高まった完成度、動画も楽しめる高音質ウォークマン――「NW-A805」:レビュー(4/4 ページ)
ウォークマンにもとうとう動画対応モデルが登場した。小型ながらも高精細な液晶は動画鑑賞にも十分に堪えうるが、本質としては、よりオーディオプレーヤーとしての完成度を高めた製品と言える。
肝心の音質だが、NW-S600/700と同じく高音質化技術「ClearAudio Technology」(ノイズキャンセル機能は非搭載)を実装することもあり、以前レビューした「NW-S703F」(レビュー)と同クオリティかそれ以上だといえる。イヤフォンに13.5ミリのドライバーを搭載したカナル型“EXイヤフォン”を組み合わせてせており音質は高い。
どちらかといえば高音域のツヤや伸びよりも、低域の勢いやスピード感、しっかりとした音場の再現を重視しているが、NW-S70SFで受けた低音過多な印象は薄らいでおり、よりフラットな周波数特性となっているようだ。S/N感が向上しているのも大きな特徴に挙げられるだろう。
圧縮音源が圧縮時に失ってしまう高音域を拡張する補完技術「DSEE」(Digital Sound Enhancement Engine)を新搭載するが、筆者が常用しているファイル形式/ビットレート(MP3/192kbps)ではさほど明確な効果を確認できなかった。そこで試しにMP3/64kbpsのファイルを作成してみたところ、確かに低ビットレートファイルにありがちな高域のスカスカ感が緩和され、自然な感じに近づくという効果を体感できた。
ただ、本製品の母艦となるPCのHDDは大容量化が進んでおり、MP3/64kbpsといった低ビットレート(と言ってしまって構わないだろう)でライブラリを構築しているひとはそう多くないはず。あくまでも補助的な機能と考える方がよいだろう。出荷時に本機能がオフになっているのも筆者の考えを裏付けるものと推察する。
NW-S600/700でノイズキャンセリングを搭載、本製品では動画再生という新たな要素を搭載し、アグレッシブな動きを見せるウォークマンだが、本製品の本質はあくまでも「携帯音楽プレーヤー」ではないかと筆者は考える。
確かに本製品の液晶は動画再生においても十分なクオリティを持ち、携帯動画プレーヤーにおいて課題の1つであるバッテリーライフにおいても、最長8時間という十分すぎるほどのスタミナぶり。たが、「携帯動画プレーヤー」として本製品を見ると、映像を楽しむ際に必要となる没入感がどうしても不足する。映像を重視するならばせめて3インチは欲しいところだ。
短時間ではあるが、試用していて筆者が価値を感じたのは高解像度液晶による一覧性の高さや軽快な操作性、本体の薄さと軽さ、そしてなによりも高S/Nに裏付けされた音質の高さだ。確かに手のひらにすっぽりと収まるコンパクトなプレーヤーで動画を見るという体験も楽しいが、どうしても副次的なものとしてしか感じられなかった。
「ビデオウォークマン」など、これまでいくつもの動画プレーヤーを世に送り出してきた同社がこうしたユーザーがいることに気が付いていないはずがない。動画というプラスアルファを備えるが、あくまでも音質を含めて音楽プレーヤーとしての完成度を高めたカードタイプウォークマン――新製品をそう捉えるならば、iPod nano/第5世代iPodという強力なライバルにも十分対抗しえる製品であると言える。
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