「高音質配信」は本当に“いい音”か?――e-onkyo music編:レビュー(2/2 ページ)
前回iTunes Plusの高い実力を試聴テストで確認できたが、今回はさらにその上を行く高音質をアピールする音楽配信、e-onkyo musicについて試してみる。
96kHz/24bitがもたらす未知の世界
いよいよe-onkyo musicの96kHz/24bitをチェックしたい。「CDを超えた高音質」とうたう実力の真価を問うためにも、 綾戸智絵「SEVEN」から「Tennessee Waltz」と「Desperado」、小林研一郎指揮「ベートーベン交響曲第9番」(SACD/CDハイブリッド)から第1楽章という3曲をチョイス。WMA losslessとハイブリッドSACDのCD再生、SACD再生を比較した。また綾戸智絵はiTunes(AAC 128kbps)やナップスターでも配信されていたので、こちらもダウンロードして聴いてみることにした。
まず綾戸智絵のiTunes(AAC 128kbps)に関しては、ノラ・ジョーンズやキャサリン・ジェンキンスと大きな差はない。残念ながらBGM使用に限定されてしまうサウンドクオリティだ。いっぽうナップスターはキャサリン・ジェンキンスよりもかえってクオリティが下がった印象。iTunes(AAC 128kbps)に近いイメージで、声も演奏も単調に感じられる。じっくり聴き込むには少々もどかしさがつきまとう。
それに対して96kHz/24bitのWMA losslessは、まるで録音が違うかのような別世界。ピアノの繊細なタッチや、声に込められた感情の細やかな揺れなどを、緻密なニュアンスで見事に再現してくれる。確かにここまでのリアリティはCDですら体験できない。「CDの情報量をはるかに上回る高品質」はダテではないことを実感した。
ベートーベン「交響曲第9番」のように音数が多いものは、さらにその差が明確になる。バイオリンの音などは重ねれば重ねるほど、ノイズのように聞こえたり、音が引っ込んだような印象になってしまうことが多いのだが、96kHz/24bitのWMA losslessdでは、幾重にも重なった音の厚みが見事に表現され、美しいハーモニーを奏でている。これぞ、音楽ファンが待ちに待った「進化した現代の音」と呼べるものだろう。
同時にCDにも違った良さがあることを確認できた。なんといっても音がダイナミックで、はつらつさで言えばこちらの方が上だ。さらに音楽ファイル再生にどうしても付きまとう音の揺れがなく、どっしり土地に足を着いた安定感がある。これは音楽に没入できる大切なポイントともなる。このようにどちらの違った良さがあるので、CDにするか96kHz/24bitのWMA lossless、その選択は好みにおまかせしたい。どちらを選んでも充分満足はできるはずだ。
最後に聴いたSACDは、両者のメリットを重ね合わせた印象。その繊細かつ鮮度感の高い音がもたらす圧倒的なリアリティは、現在手に入れられる最高峰のサウンドといえる。より高音質を求めるのであれば、SACDは外すことのできないマストアイテムとなる。
山積みの課題をのりこえて輝かしい未来を
音質的には充分以上の満足を得ることができる、e-onkyo musicの96kHz/24bit WMA lossless。現在、いや近未来を含めても、理想の音楽配信とひとつと断言できる素晴らしい存在だ。他社の音楽配信も、ぜひこのような高みを目指して突き進んで欲しい。
しかし問題点もある。そのなかでも切実なのが、再生プレーヤーと提供される楽曲の少なさだ。現在公式に対応デジタルオーディオプレーヤーとアナウンスされているのは東芝gigabeatVシリーズのみ。しかも44.1kHz/16bitのみで、96kHz/24bitには対応していない(Windows Media Player11では転送可能なものの自動的にダウンコンバートされてしまう)。
ほぼPCでしか再生できないのは致命的ともいえる弱点。ハードウェアメーカーとの連携を強化して、早急に対応機器の登場を願いたいものだ。また楽曲の少なさは、SACDやDVDオーディオの二の舞いとなる可能性もあるので、曲の充実も早急に願いたい。
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