ソフトバンクBBに聞く、PLCの課題と展望(2/2 ページ)
ネットワークケーブルも無線LANもいらないLANインフラとしても期待されるPLC(電力線搬送通信)だが、実用化への課題はまだ存在する。
LANとしてのスループットも確保
LANとしての実用性については、同一環境下の無線LAN(IEEE 802.11g)とほぼ同等のスループットが得られ、通信距離も170メートル程度までなら減衰せずに利用可能であることが確認できたという(ちなみに、工法などによって差は発生するものの、2階建ての家屋でも必要となる通信距離は長くても数10メートル程度であるという)。
漏洩電界の抑制について同社が検証を進めているのは、PLCアダプタと壁のコンセント間をつなぐコードについてだ。電力線自体はPLCで利用するような高周波(2MHz〜30MHz)を流すことを想定していないので漏洩しやすく、また、この周波数帯はマンションなどで利用されることも多いVDSLモデムへ影響を与える可能性が高い(VDSLはADSLとは異なり、3MHz以上の周波数帯も利用するため)。
菅原氏は「VDSLとPLCの機材を10センチ程度離せば、漏洩電界による影響はほぼなくなる」というが、家庭内での利用シーンを想定すると通信機器同士を必ず10センチ離して設置してもらえるとは限らない。そこで同社は室内における対策が必要と考え、実験を進めてきた訳だ。
現在同社が実験している方法は2つ。「コードに導電性テープを巻き付け、チョークコイルによる低減BOXを挟み込む」「シールドスリープと呼ばれる金属性のチューブをコードにかぶせる」だ。双方とも抑制には一定の効果が見られ、最大でマイナス20デシベル程度の低減効果があったという。
ただ、コードをシールドすれば抑制効果があるのは当たり前といえば当たり前の話ともいえる。PLCアダプタを消費者へ提供するメーカー(あるいは通信事業者)がシールド付きコードを標準添付するなどの対応が求められるだろう。
有線/無線LANとどのような関係を築けるか
総務省は今秋にも、PLCの実用化を認めるかどうか、認めるならば漏洩電界の許容量をどれぐらいとするのかを発表すると見られている。しかし、規格と技術がレディの状態となっても、普及するかは別の問題だ。
ソフトバンクBBの想定する宅内利用に関する限り、先行するLAN技術である無線LANより明確なメリットを示せないとネットワークインフラとしての存在感を示すことはできないだろう。確かに「コンセントにつなぐだけ」という利便性はあるが、PLCモデムの小型化はまだ十分に進んでおらず、しばらくの間はノートPC用ACアダプタ程度のボックスをつながなければならない可能性が高い。
ただ、PLCは有線ネットワークなので、無線LANよりも通信の安定性が期待できる。PLCの実用化についてソフトバンクBBは「現在は検証段階。事業化するかは未定」としているが、菅原氏は「PLCの利便性と安定性は、無線LANと補完関係を築くのにふさわしい」(菅原氏)ともコメントしている。現在普及している有線/無線LANとどのよう関係を築けるかが、PLCの普及を左右しそうだ。
関連記事
- 2006 International CES:実用化に向け加速するPLC
映像コンテンツの家庭内伝送路として、PLC(電灯線ネットワーク)が現実味を帯びてきた。パナソニックは北米でのPLCアダプタの販売を決定したほか、シャープもデモを行っている。 - “コンセントからHD映像”も近い?――松下のHD PLC
松下電器産業は、「CEATEC JAPAN 2005」に出展するHD-PLCの技術説明会を開催。電灯線通信でハイビジョン映像の伝送、IP電話、PCデータ伝送を同時に実行する“トリプルプレイ”を披露した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.