JBLらしさを感じさせるNCヘッドフォン――「JBL Reference 510」:レビュー(2/2 ページ)
老舗スピーカーメーカー、JBLが投入する同社初のヘッドフォン「JBL Reference」シリーズ。なかでも「JBL Reference 510」はノイズキャンセリング(NC)機能も搭載した意欲作だ。
多くのNCヘッドフォンと同様に、折りたたみ機構も備えている。ハウジングが内側に折りたためるほか、水平方向へも90度回転するため、折りたたむと相当にコンパクトになる。ハウジングの小ささも相まって、折りたたみ時のサイズは同種の中でも群を抜くコンパクトさといえるだろう。
外出先で真価を発揮するNC機能
では、早速試用してみよう。
装着した瞬間に気が付くのが、遮音性の高さ。耳の上に載せるオンイヤータイプだが、クランプ圧が高めに設定されているようで、装着するだけでかなり外音を遮断する。室内で感じるPCのファンやエアコンの動作音は装着するだけで相当低減される。
そのまま音を流さない状態でNCのスイッチを入れると、ダイナミックレンジが一瞬狭くなり、次の瞬間には低い騒音がカットされる。しかし、室内で利用する限りではNCの「サーッ」という動作音がかなり気になる。筆者がこれまで使用したボーズのQuietComfort2/3(レビュー)、東北パイオニアの「SE-MJ7NS」(レビュー)より動作音は大きいようだ。
動作音が大きめという印象は、室内でそのまま音楽を流し始めても変わらなかった。ある程度プレーヤーの音量を上げれば気にならなくなるが、小さめの音量(iPod 5Gでは音量目盛り1/5程度)ではアップテンポのロックでも動作音が気になる。集音マイクが敏感なのか、回路処理の設定なのかは不明だが、室内の騒音が気になるからNCヘッドフォンを使いたいという要望には不向きといわざるを得ない。
ただし、外部の音量が上がる野外ではNCの効果は絶大なものになる。いつもどおり地下鉄の構内と電車内で試用したが、NCをオンにすると風切り音はほぼキャンセルされ、レールの継ぎ目を乗り越える音など、普段は気になる音がほとんど気にならなくなる。どうも周囲の音が大きくなるほどキャンセル効果が高くなる性質を持つようだ。航空機内や電車内などいったノイジーな場所で利用する限り、「周囲の音を最大70%低減する」といううたい文句はダテではないようだ。
もうひとつ特筆すべきことがある。NCをオフにした際に感じられるヘッドフォンとしての素性のよさだ。筆者はJBLのスピーカーについて、音離れがよく、自然とバランスよく音が前に出てくるようなイメージをもっていたが、本製品のサウンドもまさにその通りだった。
外出先で利用するというシチュエーションを重視するのか、最近では低音の迫力、再現性に重きを置いたヘッドフォンが多いように思うが、本製品はあくまでもバランス重視。ハードロックのライブ盤などでは低音にゴワゴワとしたもたつきを感じることもあるが、クラシックからジャズ、ロック、ポップスまで破綻なく再生してくれる。「ズンドコ」なサウンドが苦手な人には一度試して欲しい。
パッケージにはポーチのほか、航空機用のデュアルプラグ、6.3ミリプラグも同梱されている。ポータブルオーディオプレーヤーとの組み合わせを念頭にしたというが、飛行機や家庭のオーディオでも購入後すぐに利用できるのはありがたい。
無音/小音量時のNC動作音やケーブルレイアウト、NCユニットのサイズなど気になる点も散見されたが、ヘッドフォンとしての能力も高いほか、「騒音のある環境で静かに音楽を楽しむ」という本来の目的も十二分に果たしている。普段はNCなしのコンパクトなオンイヤーヘッドフォン、通勤や出張時にはノイズを低減できるヘッドフォンが欲しい――そう考えるひとには検討に値する製品だ。
関連記事
- レビュー:出張のお供に最適なNCヘッドフォン――東北パイオニア「SE-MJ7NS」
東北パイオニアの「SE-MJ7NS」は密閉型構造を採用したノイズキャンセリング(NC)ヘッドフォン。「フィードフォワード方式」などの採用で周囲の騒音を1/5にカットするという、そのパフォーマンスは? - レビュー:コンパクトに折りたたみ、静かに聴く――ビクター「HP-NC80」
日本ビクターからノイズキャンセリングヘッドフォン「HP-NC80」が登場。リーズナブルさも魅力なNCヘッドフォンの実力はいかに。 - レビュー:「静かなリスニング環境」を求めて――ボーズ「QuietComfort 3」
ボーズの「QuietComfort 3」は、既に販売されているノイズキャンセリングヘッドフォン「QuietComfort 2」と同等の能力を持ちながらも小型化を進めたモデル。“静かなリスニング環境”の価値とは? - JBL、ノイズキャンセルタイプなどでヘッドフォン市場へ参入
ハーマンインターナショナルはJBLブランドの新製品としてヘッドフォン「JBL Reference」シリーズを販売開始する。JBLとしては初のヘッドフォンで、ノイズキャンセリング機能などを備えた4製品を用意。 - タイヤではありません、JBLのiPodスピーカー「JBL Radial」
ハーマンインターナショナルは、iPod対応スピーカーの最上位モデルとして「JBL Radial」を発表した。カラーはホワイトとブラックの2色。 - JBLの新たな頂き――「Project EVEREST DD66000」
ハーマンインターナショナルは、JBLの創業60周年記念スピーカー「Project EVEREST DD66000」を発売する。K2を超える、「これ以上ない」という新たな頂点を目指したスピーカーだ - ハーマン、専用リモコンが付属したiPod用スピーカー「JBL on station II」
ハーマンインターナショナルはユニークな形状が特徴的な「JBL on station」の上位モデル「JBL on station II」を発売する。専用リモコンが付属するほか、Universal Dockアダプタに対応することでiPodの交換にも容易に変更できる。 - ハーマン、JBL創立60周年記念モデルのスピーカー「LS series」
ハーマンインターナショナルは、JBL創立60周年記念モデルとしてスピーカー「LS series」を7月より販売開始する。トールボーイの「LS80」「LS60」、センタースピーカーの「LS Center」が用意され、価格はそれぞれ25万2000円、19万9500円、14万7000円。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.