フォーマット戦争は、そう長く続かない――20世紀FOX:次世代DVDへの挑戦(3/3 ページ)
BDビデオ規格には、「BD+」という追加的な著作権保護対策機能が含まれている。しかし128ビット鍵による暗号化が行われるBDビデオソフトで、追加的なコンテンツ保護対策が必要なのか。20世紀フォックスの上席副社長、ダニー・ケイ氏に話を聞いた。
では、20世紀フォックスが発売するBDソフトは、どういった仕様の製品になるのか。まずは映像および音声コーデックに対する考え方を訊いた。
「映像コーデックは現在、MPEG-2を主に利用してオーサリングを進め、なるべく早いタイミングでH.264HPへと切り替えていきたいと考えています。しかし最終の判断は下していません。高品質の映像パッケージを販売するにあたって、初期発売タイトルの画質は重要です。よりよい画質になるよう判断を下します。(VC-1は? の声に対して)VC-1の評価も行ってはいますが、現時点では候補には入っていません。一方、コーデックではありませんが、一部のタイトルにはBD-Jを用いてインタラクティブ機能を盛り込みます」
「一方、音声はドルビーデジタルに加えて、ロスレスのコーデックを入れます。リニアPCMは画質面への影響も考えられるため、入れるならばロスレス圧縮になるでしょう」
MPEG-2にロスレスオーディオの組み合わせでは、1層25Gバイトではやや容量面で厳しいタイトルもある。2層ディスクに関して見通しは立っているのか?
「初期出荷の作品は、すべて1層ディスクになります。しかし、将来はもちろん50Gバイトになっていくでしょう。少なくとも年内には2層50Gバイトのパッケージを発売します」
「私はBDのビジネスが始まってから最初の数年は、業界が新しい次世代のパッケージコンテンツのあるべき姿を探る、学習期間になると考えています。Javaのプログラミングで、どのような要素を盛り込んでいくべきなのか。よりわかりやすく、使いやすいユーザーインタフェースを構築するためにどうするべきか。そして、より高画質化や高音質化を狙うにはどうするべきなのか、などです。2009年ぐらいまでは、タイトルが発売されるたびに、少しづついろいろなことが改善されていくと思います」
初期のDVDと現在のDVDは、画質も音質も大幅に異なっている。さらに言及すれば、映画撮影後の編集からデジタル化され、映画制作そのもののプロセスも大きく変化してきた。BDに限らずHD DVDも含め、業界全体が学んでいく期間が数年必要というのは、的を射た指摘かもしれない。
しかし近年のブロードバンドネットワークの普及や帯域幅の拡大を見ていると、数年後の学習期間を終えた頃には衛星ダウンロードやケーブルテレビ、光ファイバーなどでのHD映像配信が、もっともっと一般的になっているかもしれない。
「それはずっと先のことですよ。現状、まだやっと可能性が見えてきた段階で、業界全体の枠組みもビジネスモデルも確立されていません。将来、ブロードバンド配信が行われる時期が訪れるでしょうが、パッケージソフトもまた、それまでの間に改善が進むはずです。消費者がお金を支払ってディスクを購入する。その金額に見合うだけの価値をわれわれは提供しなければなりません。そのために改善を加えていくことで、数年もたてば初期の頃には想像もしていなかったようなパッケージ製品が当たり前になっているはずです」
つまり、ケイ氏はダウンロード型も将来は出てくるが、それでもパッケージでの映像販売がずっと続いていくと考えているのだろうか?
