選択する上では、重要なポイントになります」(坪井氏)

 目先の販売戦略より実際の使用環境を考え、また映像や音を引き立たせることに注力した“REGZA”のデザイン。東芝のいう「テレビの原点回帰」が見えてきたような気がした。

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