ユニデンが語る“最後発のテレビ作り”:インタビュー(2/2 ページ)
「何もないところから、テレビ市場に打って出る。何か特徴を出さなければならなかった」――ユニデン技術本部上席執行役員の板橋隆夫氏は振り返る。ブランド力はゼロに近い状況の中、同社が選んだのはシンプルで低価格な庶民派テレビだった。
先日発表された新製品群も同じコンセプトを継承した。デジタルチューナーは搭載せず、シンプルな低価格機という位置づけ。ただ、今回は37V型/42V型液晶テレビでHDMI端子を2系統に増やしたほか、アナログ地上波の画質改善のためゴーストキャンセラーを新たに搭載している。
そのほか付加機能も、使用頻度とコストを勘案して選択した。たとえばワイドテレビの多くに搭載されている2画面表示は、利用するシーンが限られるのに直接コストに跳ね返るため省略。「××エンジン」のような高画質化回路も、とりあえず省略。一方、テレビ画面を静止画表示する「画面メモ」機能は、主婦層が料理番組のレシピを見るときなど使用頻度が高いと判断して採用した。オフタイマーも同じだ。
「ユニデンは、デジタル家電参入当初から“すべての無駄にさよならを”という一貫したコンセプトをかかげている。店頭にある大手メーカーの製品には、さまざまな機能を持っているが、われわれは“販促の手段”としての機能やコストアップにつながる機能は省く」
また今回のラインアップには、1万9800円という低価格な地上デジタルチューナーが含まれている。他社製品ではBSデジタルやCS110度のチューナーを加えた3波対応デジタルチューナーが一般的だが、あえて単体として低価格化。i.Link端子などの付加機能は搭載しないが、既存テレビとの接続性を確保するため、HDMI、D端子、S端子/コンポジット端子は一通り揃えた。「ユニデンのプロダクトとして提供するより、既に市場にあるテレビにつなぐことを意図した」という。
デジタル放送への過渡期にあたる今、とにかくコストをかけずにデジタル放送を見たいという需要はあるはずだ。また、そうした人たちがTS録画のためにD-VHSや外付けHDDを購入するとも考えにくい。庶民的なコスト意識を捉えたターゲティングは、“同社ならでは”と言えるのかもしれない。
課題はブランド力
昨年の販売実績は、月間3000台から4000台。市場全体の数字からいえば微々たるものだ。しかし、同じく10万円台液晶テレビを手がけたメーカーの中には採算がとれずに苦しんでいるところもある中、「年が開けてから若干出荷数が減ってはいるが、事業目標からみれば“オンプラン”」というから、まずは順調といえそうだ。「決算発表を控えた時期のため、具体的な数字は明らかにできないが、想定した範囲内で推移している」。
同社のデジタル家電事業が好調に推移している理由の1つは、そのコンパクトさという。開発や販売に携わる部署はすべて本社ビルの中にあり、「大手メーカーとは比較にならない」少人数で動かす。今でこそサポートの一部をアウトソースしているが、それでも非常にコンパクトだ。また製造は中国深センにある自社工場を活用。コードレス電話機を月間100万台以上製造しているラインを一部変更することで対応している。
コンパクトな組織にはスピードというメリットもある。「たとえば、サポートチームから上がってきたユーザーの声が、すぐに企画や開発の担当者に届く」(同社)。たとえば、パイオニアとの共同企画による42V型プラズマモニターとデジタルハイビジョンレコーダーのセット商品などは顧客の要望から生まれた商品だという。
同社では、今後も半年サイクルで新製品を投入していく予定だ。また現時点では家電量販店に製品を並べることは考えていないものの、「ユーザーから実際の商品を見たいという声が多いので、直営店を持つことは検討していく」。
一方、TV CMに続き、プロ野球の東京ヤクルトスワローズとパートナーシップ契約など、「ユニデン」ブランドの浸透を狙ってマーケティングも動き出している。
「技術力は、他社に勝るとはいわないが劣りもしない。ただ、日本ではまだ全く知られていない会社だ。まずユニデンの製品を買う理由付けになるよう、きちんとしたブランドを作っていきたい」。
同社が目指すシンプルなデジタル家電は、少なくともコアなAVファン層に向けたものではない。しかし、流通コストや使用頻度の低い機能を省いて価格を下げる姿勢は、庶民的な金銭感覚に合致するはずだ。デジタル家電市場の裾野が広がり続けている今、庶民派AV機器が担う役割は決して小さくない。
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