新デザインとナチュラルなNC――パナソニック「SV-SD850N」:レビュー(3/3 ページ)
「騒音キラー」を名乗る松下のノイズキャンセリング搭載プレーヤーに第2世代の製品「SV-SD850N」が登場した。デザインも一新された新世代機を試用した。
前置きが長くなったが、SV-SD850Nで音楽を再生してみよう。電源ボタンは独立して用意されておらず、前面中央の再生/一時停止を長押しすると電源が入る。
基本的な操作方法はシリーズ製品と変わっておらず、「S」(サーチ)のボタンを押したのち、「50音検索」「全曲」「アーティスト」「アルバム」「プレイリスト」「印象」「マーク登録曲」の項目から曲が検索できる。付属の1Gバイトカードに約600Mバイト分の楽曲データを収録した状態で操作したが、反応もよく、操作にストレスを感じることはない。
音質の全体的な傾向もこれまでのシリーズ製品と変わらない。デジタルアンプを搭載する影響かメリハリのきいた、クリアさが信条のサウンドだ。ダイナミックレンジが広く、ニュートラルなキャラクターを持つと言えるが、イコライジングをすべてオフにした状態ではパンチが足りないと感じることがあるかもしれない。
イコライジングは「ノーマル」と低音をプラスする「S-XBS1」「S-XBS2」、音漏れを低減する「トレイン」の4つに加え、サラウンド感をプラスする「P.SRD1」「P.SRD2」、高域を補完する「リ.マスター」「効果オフ」の4つを組み合わせることで、合計4×4の16パターンを適用できる。
自然なNCの効き味
最大の特徴であるNCだが、これは本体の「NC」ボタンを押すことでいつでも適用できる。イヤフォンに搭載されているマイクを使って外音を集音する「モニター」機能も用意されているが、なによりも前面に用意されたボタン一発で機能をオン/オフできるのは便利だ(ウォークマンS600/700はメニューをたどる必要がある)。
NC機能の効き目について、同社では「電車の騒音を83%カット」とアピールしているが、実際のところはどうなのだろうか。まずは無音状態の静かな室内で、音楽を流さずにスイッチを入れてみた。
かすかなNCの動作音が感じられ、PCのファンが回る音も確かに聞こえにくくなったが、この状態では動作音のほうが強く聞こえてしまう。音楽を流し始めても状態は変わらず、周りが静かであれば動作音は聞こえてしまう。静かな環境でNCをオンにするというシチュエーションそのものが不自然ともいえるが、動作音をかなり抑えた製品も多く登場しているので、気になる人もいるのではないだろうか。
次に地下鉄に乗り込み、音楽を流しながらスイッチを入れてみた。スイッチを入れた直後にはあまり違いを感じず、ダイナミックレンジが一瞬狭くなっただけのような印象を受けるが、スイッチを切ってみると、レールの上を走る音や空気の擦過音など、列車の走行音をかなり低減していることに気づかされる。NCのオン/オフで再生帯域特性があまり変化しないのにも好感が持てる。確かに特性の変化は感じられるが、一部の製品で感じられる特定帯域に皮膜が掛かったような不自然さはない。NCについては、あくまでも自然な効き味が特徴といえるだろう。
「83%カット」というとボーズ「Quiet Comfort3」(レビュー)やオーディオテクニカ「ATH-ANC7」(レビュー)のような密閉型に迫る能力を持つように感じてしまうが、実際に試用してみるとそこまで強烈な効果は感じられなかった。ただ、それでもボリュームを上げずにリスニングを楽しむための手助けをしてくれることは間違いない。本製品のNC機能はあくまでもその効き味の自然さに真価があると筆者は考える。
本製品には1GバイトのSDメモリーカードも付属しており、実売想定価格は2万円前後。一部の販売店では既に1万6000円前後のプライスタグがついているようで、iPod nanoやウォークマンと比較しても十分な価格競争力もある(前モデルのSV-SD800Nは同様の実売想定価格ながらも付属カードの容量は128Mバイトで、割高感は否めなかった)。
ミュージックプレーヤーとしての操作性などは完成の域に近づいており、NCについても必要十分な効き目を見せてくれる。それに、SDメモリーカードの価格低下も本製品にはプラスに働くだろう。大容量カードの低価格化も進んでおり、ジャンルにあわせてカードを差し替える、家族間でプレーヤーを使い回すと言ったことも現実的な使い方として十分想定できる。
携帯電話的な本体デザインと豊富なカラーバリエーションも相まって、本製品はAV製品と言うよりも、同社の得意とする家電的な特徴を前面に押し出した製品といえる。iPodでも、ウォークマンでもない独自路線の製品としてさらなる発展と進化を期待したい。
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