HDMI(2)――デジタル時代のAVケーブル:デジモノ家電を読み解くキーワード
ハイビジョン対応AV機器の分野で採用が進む「HDMI」。今回は、その規格の変遷と現状を見てみよう。
対応オーディオコーデックの増加
2002年に登場したHDMIは、4.95Gbps(165MHz)という帯域幅を利用し、映像と音声をデジタル信号のままケーブル1本で転送することを実現した。映像の最大解像度は1080p(1920×1080ピクセル)と、当時市販されていたテレビの表示能力を大幅に上回り、ハイビジョン放送が一般化する最近まではあえて1080pをサポートしないHDMI対応機器も存在したほどだ。
HDMIの規格は毎年のように見直されているが、テレビ側の表示対応がなかなか進まないという事情もあり、音声に力点を置いた改良が施されてきた。最初のバージョン(1.0)では、Dolby Digital/DTSとPCMのみサポートされていたが、2004年リリースの1.1ではDVD Audioと7.1ch PCMに、2005年リリースの1.2ではワンビットオーディオ(SACD)にと、対応するオーディオコーデックが増加した。2006年のリリースの1.3では、Dolby True HDやDTS HDなど、次世代光ディスクにも採用されているオーディオコーデックをパススルー出力できるようになった。
1.3で映像面も大幅に強化
最新バージョンの1.3(現在は仕様変更されて1.3a)では、新しいシリアルデータ転送技術「iTDMS」の採用により、帯域幅が10.2Gbps(340MHz)へと倍増。最大解像度は1080pから1440p(2560×1440ピクセル)に、各色8bitの色深度が8bitから10/12/16bitに引き上げられ、次世代の色空間規格「xvYCC」に対応するなど、映像面の仕様が大幅に改良された。1080p対応のテレビも出回り始めた現在、将来をにらんだ仕様変更といえる。
「Lip Sync」のサポートも、1.3の主要な変更点の1つ。デジタル処理により発生する映像と音声の同期ズレを補正するこの技術により、AV機器側の機能を利用してユーザー側で調整を行う必要はなくなった。新たに規定されたポータブル機器向けの小型コネクタは、複数のAV機器を1つのリモコンで操作することを可能にした機器間制御信号(CEC、HDMI 1.2aで定義)とあわせ、HDMIの利便性を向上させる規定といえる。
1.3の普及はこれから
その1.3の先陣を切ったのが、ソニーの「プレイステーション3」(PS3)。1.3対応により、PS3内部で16bit処理した映像を8bit出力するというムダがなくなり、マッハバンド(疑似輪郭)が目立たなくなるなどの画質向上が報告されている。HDMIは完全に下位互換性が保たれるため、従来のHDMI機器が利用できなくなることはないが、画質にこだわるなら1.3対応機器を待つのが上策だろう。
HDMIの仕様の推移 | |||
---|---|---|---|
年 | バージョン | 帯域幅 | 概要 |
2002年 | 1.0 | 4.95Gbps | 最初のリリース |
2004年 | 1.1 | DVD Audio、7.1ch PCMに対応 | |
2005年 | 1.2 | One bit Audio(SACD)に対応 | |
1.2a | 機器間制御信号(CEC)に対応 | ||
2006年 | 1.3 | 10.2Gbps | 1440pに対応、拡張色空間(xvYCC)に対応、True HD/HTS HDなどオーディオコーデックが追加 |
1.3a | CECサポートの強化 |
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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