「次の10年はもちろん、その次の10年でも使われていきますよ。これは、何年経過しても変わらないでしょう」
次世代パッケージではインタラクティビティが重要に
話を20世紀フォックスのBDパッケージに戻そう。
初期20タイトルを発表済みの20世紀フォックスは、噂では月10本程度のペースでBDソフトを北米市場に投入していくといわれている。その価格、今後の予定はどうなっているのか。
「“これぐらいとこれぐらいの間”といったことを含めて全く言えない。他社はDVDの価格+25%程度という話が出ている? その程度の価格設定も可能だが、まだ決めることはできません。今後の発売予定も明言はしていません。ハードウェアの普及が進んでくれば、かなり思い切って多くのタイトルを投入できるでしょう」
ケイ氏は、さまざまな家庭向け映像パッケージソフトの立ち上げに関わってきた。DVDの時に比べると、BDの立ち上げはいろいろな意味で難しい問題がある。DVDで十分だという声、それに2つに割れた規格など、マイナス要因が多いが、そのBDソフト市場を立ち上げるにために必要な要素とは何だと考えているのだろう。
「確かにDVDの時ほど楽ではない。DVDの時はシングルフォーマットだったが、今回は2つの規格に分かれてしまいました。しかも、前回はテープからディスクへ、ユーザビリティが劇的に変化したのに対して、今回は同じような使い勝手で画質だけが向上します」
「私はこのインタラクティビティが、とても大切だと考えています。DVDでは不便だったり、体験の質が低い、自由度が低いと思われている部分を改善することで、明らかにDVDとは違うディスクなのだと消費者に理解してもらうためです。機能的な違いは、店頭でも友人宅でも、ちょっと使ってみれば誰にでも簡単に理解できます」
「BDを用いたパッケージ製品は、おそらく誰もが想像しているよりも大きな、ユーザー体験レベルの変化があります。さまざまな面倒や理不尽な仕様が排除された上で、圧倒的な映像の美しさを組み合わせることで、次世代らしい説得力のあるパッケージコンテンツを制作できます」
「人気テレビ番組シリーズなどは、実に複雑なストーリー構成だったりします。これらのパッケージ化を行う上で、人間関係や過去の因縁などがすぐに参照できたり、シーンごとの解説がポップアップするなどの機能が加われば、もっと楽しいのにと思ったことはありませんか? これは一例ですが、映画はもちろんですが、それ以外のコンテンツにも目を向けると、いろいろな可能性が見えてくるはずです」
関連記事
- 国内は録画機から――ソニーに聞くBlu-ray製品戦略
標準化から製品化による実ビジネスの展開へとフェーズを移したBlu-ray Disc。ソニーは、CESでBDプレーヤーを参考出展したが、日本ではどのように展開するのだろうか。BD製品の見通しについて、ソニー シニアバイスプレジデントの西谷清氏に話を聞いた。 - 東芝、HD DVDプレーヤーを3月より販売――価格は499ドルから
東芝は1月4日(現地時間)、International CESのプレスカンファレンスにてHD DVDプレーヤーを北米地域で3月より販売開始すると発表した。「HD-XA1」「HD-A1」の2モデルで、価格はHD-XA1が799.99ドル、HD-A1が499.99ドル。 - 豊富なプレーヤーで攻勢をかけるBlu-ray Disc陣営
CESの会場では、多くのBlu-ray Disc プレーヤーが展示されている。再生専用機の発売ではライバルに先行される可能性の高いBD陣営だが、豊富な機種とパッケージソフトを用意することで、人気の定着を図りたい考えだ。 - HDパッケージソフトが自分のハイビジョンTVで楽しめない?――AACSの行方
HDパッケージソフトの著作権保護に関する枠組み「AACS」のドラフト仕様が公開された。映画ソフトなどのハイビジョン視聴に向け前進したかにみえるが、課題はまだまだ多い。AACS 0.9で決まったこと、決まっていないことをまとめてみた。 - 日本ではHDアナログ出力制限が無効に――AACSのコンテンツ運用規定が決定
次世代DVDが採用する著作権保護の枠組み「AACS」のコンテンツ運用規定が決まった。注目の「HD映像のアナログ出力制限」は、実質的にアナログ出力制限は行われない方向に。一方、BDにおけるリージョンコードの廃止は見送られた。なお、HD DVDでのリージョンコード採用・不採用はまだ決まっていない。 - Blu-ray Discに新しいコピー防止技術
Blu-ray Discの新しいコピー対策システムは、現行DVDで使われている保護機能の何倍も強力なAACSや、コンテンツに一意の識別子を埋め込むROM Markなどの技術で構成されている。 - 年内には立場をハッキリさせる――20世紀フォックス
次世代DVDを巡る規格争いが続くなか、“中立の立場”を貫いている20世紀フォックス。BDAに加入して注目されたが、その目的もあくまで「自らの立場と考えを伝えるため」だ。同社が次世代DVDに求めるものは何か? また市場立ち上げ前に確認することとは?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.